60 / 154
第60話 押し寄せた感情
しおりを挟む
カラオケボックスに結衣ちゃんと二人。
シブる結衣ちゃんを引っ張って連れてきた。
歌ってりゃ間が持つし、オレ、カラオケはキライじゃない。
オンチだから歌えないという結衣ちゃんは、「真島くんの歌聞きたいな」と言う。
オレはテキトーに曲を突っこんで何曲か歌った。
結衣ちゃんは本当に嬉しそうに聞いているが、自分の歌う曲を選ばない。
「結衣ちゃん、そろそろどう?」
結衣ちゃんはモジモジした。
「真島くん、あたしね、本当に本当にオンチなの」
「別にいいよ。歌うのって気持よくない?」
「そうだけど」
「気にしなくていいよ。佐藤とかもムチャクチャ下手だけど気にしないで気持ちよさそうに歌ってるよ」
「う~ん。佐藤くんのレベルがわからないけど、あたしのは相当にヤバイレベルなの」
「とりあえず、1曲歌ってみ?」
「ゴメン、ちょっとお手洗い行ってくる」
と、出ていってしまった。
逃げたな。
こんだけシブるってどんななんだか逆に興味をそそる。
自分で思ってるだけで意外とそうでもないと思うんだけど。
高音が出ないとかだろきっと。
結衣ちゃんは中々帰ってこない。
とりあえずなんか流しとくか。
あ、そうだ。
さっき目についたミスチルの「しるし」を入れてみよう。
そうそうピアノから始まる。
♪最初からこうなることが 決まっていたみたいに
違うテンポで刻む鼓動を互いが聞いてる
画面に流れる歌詞を目で追った。
うん。ほら頭から歌詞がヤバイ。
♪どんな言葉を選んでも どこか嘘っぽいんだ
左脳に書いた手紙 ぐちゃぐちゃに丸めて捨てる
心の声は君に届くのかな? 沈黙の歌に乗って
ダーリンダーリン
――その感情は突然押し寄せた。
余計なこと考えないようにバイト目一杯入れたり、城島さんと寝たり、結衣ちゃんとデートしたり。
それなのに……。
一人でカラオケボックスにいる時に。
――灰谷。
――灰谷。
――灰谷。
顔、見たい。
声、聞きたい。
灰谷!
なんでオマエ、今オレといないんだよ。
オレ、なんで今、灰谷といっしょにいないんだよ。
なんだ?この理不尽なまでの怒り。
つうか淋しさ?
はあ~。
オレは拳を握りしめて机に顔を伏せた。
オレはこれから何度、心の中でこの名前を呼ぶんだろう。
こんな思いにとらわれるんだろう。
心臓イタイ。
メロディーラインを強調したボーカルのない安っぽい演奏が流れ続けている。
曲に合わせて歌詞が頭の中で流れる。
あ、ここ好き。
オレはつぶやくように声を出す。
♪泣いたり笑ったり不安定な思いだけど
それが君と僕のしるし
♪ダーリンダーリン
いろんな角度から君を見てきた
共に生きれない日が来たって
どうせ愛してしまうと思うんだ
ダーリンダーリン Oh My darling
狂おしく鮮明に僕の記憶を埋めつくす
♪ダーリンダーリン
泣きそうになる。
そう。
どうあらがっても、オレは灰谷の事をどうせ好きになってしまったと思うんだ。
そして今、狂おしく鮮明にオレの記憶を埋めつくすのは灰谷の姿なんだ。
切なさに打ちのめされて、なんだか甘い気持ちすらこみ上げる。
灰谷を思う時に付きまとうその胸の痛みがオレの感じる超リアルだったりもする。
同じようなこと、城島さんが言ってなかったか?
「これはだからさ、痛みと恐怖が結びついて快感に、生きてる実感をもたらしてくれるってやつだね、きっと」。
ああ。こういうことか。
もしかしたらオレと城島さんは根っこが似ているのかもしれない。
二人とも究極のロマンティストで狂ったマゾヒストなのかも。
マゾ……。
いやどっちかっつうと究極のナルシストか。
切な痛いラブソング聞いて自分の胸をえぐって酔っ払うバカ一人。
曲が終わった。
はあ~もう……イヤんなる。
シブる結衣ちゃんを引っ張って連れてきた。
歌ってりゃ間が持つし、オレ、カラオケはキライじゃない。
オンチだから歌えないという結衣ちゃんは、「真島くんの歌聞きたいな」と言う。
オレはテキトーに曲を突っこんで何曲か歌った。
結衣ちゃんは本当に嬉しそうに聞いているが、自分の歌う曲を選ばない。
「結衣ちゃん、そろそろどう?」
結衣ちゃんはモジモジした。
「真島くん、あたしね、本当に本当にオンチなの」
「別にいいよ。歌うのって気持よくない?」
「そうだけど」
「気にしなくていいよ。佐藤とかもムチャクチャ下手だけど気にしないで気持ちよさそうに歌ってるよ」
「う~ん。佐藤くんのレベルがわからないけど、あたしのは相当にヤバイレベルなの」
「とりあえず、1曲歌ってみ?」
「ゴメン、ちょっとお手洗い行ってくる」
と、出ていってしまった。
逃げたな。
こんだけシブるってどんななんだか逆に興味をそそる。
自分で思ってるだけで意外とそうでもないと思うんだけど。
高音が出ないとかだろきっと。
結衣ちゃんは中々帰ってこない。
とりあえずなんか流しとくか。
あ、そうだ。
さっき目についたミスチルの「しるし」を入れてみよう。
そうそうピアノから始まる。
♪最初からこうなることが 決まっていたみたいに
違うテンポで刻む鼓動を互いが聞いてる
画面に流れる歌詞を目で追った。
うん。ほら頭から歌詞がヤバイ。
♪どんな言葉を選んでも どこか嘘っぽいんだ
左脳に書いた手紙 ぐちゃぐちゃに丸めて捨てる
心の声は君に届くのかな? 沈黙の歌に乗って
ダーリンダーリン
――その感情は突然押し寄せた。
余計なこと考えないようにバイト目一杯入れたり、城島さんと寝たり、結衣ちゃんとデートしたり。
それなのに……。
一人でカラオケボックスにいる時に。
――灰谷。
――灰谷。
――灰谷。
顔、見たい。
声、聞きたい。
灰谷!
なんでオマエ、今オレといないんだよ。
オレ、なんで今、灰谷といっしょにいないんだよ。
なんだ?この理不尽なまでの怒り。
つうか淋しさ?
はあ~。
オレは拳を握りしめて机に顔を伏せた。
オレはこれから何度、心の中でこの名前を呼ぶんだろう。
こんな思いにとらわれるんだろう。
心臓イタイ。
メロディーラインを強調したボーカルのない安っぽい演奏が流れ続けている。
曲に合わせて歌詞が頭の中で流れる。
あ、ここ好き。
オレはつぶやくように声を出す。
♪泣いたり笑ったり不安定な思いだけど
それが君と僕のしるし
♪ダーリンダーリン
いろんな角度から君を見てきた
共に生きれない日が来たって
どうせ愛してしまうと思うんだ
ダーリンダーリン Oh My darling
狂おしく鮮明に僕の記憶を埋めつくす
♪ダーリンダーリン
泣きそうになる。
そう。
どうあらがっても、オレは灰谷の事をどうせ好きになってしまったと思うんだ。
そして今、狂おしく鮮明にオレの記憶を埋めつくすのは灰谷の姿なんだ。
切なさに打ちのめされて、なんだか甘い気持ちすらこみ上げる。
灰谷を思う時に付きまとうその胸の痛みがオレの感じる超リアルだったりもする。
同じようなこと、城島さんが言ってなかったか?
