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第48話 夏休みの憂鬱
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う~ん。
バイト行って帰ってきて、居間で夕飯ができるのをテレビ見ながら待っているオレ。
真島:信(まこと)、十七歳。高校二年の夏。
……って、どうよ。
イケてねえなあ。
「信、大根おろして」
「え~」
「今日は天ぷらよ」
「お~いいね~チクワは?」
「あるわよ」
「お~やった」
ジュウジュウ~。
母が揚げる天ぷらのうまそうなニオイがする。
「腹へった~」
「もうすぐだから。せっかく三人そろうんだから、みんなで食べましょ。多めに揚げとくから、明日は天丼よ」
「いいね~」
天ぷら~。
ガシガシガシガシ。
……しかし佐藤に彼女か。
良かった。
あいつ、いいヤツだもん。
嬉しそうだったな。
まあ中田の彼女の妹ってのが笑えるけど。
そんな偶然あるんだな。
ぐ~腹へった~。
しかし、灰谷がオレのことを見てたとか、中田こそよくオレらのこと見てるよな。
ん~。
灰谷……オレのこと、気にしてくれてんのかな。
だとしたら、ちょと嬉しい……とか。
ダメだろオレ。
頭ゆるんでる。
ん?母ちゃんがなんか言ってる。
「あんたバイトバイトっていっつもいないし。もういい加減、自転車ぐらい買えるんじゃないの」
「いいやつ買いたいんだよ」
「言っとくけど。バイクは卒業するまでダメだからね」
「わかってるって。大根おろしできた」
「ありがとう」
いや、バイクどころか。ホテル代でお金なんかちっとも貯まってねえから。
「熱っ」
「これ、つまみ食いしないっ」
「ウマ~。チクワうま~」
灰谷も好きなんだよな。チクワ。
「そうだ信、灰谷くん彼女できたのね」
「え?なんで知ってんだよ」
「昼間見たのよ。なんか街中でブッチューってキスしてるカップルがいて、あら~と思ったら灰谷くんだったのよ!」
街中でキス!
「で、声かけたら紹介してくれたのよ」
「声かけたの?」
「もちろん、キスが終わってしばらくしてからよ」
「そこはスルーだろ」
「だって彼女の顔、見たいじゃない」
「ババア!」
「ババアってやめてよ。カワイイ子ね~。女優さんみたい。節子かなりショック」
「なんでババアがショック受けんだよ」
「イイ男はみんなのものよ」
「言ってろ」
「灰谷くん達も天ぷらに誘おうかと思ったんだけど、さすがにやめたわ」
明日美ちゃん連れて来ねえだろ。
つうか来られても地獄だしオレ。
「それと、ヒロちゃんの転勤はなくなったからね」
「地元離れるのイヤで断ったんだろ」
「そうよ。あら、わかってるじゃない」
「わかってるよ」
「あら?だって……」
ピー!
「あ、ごはんできた」
つうかなんでこの流れでヒロ兄ちゃんの話?
わかんねえ。
たまに話が噛み合わねえんだよな母ちゃんは。
せっかちで話半分しか聞いてないところがあるんだよ。
そんなことより灰谷がキス……。
まあ、キスくらいするだろ。
でも、あの灰谷が、街中でキス……。
なんだよ、ちゃんとやることやってんじゃん。
好きなんじゃん、明日美ちゃんのこと。
オレのこと気にしてるとか、関係ないじゃん。
整理したはずの心がザワザワしはじめた。
見てもいないその光景が頭のスクリーンに描き出されてクラクラする。
あ~もう、なんかいてもたってもいられない。
城島さんに……ダメだ。
こういうのがダメなんだよな。きっと負担になってるんだ。
ちょっとは一人でいられるようにならないとな。
そう、オレ、甘えてる。城島さんに。
城島さんはオレに会えなくなっても平気なのかな。
平気なんだろうな。
あ~なんかもうオレ、城島さんが好きなのか?
いや、好きだけど。
そういう好き?
あ~。モヤモヤする。
胸がモヤモヤ。
あそこがモヤモヤ。
腹がグーグー。
「つうか腹減ったってババア」
「ババア言うなコゾウ」
「誰が寺の下働きだ」
「違うわパオーンの方よ」
「小象?」
「そう」
「意味わかんねえし」
「そこはパオーンでしょ」
「言わねえよ」
「ただいま~」
オヤジが帰ってきた。
「お帰りお父さん、今日はめずらしく:信(まこと)も一緒に食べれるわよ」
「おうコゾウ、元気か」
母ちゃんが期待に満ちた目でオレの顔を見る。
「言わねえよ」
「おい信、そこはパオーンだろ」
「そうよねえ~お父さん」
この似たもの夫婦。
「言わないっつうの」
*
食事も済んで自室。
オレの頭には一つの映像がエンドレス。
灰谷がキス……。
明日美ちゃんと街中で。
気が沈む……。
ったくババアのやつ。
余計なもん見やがって。
ブッチューか。ブッチュー。
はあ。
ダメだ。
オレは城島さんにLINEでメッセージを送る。
『明日、会えますか』
返信を待つ。
10分。20分。
つかねえな既読。
会いたいな城島さんに。
そんで、メチャメチャにヤりてえ。
いろんな事考えられないくらいに。
まあ城島さんはいつも優しいけど。
♪~
通知音。
来た!
『ごめんね真島くん、繁忙期なんでちょっと難しそうなんだ』
繁忙期。
そうだよな。城島さんは社会人だもんな。
『ムリ言っちゃってすいませんでした。また誘います』と返信した。
『近いうちにまた。こっちから連絡するね』とすぐに返ってきた。
城島さんは優しい。
たとえこのままもう会えなくなってしまったとしてもそれは仕方がないことなんだ、とも思う。
でも、淋しいなあ。
すんごく淋しい。
バイト行って帰ってきて、居間で夕飯ができるのをテレビ見ながら待っているオレ。
真島:信(まこと)、十七歳。高校二年の夏。
……って、どうよ。
イケてねえなあ。
「信、大根おろして」
「え~」
「今日は天ぷらよ」
「お~いいね~チクワは?」
「あるわよ」
「お~やった」
ジュウジュウ~。
母が揚げる天ぷらのうまそうなニオイがする。
「腹へった~」
「もうすぐだから。せっかく三人そろうんだから、みんなで食べましょ。多めに揚げとくから、明日は天丼よ」
「いいね~」
天ぷら~。
ガシガシガシガシ。
……しかし佐藤に彼女か。
良かった。
あいつ、いいヤツだもん。
嬉しそうだったな。
まあ中田の彼女の妹ってのが笑えるけど。
そんな偶然あるんだな。
ぐ~腹へった~。
しかし、灰谷がオレのことを見てたとか、中田こそよくオレらのこと見てるよな。
ん~。
灰谷……オレのこと、気にしてくれてんのかな。
だとしたら、ちょと嬉しい……とか。
ダメだろオレ。
頭ゆるんでる。
ん?母ちゃんがなんか言ってる。
「あんたバイトバイトっていっつもいないし。もういい加減、自転車ぐらい買えるんじゃないの」
「いいやつ買いたいんだよ」
「言っとくけど。バイクは卒業するまでダメだからね」
「わかってるって。大根おろしできた」
「ありがとう」
いや、バイクどころか。ホテル代でお金なんかちっとも貯まってねえから。
「熱っ」
「これ、つまみ食いしないっ」
「ウマ~。チクワうま~」
灰谷も好きなんだよな。チクワ。
「そうだ信、灰谷くん彼女できたのね」
「え?なんで知ってんだよ」
「昼間見たのよ。なんか街中でブッチューってキスしてるカップルがいて、あら~と思ったら灰谷くんだったのよ!」
街中でキス!
