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第45話 オレのこと見てた?
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昼のファミレスにペーター灰谷と搾乳隊=サトナカマジハイが集まった。
学校の休み時間みたいにダラダラ話す。
「フィギュア買いすぎた~カネねえ~」
佐藤がボヤく。
「オレもカネない」
「なんでだよ、中田は服屋で朝から晩までバッチリ働いてるんだし、あるだろ?」
「給料日まだなんだよ。初給料でアレ買ってコレ買ってって杏子にプレッシャーかけられてるし。残んないんじゃねえの?」
「うお~まるで恐妻家だな。尻に敷かれてるじゃん」
「つうか休みの日は疲れて寝てるし、夏休みだっていうのにどこにも連れて行ってやれてねえし、しょうがねえかなあと」
「そんなもん?」
「そんなもんだろう~。女の尻には敷かれたほうがいいんだよ」
「中田~オマエ十代で達観してんな~」
正面でくり広げられるサトナカのやりとりを聞くともなく聞きながらオレはLINEのメッセージを確認する。
……来てないか。
あれから……。
灰谷と明日美ちゃんと遭遇してから、城島さんとは会えていない。
約束したのに残業が入ったからって会えなくなったのが二回。
避けられているのかなと思う。
オレの気持ちが少し城島さんに傾いているのを感じて重荷になったのかもしれない。
あの人にとってオレはただのセフレで。
で、きっと過去の自分の幻影で。
ただのセフレに親友やらその彼女まで現れて面倒くさくなったのかもしれない。
でもオレ、あの人がいたから……。
城島さんがいたから、灰谷への気持ちに整理をつけることができたんだ。
あの人がいなかったら……きっとすぐに戻ってしまう。
まるで形状記憶みたいに、住み慣れた地獄に戻ってしまう。
そんな気がする……。
「……真島……おい真島……真島ったら!」
「え?」
「何ボーっとしてんだよ。夏バテか?」
「いや、ワリぃ。で、なんだよ」
「だから~この後みんなでこのまんまどっか行かねえ?カラオケとかさ」
「中田はデートだろ?」
「だから空いてるって」
めずらしく中田が言う。
残念だけどオレはダメだった。
「オレ、バイト入ってるわ。この後」
「なあんで、そんなにバイトしてんだよ真島は」
「いや、バイク欲しくてさ」
「それ夏休み前から言ってねえ?まだ貯まんないの」
「んあ~使っちゃうから貯まんねえんだよ」
「ダメじゃん」
「灰谷は?カラオケ」
そういえば灰谷はさっきからスマホの画面ばかり見つめている。
「ああ、オレ、夜は当分ダメだと思う」
「アスミルク?」
「ああ。じゃねえアスミルクって言うな」
「ペーターはアスミルクの搾乳で忙しいんですのよ」
「搾乳もやめろ」
「じゃあ乳搾り?」
「なんだよマジハイ、付き合いワリぃなあ」
めずらく中田がスネる。
「まあまあ中田くん、お乳のおいしいお年頃なんですのよ」
「乳言うな」
「佐藤どうした、な~んかオマエさっきから余裕あんなぁ。童貞のくせに。ムカつくわ」
「大いにムカつきたまえ中田くん。僕はいままでの佐藤ではないのだよ。くくくくく」
そういえば今日は佐藤が話したいことがあるっていうんで集まったんだった。
忘れてた。
「ジャカジャ~ン。佐藤、女子のケー番・LINEID、ゲットしました~!!」
「おおっ!佐藤。どうした佐藤。佐藤のくせにどうした佐藤」
「ありがとう中田」
「やったな佐藤。やったぞ佐藤。ヤるのか佐藤」
「ありがとう真島」
佐藤が灰谷を見つめた。
「何?」
「灰谷、オマエはボケんのか~い」
「オチ無理だってオレ」
「まあいいや、昨日偶然出会った子でさ。話したら気があってさ~」
「へえ、どんな子?なんて名前?」
「それがね、ようこちゃん。桜の子って書いてようこ。キレイな名前だろ。山下桜子ちゃん」
ブッ!――中田がアイスコーヒーを吐き出した。
「なんだよ中田、汚いねえ」
「おい、佐藤、いますぐその子から手を引け!」
「なんでだよ」
「桜子ちゃんは杏子の妹だ」
「妹?杏子ちゃんの?」
「スマホ貸せ」
「へ?」
「データ削除する」
「何言ってんだやめろ」
「杏子の妹なんてダメだ。やめろ」
「なんでだよ~。つうか逆に協力してくれよ~」
「ぜってえヤダ」
中田の彼女の妹と佐藤が?世の中せまいなあ~。
「面白え~。オマエら将来兄弟になんだわ。何それ少女マンガじゃん」
「ならねえよ!」
「お兄さ~ん、仲良くしましょうよ~」
「ヤダって」
ん?灰谷のやつ静かだな?と見れば、目が合った。
「ん?なんだよ灰谷」
「別に」
バツの悪そうな顔をして目をそらした。
なんだなんだ?