「これはだからさ、痛みと恐怖が結びついて快感に、生きてる実感をもたらしてくれるってやつだね、きっと」。
ああ。こういうことか。
もしかしたらオレと城島さんは根っこが似ているのかもしれない。
二人とも究極のロマンティストで狂ったマゾヒストなのかも。
マゾ……。
いやどっちかっつうと究極のナルシストか。
切な痛いラブソング聞いて自分の胸をえぐって酔っ払うバカ一人。
曲が終わった。
はあ~もう……イヤんなる。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
【R18】孕まぬΩは皆の玩具【完結】
海林檎
BL
子宮はあるのに卵巣が存在しない。
発情期はあるのに妊娠ができない。
番を作ることさえ叶わない。
そんなΩとして生まれた少年の生活は
荒んだものでした。
親には疎まれ味方なんて居ない。
「子供できないとか発散にはちょうどいいじゃん」
少年達はそう言って玩具にしました。
誰も救えない
誰も救ってくれない
いっそ消えてしまった方が楽だ。
旧校舎の屋上に行った時に出会ったのは
「噂の玩具君だろ?」
陽キャの三年生でした。
【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】
NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生
SNSを開設すれば即10万人フォロワー。
町を歩けばスカウトの嵐。
超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。
そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。
愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。
犬用オ●ホ工場~兄アナル凌辱雌穴化計画~
雷音
BL
全12話 本編完結済み
雄っパイ●リ/モブ姦/獣姦/フィスト●ァック/スパンキング/ギ●チン/玩具責め/イ●マ/飲●ー/スカ/搾乳/雄母乳/複数/乳合わせ/リバ/NTR/♡喘ぎ/汚喘ぎ
一文無しとなったオジ兄(陸郎)が金銭目的で実家の工場に忍び込むと、レーン上で後転開脚状態の男が泣き喚きながら●姦されている姿を目撃する。工場の残酷な裏業務を知った陸郎に忍び寄る魔の手。義父や弟から容赦なく責められるR18。甚振られ続ける陸郎は、やがて快楽に溺れていき――。
※闇堕ち、♂♂寄りとなります※
単話ごとのプレイ内容を12本全てに記載致しました。
(登場人物は全員成人済みです)
お前らの相手は俺じゃない!
くろさき
BL
大学2年生の鳳 京谷(おおとり きょうや)は、母・父・妹・自分の4人家族の長男。
しかし…ある日子供を庇ってトラック事故で死んでしまう……
暫くして目が覚めると、どうやら自分は赤ん坊で…妹が愛してやまない乙女ゲーム(🌹永遠の愛をキスで誓う)の世界に転生していた!?
※R18展開は『お前らの相手は俺じゃない!』と言う章からになっております。
叔父を愛している話
神谷 愛
BL
急に両親がいなくなった。ほかに頼れる人もいなかった僕は叔父のもとに引き取られることになった。妻もいないという叔父は優しく僕を受け入れてくれた。一緒に暮らしているうちに自分の中に親愛とはことなる感情が生まれていることを言い出せないまま数年を過ごしていた。
ラガー少年緊縛特訓
龍賀ツルギ
BL
ラグビー部の高校生塚本マモルが監督の今村秀雄にマゾ調教される話。
たまにはサッカー少年ではなく精悍なラグビー少年の調教話を書きたくなりました。
いつも華奢な美少年ばかりを餌食にしておりますので😅
ローズバットNightにもマモルと言う名のラグビー青年が出てきますが関連は有りません。
この作品ではハイソックスをラグビーソックスと表記いたします❗
僕の作品ですのでマモルもラグビーソックスを履いて緊縛調教されます。
短篇で書いていくつもりです😺
目標10000字を超えずにまとめること‼️
いくら仲良しでも適度な距離は必要です。
蒼乃 奏
BL
「俺、考えたんだけど。悠太は俺と付き合ってる事にしよう」
「………え?何言ってんの?」
幼なじみの訳の分からない説得に混乱する俺。
「もう無理だから。選択肢はないから」
何が無理なのか知らないけど、お前と付き合うとか無理なんですけど。
とりあえず、その際どい所を触ってる手を離してもらえませんかね?
幼なじみとの適度な距離って?
甘いBLです。本番は※をつけます。
R18なので苦手な方はスルーしてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる