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第120話 オレにできること…
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「節子さ~ん。来たわよ」
「久子さ~ん。久しぶり」
「これ、ケーキ。と、ワイン」
「キャー。ありがとう」
真島家の玄関先でキャッキャしている真島の母節子と灰谷の母久子。
毎度この女子高生みたいなノリには本当について行けないと灰谷は思った。
「真島に貰ったマンガ、持って帰っていいですか」
「どうぞ~。信まだ帰ってきてないけど部屋入って勝手に持って行っちゃって。久子さん、ご飯作ったの。ちょっと早いけどワイン開けて食べましょう」
「いいわねえ」
階段を上り、真島の部屋に入り、灰谷はつぶやいた。
「しっかし、本当に空っぽだな」
モノに埋まっていた真島の部屋は見事に片付いていた。
いや、片付けたというより、断捨離前と比べればほぼ言葉通り空っぽに近かった。
この間も感じた事だが、断捨離と言うより、リセット、に近いように見えた。
リセット……。
何をリセット?
窓際に大きなダンボールが三つ積んであり、マジックで灰谷行きと書かれていた。
フタを開けて中身を確認してみる。
あいつ、自分が読みたいの全部ダンボールに詰めこみやがったな。
オレ、こんなの選んでねえわ。
ホントにマン喫代わりにするつもりだな、真島のやつ。
まあいいけど……。
「暑っ」
灰谷は窓を全開にすると、ダンボールを背にして床に座りこみ、改めてまた部屋を眺めた。
ベッド。
真島と結衣がこのベッドで、していたのを見てから、もう一週間位経つのだろうか。
快感を呼び起こそうとする真島の顔。
目が合って、一瞬ビックリして見開いた目。
そして、まるで何かを訴えるように見つめ返して来た。
自分を見つめる真島の目。
感じている顔。
もしかして真島はオレと寝たいと思ってるんだろうか。
灰谷に一つの疑問がわき起こる。
多分、そうだろう。
でなければ自分の名を呼びながらしたりしないだろう。
あいつと……オレが……。
考えた事もなかった。
ただ、あの日の明日美とのセックスはメチャクチャ良かった。
なぜだかとても興奮した。
いや、でもあれは間近でエロいのを見たからで、あいつとしたいとか出来るって事にはならない。
「ふう~。暑っつ」
灰谷はTシャツの袖を肩までたくし上げると首元をパタパタさせた。
いるのが当たり前で。
空気みたいに自然で。
だからなのか?
自分に一言もなくどこかへ行ってしまった事になんだか傷つけられたような気がするのは。
それを母ちゃんにまで指摘されるとは。
まるでこの部屋のように自分との関係までリセットしようとする意志を感じなくもない。
空気がないから息苦しい?
いや、空気がなかったら死ぬけど。
って空気じゃねえし。
じゃあなんだ?
オレにとって真島って。
幼なじみ。
友達。
親友。
ツレ。
真島がよく言う腐れ縁。
ほとんど家族?
それは間違いない。
でも多分、あいつが望んでるのはその先で。
その先。
その先か……。
未知の領域。
今のままじゃダメか?
ダメなんだろうな。
だから真島は苦しんでるんだろ。
それをオレはどう受け止める?
どうしてやったらいい?
あいつに何をしてやれる?
究極、自分は真島を抱けるだろうか、と灰谷は思った。
・・・。
精神的には……抱ける。
多分……。
でも、肉体的には……わかんねえ。
あれ?もしかして真島はオレを抱きたいの?
そこもわかんねえし。
そもそも友情とかそういう気持ちじゃダメだろ、ああいうのって。
真島もそういうのじゃねえだろ?
寝るだけならできるけど……多分。
それで終わりにするにはオレ達の間には色々大事なものがあり過ぎる。
ああ。
それで真島も悩んでるんだ。
それを悩んでるのか。
そっか。そうだよな。
ああ~。
灰谷は髪に指を突っこんでぐちゃぐちゃかき回した。
こんな事わかってもしょうがねえんだよな。
真島は救われない。
オレも、知ってしまった以上、知らなかったオレには戻れない。
知らないフリもできない。
オレに……出来る事……。
「つうか、暑っちい」
♪~
スマホが鳴った。
中田からだった。
「もしもし」
『みつかったってさ、バイク』
「ホントに?早くね?」
中田の兄に中田経由で自分の分と真島の分、二台分のバイクを探してくれるように頼んだ。
それからほぼ一日しか経っていなかった。
『いや~大変だったってよ。オマエが八月中に、できるだけ早く、しかも同じ車種で色違いとかムリ言うから』
「いやでも、もっと時間かかるかと思ってた」
『兄貴は引き受けたら全力でやる男なんだよ』
「中田の兄貴、ホントにイイ人だよな」
『ん~それがさ、ただのイイ人でもないんだなこれが。ちょっとだけマズイ事になってんだよ』
「なんだよ」
『まあ……会ったら話すわ』
中田が話をシブるのは珍しかった。
「ありがとな、中田」
『オレはなんもしてねえし。オマエ今バイト?』
「いや、これから。今、真島んちなんだわ」
『真島?あいつ帰って来てんの?』
「いや、まだ」
『連絡は?』
「ない」
『そっか。オレもちょこちょ送ってるけどLINEも既読つかねえし。電源切ってるんだな』
「だな」
灰谷は窓の外を眺めた。
青い空に入道雲。
今日も暑い。
この暑いのにチャリでどこに行ったんだか。
バイクも見つかったし、真島、早く帰ってくればいいのに。
『じゃあ明日な』
「ウイーッス」
バイクの用意はできた。
後は、真島の両親に許可をとらないと。
おもに節子だな。
節子、バイクは高校卒業までダメだって言ってたらしいからな。
ん~。
よっしゃ。
灰谷は自分の頬を叩くと、一階に下りていった。
「久子さ~ん。久しぶり」
「これ、ケーキ。と、ワイン」
「キャー。ありがとう」
真島家の玄関先でキャッキャしている真島の母節子と灰谷の母久子。
毎度この女子高生みたいなノリには本当について行けないと灰谷は思った。
「真島に貰ったマンガ、持って帰っていいですか」
「どうぞ~。信まだ帰ってきてないけど部屋入って勝手に持って行っちゃって。久子さん、ご飯作ったの。ちょっと早いけどワイン開けて食べましょう」
「いいわねえ」
階段を上り、真島の部屋に入り、灰谷はつぶやいた。
「しっかし、本当に空っぽだな」
モノに埋まっていた真島の部屋は見事に片付いていた。
いや、片付けたというより、断捨離前と比べればほぼ言葉通り空っぽに近かった。
この間も感じた事だが、断捨離と言うより、リセット、に近いように見えた。
リセット……。
何をリセット?
窓際に大きなダンボールが三つ積んであり、マジックで灰谷行きと書かれていた。
フタを開けて中身を確認してみる。
あいつ、自分が読みたいの全部ダンボールに詰めこみやがったな。
オレ、こんなの選んでねえわ。
ホントにマン喫代わりにするつもりだな、真島のやつ。
まあいいけど……。
「暑っ」
灰谷は窓を全開にすると、ダンボールを背にして床に座りこみ、改めてまた部屋を眺めた。
ベッド。
真島と結衣がこのベッドで、していたのを見てから、もう一週間位経つのだろうか。
快感を呼び起こそうとする真島の顔。
目が合って、一瞬ビックリして見開いた目。
そして、まるで何かを訴えるように見つめ返して来た。
自分を見つめる真島の目。
感じている顔。
もしかして真島はオレと寝たいと思ってるんだろうか。
灰谷に一つの疑問がわき起こる。
多分、そうだろう。
でなければ自分の名を呼びながらしたりしないだろう。
あいつと……オレが……。
考えた事もなかった。
ただ、あの日の明日美とのセックスはメチャクチャ良かった。
なぜだかとても興奮した。
いや、でもあれは間近でエロいのを見たからで、あいつとしたいとか出来るって事にはならない。
「ふう~。暑っつ」
灰谷はTシャツの袖を肩までたくし上げると首元をパタパタさせた。
いるのが当たり前で。
空気みたいに自然で。
だからなのか?
自分に一言もなくどこかへ行ってしまった事になんだか傷つけられたような気がするのは。
それを母ちゃんにまで指摘されるとは。
まるでこの部屋のように自分との関係までリセットしようとする意志を感じなくもない。
空気がないから息苦しい?
いや、空気がなかったら死ぬけど。
って空気じゃねえし。
じゃあなんだ?
オレにとって真島って。
幼なじみ。
友達。
親友。
ツレ。
真島がよく言う腐れ縁。
ほとんど家族?
それは間違いない。
でも多分、あいつが望んでるのはその先で。
その先。
その先か……。
未知の領域。
今のままじゃダメか?
ダメなんだろうな。
だから真島は苦しんでるんだろ。
それをオレはどう受け止める?
どうしてやったらいい?
あいつに何をしてやれる?
究極、自分は真島を抱けるだろうか、と灰谷は思った。
・・・。
精神的には……抱ける。
多分……。
でも、肉体的には……わかんねえ。
あれ?もしかして真島はオレを抱きたいの?
そこもわかんねえし。
そもそも友情とかそういう気持ちじゃダメだろ、ああいうのって。
真島もそういうのじゃねえだろ?
寝るだけならできるけど……多分。
それで終わりにするにはオレ達の間には色々大事なものがあり過ぎる。
ああ。
それで真島も悩んでるんだ。
それを悩んでるのか。
そっか。そうだよな。
ああ~。
灰谷は髪に指を突っこんでぐちゃぐちゃかき回した。
こんな事わかってもしょうがねえんだよな。
真島は救われない。
オレも、知ってしまった以上、知らなかったオレには戻れない。
知らないフリもできない。
オレに……出来る事……。
「つうか、暑っちい」
♪~
スマホが鳴った。
中田からだった。
「もしもし」
『みつかったってさ、バイク』
「ホントに?早くね?」
中田の兄に中田経由で自分の分と真島の分、二台分のバイクを探してくれるように頼んだ。
それからほぼ一日しか経っていなかった。
『いや~大変だったってよ。オマエが八月中に、できるだけ早く、しかも同じ車種で色違いとかムリ言うから』
「いやでも、もっと時間かかるかと思ってた」
『兄貴は引き受けたら全力でやる男なんだよ』
「中田の兄貴、ホントにイイ人だよな」
『ん~それがさ、ただのイイ人でもないんだなこれが。ちょっとだけマズイ事になってんだよ』
「なんだよ」
『まあ……会ったら話すわ』
中田が話をシブるのは珍しかった。
「ありがとな、中田」
『オレはなんもしてねえし。オマエ今バイト?』
「いや、これから。今、真島んちなんだわ」
『真島?あいつ帰って来てんの?』
「いや、まだ」
『連絡は?』
「ない」
『そっか。オレもちょこちょ送ってるけどLINEも既読つかねえし。電源切ってるんだな』
「だな」
灰谷は窓の外を眺めた。
青い空に入道雲。
今日も暑い。
この暑いのにチャリでどこに行ったんだか。
バイクも見つかったし、真島、早く帰ってくればいいのに。
『じゃあ明日な』
「ウイーッス」
バイクの用意はできた。
後は、真島の両親に許可をとらないと。
おもに節子だな。
節子、バイクは高校卒業までダメだって言ってたらしいからな。
ん~。
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灰谷は自分の頬を叩くと、一階に下りていった。
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