ナツノヒカリ ~親友への片思いをこじらせる高校生男子・真島くんのひと夏の物語~

カノカヤオ

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第68話 見るなよ見るな……いや、見ろ 

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ん?灰谷?
灰谷は右手に箸を持ち、左手に白米の入った茶碗を持ち、鉄板の上の肉を見つめている。

え?何やってんの?

声は出てないけど口が動いてる。
ん?

そんでさっと肉をひっくり返したかと思うとまたブツブツ。
かと思うとさっと肉を箸でつまみ上げるとタレにくぐらせご飯にバウンドして口の中へ。
ハフハフ。
あっつい。肉汁~。
そして白米を一口。
肉と白米のマリアージュ最高!って感じか?
アテレコするなら。

ありゃ最近なんかテレビで見たな。
肉のウマイ焼き方とかなんとか。

片面7秒片面5秒で間髪入れず口に放りこめとかさ。
ああ見えて意外と、うんちくとか好きだからな。

灰谷はまた肉をプレートの上にのせた。

口が数字を形づくる。
ほらな。


「灰谷くんサラダ食べる?」

話しかけた明日美ちゃんを灰谷が手で制した。
肉から目を離さない。
何その真剣さ。


「4、5……はい」

明日美ちゃんの皿に肉をのせる。

「え?」
「早く早く」

慌てて明日美ちゃんが肉を口に入れる。

「どう?」
「……おっ、おいしい」
「だろ~。片面7秒裏5秒」

まるで自分で発見したみたいにドヤ顔で微笑む。


なんだか……ね。
料理評論家かっつうの。
ホントめんどくさいやつ。
あ~でもこういうとこ。
こういうアホみたいな顔で笑うとこ。
そこもオレ……。


ふいに灰谷と目が合ってしまった。
オレは慌てて目をそらす。
見てたのバレるって。


「真島くん、お肉焦げてるよ」
「え?ああ」
「お肉ばっかり食べてるよ。お野菜も食べなさい」
「オレのこと見てたの結衣ちゃん」
「え?うん」
「結衣ちゃんこそ、肉食べなさい。もうちっとカラダにもお肉つけてもいいよ」

言いながらオレは結衣ちゃんの腹の肉をつまんだ。

「キャー!」

キャーって。

結衣ちゃんの声の大きさにみんなの視線が集まった。


佐藤が呆れ顔で言う。

「真島、オマエ、もうホント控えろよ」
「ちがうって。ちょっとこうしただけだって」

腹の肉をつまむ。

「キャー」
「あれ?ツボ?」
「やめてやめて」

おもしろくなったオレは逃げる結衣ちゃんの腹をつまみまくる。

「明日美、助けて」
「よいではないか。よいではないか」
「キャー」


にぎやかな笑いに包まれる。
ちょっとやり過ぎかなとは思うけど。
つい調子に乗ってしまうオレ。

ふと灰谷はどんな顔してるかなと視線をやれば、オレを見ている。

その顔。

一人だけ笑ってないその顔で、オレのこと見ている。
オレの好きなその顔でオレのこと、見ている。

……見るなよ。見るな。
いや、見ろ。見て……そんで……。
あ……そらした。


「ほ~い。結衣ちゃんお肉。あ~ん」
「ん~」
「おいしい?」
「うん」
「あっ、タレついてる」

ティッシュで結衣ちゃんの口元をぬぐう。

「ラブラブカップルがいるよ~」

佐藤が囃し立てる。

「ほっとけ。結衣ちゃんラブラブ~」と指でハートマークの片側を作れば。
「真島くんラブラブ~」と赤面しながらもう片方を作ってくれた。

「キー!中田~!」
「なんだよ。猿か」
「おう猿だ。キーキーキー」
「真島のラブラブに佐藤が野生化した」
「ウキキキキー」

佐藤が本気で猿になって部屋中を暴れ回る。

「うまいぞ佐藤。チンパンジーだな」
「桜子、サティにバナナ上げてみれば」
「ウホウホウホ」

佐藤の猿芸をみんなでチャカす。


「真島くん真島くん」

結衣ちゃんが耳元でささやいた。

「何?」
「真島くんの部屋、見てみたいな」

そういえば結衣ちゃんがうちに来たのは初めてだった。
母ちゃんにバレると色々うるさいからな。

オレは結衣ちゃんの耳にささやき返す。

「じゃあ、ちょっと抜けて見に行く?」
「うん」
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