♪~
LINEの通知音。
灰谷のスマホからだった。
「なに灰谷、アスミルク?」
「佐藤、話は終わってない」
「アスミルク言うな。つうかオレ行くわ」
「え~灰谷もう行くのかよ~。聞いてよオレと桜子ちゃんの運命の出会いを」
「ワリぃ。また今度聞くわ。これ、オレの分」
お金を置いて灰谷が立ち上がった。
隣りに座っていた灰谷を通すためにオレも立ち上がる。
「明日美ちゃんによろしく言っといて。佐藤くんから」
「ああ」
「じゃな~」
灰谷はさっさと店を出ていく。
こっちを見たらいつものように乳搾りのジェスチャーをして、からかってやろうと思ったのにオレとは目を合わせなかった。
めずらしい。
なんなの?あいつ。
「あっ、返せよ中田~」
「オマエらなんかあった?マジハイ」
中田が佐藤からとうとうスマホを取り上げてオレに聞く。
「あ?なんで?」
「佐藤、パスワードは?」
「言うかよ。返せよ」
「どうせ、誕生日とかだろ、オマエ単純だから。っていつだったっけ」
「違えし、誕生日じゃねえし」
「じゃあ誕生日いつだよ」
「……教えねえ。誕生日じゃねえから。って返せよ中田」
「誕生日だな。で?真島」
「別に。なんもねえよ」
「そういえば灰谷ほとんどしゃべんなかったな」
そうだった。
話に加わらないし、ほとんどしゃべらなかったと今更ながら気がついた。
「んでも、あいつが四人でいる時、あんまりしゃべんないのなんていつものことだろ。搾乳の段取りでも考えてたんじゃねえの?五月二十三日だったよな佐藤、誕生日」
「うん。ってお~い真島~」
「ハハハッ」
「0523と。あ、開いた」
「お~い!」
「うるさい佐藤。ステイ。真島」
「ん?」
「灰谷はオマエのこと見てたよ」
「え?」
「返せよ~」
灰谷がオレのこと見てた?
なんで?
なんかバレた?まさかな……。
学校の休み時間みたいにダラダラ話す。
「フィギュア買いすぎた~カネねえ~」
佐藤がボヤく。
「オレもカネない」
「なんでだよ、中田は服屋で朝から晩までバッチリ働いてるんだし、あるだろ?」
「給料日まだなんだよ。初給料でアレ買ってコレ買ってって杏子にプレッシャーかけられてるし。残んないんじゃねえの?」
「うお~まるで恐妻家だな。尻に敷かれてるじゃん」
「つうか休みの日は疲れて寝てるし、夏休みだっていうのにどこにも連れて行ってやれてねえし、しょうがねえかなあと」
「そんなもん?」
「そんなもんだろう~。女の尻には敷かれたほうがいいんだよ」
「中田~オマエ十代で達観してんな~」
正面でくり広げられるサトナカのやりとりを聞くともなく聞きながらオレはLINEのメッセージを確認する。
……来てないか。
あれから……。
灰谷と明日美ちゃんと遭遇してから、城島さんとは会えていない。
約束したのに残業が入ったからって会えなくなったのが二回。
避けられているのかなと思う。
オレの気持ちが少し城島さんに傾いているのを感じて重荷になったのかもしれない。
あの人にとってオレはただのセフレで。
で、きっと過去の自分の幻影で。
ただのセフレに親友やらその彼女まで現れて面倒くさくなったのかもしれない。
でもオレ、あの人がいたから……。
城島さんがいたから、灰谷への気持ちに整理をつけることができたんだ。
あの人がいなかったら……きっとすぐに戻ってしまう。
まるで形状記憶みたいに、住み慣れた地獄に戻ってしまう。
そんな気がする……。
「……真島……おい真島……真島ったら!」
「え?」
「何ボーっとしてんだよ。夏バテか?」
「いや、ワリぃ。で、なんだよ」
「だから~この後みんなでこのまんまどっか行かねえ?カラオケとかさ」
「中田はデートだろ?」
「だから空いてるって」
めずらしく中田が言う。
残念だけどオレはダメだった。
「オレ、バイト入ってるわ。この後」
「なあんで、そんなにバイトしてんだよ真島は」
「いや、バイク欲しくてさ」
「それ夏休み前から言ってねえ?まだ貯まんないの」
「んあ~使っちゃうから貯まんねえんだよ」
「ダメじゃん」
「灰谷は?カラオケ」
そういえば灰谷はさっきからスマホの画面ばかり見つめている。
「ああ、オレ、夜は当分ダメだと思う」
「アスミルク?」
「ああ。じゃねえアスミルクって言うな」
「ペーターはアスミルクの搾乳で忙しいんですのよ」
「搾乳もやめろ」
「じゃあ乳搾り?」
「なんだよマジハイ、付き合いワリぃなあ」
めずらく中田がスネる。
「まあまあ中田くん、お乳のおいしいお年頃なんですのよ」
「乳言うな」
「佐藤どうした、な~んかオマエさっきから余裕あんなぁ。童貞のくせに。ムカつくわ」
「大いにムカつきたまえ中田くん。僕はいままでの佐藤ではないのだよ。くくくくく」
そういえば今日は佐藤が話したいことがあるっていうんで集まったんだった。
忘れてた。
「ジャカジャ~ン。佐藤、女子のケー番・LINEID、ゲットしました~!!」
「おおっ!佐藤。どうした佐藤。佐藤のくせにどうした佐藤」
「ありがとう中田」
「やったな佐藤。やったぞ佐藤。ヤるのか佐藤」
「ありがとう真島」
佐藤が灰谷を見つめた。
「何?」
「灰谷、オマエはボケんのか~い」
「オチ無理だってオレ」
「まあいいや、昨日偶然出会った子でさ。話したら気があってさ~」
「へえ、どんな子?なんて名前?」
「それがね、ようこちゃん。桜の子って書いてようこ。キレイな名前だろ。山下桜子ちゃん」
ブッ!――中田がアイスコーヒーを吐き出した。
「なんだよ中田、汚いねえ」
「おい、佐藤、いますぐその子から手を引け!」
「なんでだよ」
「桜子ちゃんは杏子の妹だ」
「妹?杏子ちゃんの?」
「スマホ貸せ」
「へ?」
「データ削除する」
「何言ってんだやめろ」
「杏子の妹なんてダメだ。やめろ」
「なんでだよ~。つうか逆に協力してくれよ~」
「ぜってえヤダ」
中田の彼女の妹と佐藤が?世の中せまいなあ~。
「面白え~。オマエら将来兄弟になんだわ。何それ少女マンガじゃん」
「ならねえよ!」
「お兄さ~ん、仲良くしましょうよ~」
「ヤダって」
ん?灰谷のやつ静かだな?と見れば、目が合った。
「ん?なんだよ灰谷」
「別に」
バツの悪そうな顔をして目をそらした。
なんだなんだ?
♪~
LINEの通知音。
灰谷のスマホからだった。
「なに灰谷、アスミルク?」
「佐藤、話は終わってない」
「アスミルク言うな。つうかオレ行くわ」
「え~灰谷もう行くのかよ~。聞いてよオレと桜子ちゃんの運命の出会いを」
「ワリぃ。また今度聞くわ。これ、オレの分」
お金を置いて灰谷が立ち上がった。
隣りに座っていた灰谷を通すためにオレも立ち上がる。
「明日美ちゃんによろしく言っといて。佐藤くんから」
「ああ」
「じゃな~」
灰谷はさっさと店を出ていく。
こっちを見たらいつものように乳搾りのジェスチャーをして、からかってやろうと思ったのにオレとは目を合わせなかった。
めずらしい。
なんなの?あいつ。
「あっ、返せよ中田~」
「オマエらなんかあった?マジハイ」
中田が佐藤からとうとうスマホを取り上げてオレに聞く。
「あ?なんで?」
「佐藤、パスワードは?」
「言うかよ。返せよ」
「どうせ、誕生日とかだろ、オマエ単純だから。っていつだったっけ」
「違えし、誕生日じゃねえし」
「じゃあ誕生日いつだよ」
「……教えねえ。誕生日じゃねえから。って返せよ中田」
「誕生日だな。で?真島」
「別に。なんもねえよ」
「そういえば灰谷ほとんどしゃべんなかったな」
そうだった。
話に加わらないし、ほとんどしