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第125話 月に吠える
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腹、減ったな。
アメリカンドッグ……。
バイト帰りに自転車を走らせていた灰谷は急にアメリカンドッグが食べたくなった。
買って帰ればよかった。
でもアメリカンドッグはうちの店よりあっちのがウマイんだよな。
真島んちの方のコンビニ。
行くか。
灰谷は方向転換した。
ちょっと遠回りになるけれど、ついでに真島が帰ってないか、のぞいてみようとも思った。
真島家の前で自転車を停める。
二階の真島の部屋の窓は暗かった。
いつも自転車を止めていた駐車場スペースに真島の自転車はなかった。
帰っていないらしい。
真島がいなくなって何度目だろう。
スマホを開く。
既読なし。
着信なし。
まだ帰ってないか……。
コンビニでペプシとアメリカンドッグを購入して、あの日、真島とアイスを食べた公園に向かう。
ひょっとしたらと思ったが公園のベンチに真島の姿はなかった。
って当たり前か。
こんな所にいるわけないか。
ベンチに腰を下ろし、アメリカンドッグをかじり、ペプシを飲む。
本当にあいつ、どこにいるんだろう。
中田が言ってたみたいにまた一人でグルグル考えて狭い所に入りこんで周りが見えなくなったりしてるんじゃないだろうな。
余計な事考えてないで帰ってくればいいのに。
いや、余計なことじゃねえよな、あいつにとっては。
「暑ちぃ」
日も暮れたというのにまだ暑い。
キャーキャー。
声のする方を見れば子供たちが親といっしょに花火をしている。
花火か。
真島んちで焼き肉食べた後にみんなでしてたな。
オレは見てるだけだったけど。
そういえばあの時も、真島、オレの事見てたよな。
明日美と話しているオレの事を見ていた。
……なんで、今まで何も気が付かなかったんだろうなあ。
今年の夏は真島とほとんど遊ばなかった。
映画に誘っても断られるし。
海にも行ったし焼き肉も食べたけど、なんかお互いギスギスしてた。
殴り合いのケンカもした。
登校日の帰りにチャリ買いに行ったぐらいか。
後はオレが無理やり家に押しかけて話したぐらいじゃん。
つうかまあ、オレが彼女作ったってのが一番の理由か。
断る理由がないから、ってそれだけの始まりで。
真島にしてみたら、たまんなかっただろうな。
アスミルクなんていってチャカしてたけど。
見たくなかったのかもしれないな。
オレと明日美が一緒にいる所。
バイトのシフトもすぐに変えてたし。
でも……んなのわかんねえよ。
わかるかよ。
真島がオレを、なんて。
想像もしなかったよ。
はあ~。
灰谷は小さくため息をついた。
ミンミンと夏の名残を惜しむかのようにセミが鳴いている。
ふいに何かに呼ばれたような気がして空を見上げた。
夜空に月が輝いていた。
キレイな大きな丸い月だった。
真島もきっと見ている、なぜかそう思った。
そう思ったら……。
「チクショウ!」
灰谷は自分でもわからないが、ものすごく腹が立ってきた。
スマホを取り出しカメラのアプリを立ち上げると月に向かってシャッターを切った。
次にアメリカンドッグを口に咥えて自撮りした。
その写真を真島宛に送ると、続けてメッセージも送る。
『月はキレイだ。ドッグはウマイ。真島、帰ってこい』
そうだ真島、帰ってこい。
オレの事ああだとかこうだとか、それもあるだろうけど、この夏、オマエと全然遊べてねえ。
遊びたい。
夏が終わっちまう。
なんでもいいから早く帰って来い。
オマエが帰って来ないっていうなら探しに行く。
オマエが行く所なんてタカが知れてる。
クサレ縁を舐めるな。
待ってろよ真島。
そうか課題。
課題終わらせればあとは自由だ。
妙な怒りと決意を胸に灰谷は立ち上がった。
アメリカンドッグ……。
バイト帰りに自転車を走らせていた灰谷は急にアメリカンドッグが食べたくなった。
買って帰ればよかった。
でもアメリカンドッグはうちの店よりあっちのがウマイんだよな。
真島んちの方のコンビニ。
行くか。
灰谷は方向転換した。
ちょっと遠回りになるけれど、ついでに真島が帰ってないか、のぞいてみようとも思った。
真島家の前で自転車を停める。
二階の真島の部屋の窓は暗かった。
いつも自転車を止めていた駐車場スペースに真島の自転車はなかった。
帰っていないらしい。
真島がいなくなって何度目だろう。
スマホを開く。
既読なし。
着信なし。
まだ帰ってないか……。
コンビニでペプシとアメリカンドッグを購入して、あの日、真島とアイスを食べた公園に向かう。
ひょっとしたらと思ったが公園のベンチに真島の姿はなかった。
って当たり前か。
こんな所にいるわけないか。
ベンチに腰を下ろし、アメリカンドッグをかじり、ペプシを飲む。
本当にあいつ、どこにいるんだろう。
中田が言ってたみたいにまた一人でグルグル考えて狭い所に入りこんで周りが見えなくなったりしてるんじゃないだろうな。
余計な事考えてないで帰ってくればいいのに。
いや、余計なことじゃねえよな、あいつにとっては。
「暑ちぃ」
日も暮れたというのにまだ暑い。
キャーキャー。
声のする方を見れば子供たちが親といっしょに花火をしている。
花火か。
真島んちで焼き肉食べた後にみんなでしてたな。
オレは見てるだけだったけど。
そういえばあの時も、真島、オレの事見てたよな。
明日美と話しているオレの事を見ていた。
……なんで、今まで何も気が付かなかったんだろうなあ。
今年の夏は真島とほとんど遊ばなかった。
映画に誘っても断られるし。
海にも行ったし焼き肉も食べたけど、なんかお互いギスギスしてた。
殴り合いのケンカもした。
登校日の帰りにチャリ買いに行ったぐらいか。
後はオレが無理やり家に押しかけて話したぐらいじゃん。
つうかまあ、オレが彼女作ったってのが一番の理由か。
断る理由がないから、ってそれだけの始まりで。
真島にしてみたら、たまんなかっただろうな。
アスミルクなんていってチャカしてたけど。
見たくなかったのかもしれないな。
オレと明日美が一緒にいる所。
バイトのシフトもすぐに変えてたし。
でも……んなのわかんねえよ。
わかるかよ。
真島がオレを、なんて。
想像もしなかったよ。
はあ~。
灰谷は小さくため息をついた。
ミンミンと夏の名残を惜しむかのようにセミが鳴いている。
ふいに何かに呼ばれたような気がして空を見上げた。
夜空に月が輝いていた。
キレイな大きな丸い月だった。
真島もきっと見ている、なぜかそう思った。
そう思ったら……。
「チクショウ!」
灰谷は自分でもわからないが、ものすごく腹が立ってきた。
スマホを取り出しカメラのアプリを立ち上げると月に向かってシャッターを切った。
次にアメリカンドッグを口に咥えて自撮りした。
その写真を真島宛に送ると、続けてメッセージも送る。
『月はキレイだ。ドッグはウマイ。真島、帰ってこい』
そうだ真島、帰ってこい。
オレの事ああだとかこうだとか、それもあるだろうけど、この夏、オマエと全然遊べてねえ。
遊びたい。
夏が終わっちまう。
なんでもいいから早く帰って来い。
オマエが帰って来ないっていうなら探しに行く。
オマエが行く所なんてタカが知れてる。
クサレ縁を舐めるな。
待ってろよ真島。
そうか課題。
課題終わらせればあとは自由だ。
妙な怒りと決意を胸に灰谷は立ち上がった。
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