「で、声かけたら紹介してくれたのよ」
「声かけたの?」
「もちろん、キスが終わってしばらくしてからよ」
「そこはスルーだろ」
「だって彼女の顔、見たいじゃない」
「ババア!」
「ババアってやめてよ。カワイイ子ね~。女優さんみたい。節子かなりショック」
「なんでババアがショック受けんだよ」
「イイ男はみんなのものよ」
「言ってろ」
「灰谷くん達も天ぷらに誘おうかと思ったんだけど、さすがにやめたわ」
明日美ちゃん連れて来ねえだろ。
つうか来られても地獄だしオレ。
「それと、ヒロちゃんの転勤はなくなったからね」
「地元離れるのイヤで断ったんだろ」
「そうよ。あら、わかってるじゃない」
「わかってるよ」
「あら?だって……」
ピー!
「あ、ごはんできた」
つうかなんでこの流れでヒロ兄ちゃんの話?
わかんねえ。
たまに話が噛み合わねえんだよな母ちゃんは。
せっかちで話半分しか聞いてないところがあるんだよ。
そんなことより灰谷がキス……。
まあ、キスくらいするだろ。
でも、あの灰谷が、街中でキス……。
なんだよ、ちゃんとやることやってんじゃん。
好きなんじゃん、明日美ちゃんのこと。
オレのこと気にしてるとか、関係ないじゃん。
整理したはずの心がザワザワしはじめた。
見てもいないその光景が頭のスクリーンに描き出されてクラクラする。
あ~もう、なんかいてもたってもいられない。
城島さんに……ダメだ。
こういうのがダメなんだよな。きっと負担になってるんだ。
ちょっとは一人でいられるようにならないとな。
そう、オレ、甘えてる。城島さんに。
城島さんはオレに会えなくなっても平気なのかな。
平気なんだろうな。
あ~なんかもうオレ、城島さんが好きなのか?
いや、好きだけど。
そういう好き?
あ~。モヤモヤする。
胸がモヤモヤ。
あそこがモヤモヤ。
腹がグーグー。
「つうか腹減ったってババア」
「ババア言うなコゾウ」
「誰が寺の下働きだ」
「違うわパオーンの方よ」
「小象?」
「そう」
「意味わかんねえし」
「そこはパオーンでしょ」
「言わねえよ」
「ただいま~」
オヤジが帰ってきた。
「お帰りお父さん、今日はめずらしく:信(まこと)も一緒に食べれるわよ」
「おうコゾウ、元気か」
母ちゃんが期待に満ちた目でオレの顔を見る。
「言わねえよ」
「おい信、そこはパオーンだろ」
「そうよねえ~お父さん」
この似たもの夫婦。
「言わないっつうの」
*
食事も済んで自室。
オレの頭には一つの映像がエンドレス。
灰谷がキス……。
明日美ちゃんと街中で。
気が沈む……。
ったくババアのやつ。
余計なもん見やがって。
ブッチューか。ブッチュー。
はあ。
ダメだ。
オレは城島さんにLINEでメッセージを送る。
『明日、会えますか』
返信を待つ。
10分。20分。
つかねえな既読。
会いたいな城島さんに。
そんで、メチャメチャにヤりてえ。
いろんな事考えられないくらいに。
まあ城島さんはいつも優しいけど。
♪~
通知音。
来た!
『ごめんね真島くん、繁忙期なんでちょっと難しそうなんだ』
繁忙期。
そうだよな。城島さんは社会人だもんな。
『ムリ言っちゃってすいませんでした。また誘います』と返信した。
『近いうちにまた。こっちから連絡するね』とすぐに返ってきた。
城島さんは優しい。
たとえこのままもう会えなくなってしまったとしてもそれは仕方がないことなんだ、とも思う。
でも、淋しいなあ。
すんごく淋しい。
0
★『アキノワルツ ~親友へ決死の告白をした高校生男子・真島くんのその後~
『ナツノヒカリ』続編です。
★〈はじめて〉の話。~片思いしていた同級生が深夜に訪ねてきた、からはじまる初体験の話~
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