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第83話 ごめん
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病院に一晩泊まって、オレは退院した。
家に帰ってスマホを開けば、結衣ちゃんからは何件もの着信が入り、LINEには『真島くん大丈夫?』の文字が並んでいた。
公園で『おやすみ』と返してから、ずっと連絡がつかなかったんだからしょうがないか。
グループLINEを開けば、灰谷が母ちゃんからとメッセージを入れてくれていた。
遡って、ざっと読み飛ばす。
それにしても熱中症で入院なんて我ながらダサすぎる。
♪~
オレの既読に気がついたのだろう。
結衣ちゃんからすぐにLINEが入る。
『真島くん、退院したの?大丈夫?』
『うん』と返す。
♪~
『よかった。心配したんだよ』
『ごめん』と返す。
♪~
『会いたい』
会いたい。会いたいか。
オレは……誰に会いたい?
結衣ちゃんに会いたい?
正直になろう。
オレが会いたいのは……顔を見たいのは……声を聞きたいのは……いつだってそう、ただ一人だけだった。
結衣ちゃんに電話した。
『もしもし、真島くん?』
「結衣ちゃん、明日、いや、今から、会える?」
*
ファミレスで、オレは結衣ちゃんと向い合っていた。
「真島くん、カラダはもういいの」
「うん。結衣ちゃんにも心配かけちゃってごめん」
「ビックリした~全然連絡つかないし。明日美から灰谷くんに聞いてもらったら入院したっていうから」
「うん。ごめん」
結衣ちゃんはオレの手を握って言った。
「心配した」
本当に心配してくれた事が伝わってきた。
「ごめん」
「なんでそんなに謝るの」
「ん?ごめん」
「ほら、また。何にも悪い事してないのに」
結衣ちゃんが笑った。
それは……これからするから。
「じゃ、今日はあたしがごちそうするから。なんでも好きなもの頼んでね」
「いや……」
結衣ちゃんの手を離した。
「ん?」
「結衣ちゃん、オレ、結衣ちゃんに話がある」
「何?先に注文しちゃわない?何にしようかな~」
メニューを開く結衣ちゃん。
オレのことをまったく疑っていない結衣ちゃん。
その結衣ちゃんに、オレはこれからサイテー最悪なことをする。
「ごめん。オレと別れてほしい」
「え?」
結衣ちゃんがメニューから顔を上げた。
「本当にごめん。もう、付き合えない」
「…どういう事?冗談だよね」
「ごめん、付き合えない」
オレはもう一度言った。
結衣ちゃんはそのまま固まって、かなり長いことオレの顔を見つめた。
「え?え?どうして?なんかあった?」
「ごめん」
「ごめんじゃわからないよ。どうして」
「オレが悪いんだ。ごめん。別れてください」
オレは頭を下げた。
「なんかのイタズラ?佐藤くんたちどっかで動画撮ってるとか?」
「ちがう」
オレは顔を上げて結衣ちゃんの目を見た。
オレの本気が結衣ちゃんにもわかったみたいだった。
「……イヤ」
「ごめん」
「別れない」
「ごめん」
「どうして?あたし、なんかした?真島くんに嫌われるようなこと」
「いや。そんなこと何もしてない」
「じゃあどうして」
「……結衣ちゃんは何も悪くない。オレが悪いんだ」
「わからないよ」
「ごめん」
「わからないよ真島くん」
オレたちは黙りこんだ。
どのくらいそうしていたんだろう。
結衣ちゃんが小さな声で聞いた。
「もう……あたしに飽きちゃった?」
「違う」
「違わない」
「違うよ。そんなんじゃない」
「じゃあ何?なんで急にそんなこと言うの。あたし、好きだよ真島くんのこと」
「……ごめん」
「好きだって言ってくれないの?」
「……ごめん」
「あんなに言ってくれたのに」
「……ごめん。結衣ちゃんにはごめんしか言えない。本当にごめん。オレのことは忘れて欲しい」
「できないよ」
結衣ちゃんは今にも泣き出しそうだった。
でも、言わなきゃならない。
きちんと言わなきゃ。
「できなくてもして欲しい。オレのことなんか早く忘れて結衣ちゃんのこと本当に好きだって言ってくれる人と出会ってほしい」
「イヤ。やだよ。やだよ真島くん」
「ごめん。もう会わない」
長い長い沈黙が落ちた。
「……あたしストーカーになるかも。毎日電話して、家の前やバイト先のコンビニの前で待ってるかも」
「いいよ。気が済むならなんでもして。でも、オレはもう何もできないよ」
「……」
オレに言えることは、もう何もなかった。
伝票をつかんで立ち上がった。
「真島くん!」
立ち去ろうとしたオレの腕を結衣ちゃんがつかんだ。
「やだよ」
オレは結衣ちゃんの目を見て言った。
「本当に、ごめん」
そして結衣ちゃんの腕をつかんで離すと背を向けて出口に向かった。
家に帰ってスマホを開けば、結衣ちゃんからは何件もの着信が入り、LINEには『真島くん大丈夫?』の文字が並んでいた。
公園で『おやすみ』と返してから、ずっと連絡がつかなかったんだからしょうがないか。
グループLINEを開けば、灰谷が母ちゃんからとメッセージを入れてくれていた。
遡って、ざっと読み飛ばす。
それにしても熱中症で入院なんて我ながらダサすぎる。
♪~
オレの既読に気がついたのだろう。
結衣ちゃんからすぐにLINEが入る。
『真島くん、退院したの?大丈夫?』
『うん』と返す。
♪~
『よかった。心配したんだよ』
『ごめん』と返す。
♪~
『会いたい』
会いたい。会いたいか。
オレは……誰に会いたい?
結衣ちゃんに会いたい?
正直になろう。
オレが会いたいのは……顔を見たいのは……声を聞きたいのは……いつだってそう、ただ一人だけだった。
結衣ちゃんに電話した。
『もしもし、真島くん?』
「結衣ちゃん、明日、いや、今から、会える?」
*
ファミレスで、オレは結衣ちゃんと向い合っていた。
「真島くん、カラダはもういいの」
「うん。結衣ちゃんにも心配かけちゃってごめん」
「ビックリした~全然連絡つかないし。明日美から灰谷くんに聞いてもらったら入院したっていうから」
「うん。ごめん」
結衣ちゃんはオレの手を握って言った。
「心配した」
本当に心配してくれた事が伝わってきた。
「ごめん」
「なんでそんなに謝るの」
「ん?ごめん」
「ほら、また。何にも悪い事してないのに」
結衣ちゃんが笑った。
それは……これからするから。
「じゃ、今日はあたしがごちそうするから。なんでも好きなもの頼んでね」
「いや……」
結衣ちゃんの手を離した。
「ん?」
「結衣ちゃん、オレ、結衣ちゃんに話がある」
「何?先に注文しちゃわない?何にしようかな~」
メニューを開く結衣ちゃん。
オレのことをまったく疑っていない結衣ちゃん。
その結衣ちゃんに、オレはこれからサイテー最悪なことをする。
「ごめん。オレと別れてほしい」
「え?」
結衣ちゃんがメニューから顔を上げた。
「本当にごめん。もう、付き合えない」
「…どういう事?冗談だよね」
「ごめん、付き合えない」
オレはもう一度言った。
結衣ちゃんはそのまま固まって、かなり長いことオレの顔を見つめた。
「え?え?どうして?なんかあった?」
「ごめん」
「ごめんじゃわからないよ。どうして」
「オレが悪いんだ。ごめん。別れてください」
オレは頭を下げた。
「なんかのイタズラ?佐藤くんたちどっかで動画撮ってるとか?」
「ちがう」
オレは顔を上げて結衣ちゃんの目を見た。
オレの本気が結衣ちゃんにもわかったみたいだった。
「……イヤ」
「ごめん」
「別れない」
「ごめん」
「どうして?あたし、なんかした?真島くんに嫌われるようなこと」
「いや。そんなこと何もしてない」
「じゃあどうして」
「……結衣ちゃんは何も悪くない。オレが悪いんだ」
「わからないよ」
「ごめん」
「わからないよ真島くん」
オレたちは黙りこんだ。
どのくらいそうしていたんだろう。
結衣ちゃんが小さな声で聞いた。
「もう……あたしに飽きちゃった?」
「違う」
「違わない」
「違うよ。そんなんじゃない」
「じゃあ何?なんで急にそんなこと言うの。あたし、好きだよ真島くんのこと」
「……ごめん」
「好きだって言ってくれないの?」
「……ごめん」
「あんなに言ってくれたのに」
「……ごめん。結衣ちゃんにはごめんしか言えない。本当にごめん。オレのことは忘れて欲しい」
「できないよ」
結衣ちゃんは今にも泣き出しそうだった。
でも、言わなきゃならない。
きちんと言わなきゃ。
「できなくてもして欲しい。オレのことなんか早く忘れて結衣ちゃんのこと本当に好きだって言ってくれる人と出会ってほしい」
「イヤ。やだよ。やだよ真島くん」
「ごめん。もう会わない」
長い長い沈黙が落ちた。
「……あたしストーカーになるかも。毎日電話して、家の前やバイト先のコンビニの前で待ってるかも」
「いいよ。気が済むならなんでもして。でも、オレはもう何もできないよ」
「……」
オレに言えることは、もう何もなかった。
伝票をつかんで立ち上がった。
「真島くん!」
立ち去ろうとしたオレの腕を結衣ちゃんがつかんだ。
「やだよ」
オレは結衣ちゃんの目を見て言った。
「本当に、ごめん」
そして結衣ちゃんの腕をつかんで離すと背を向けて出口に向かった。
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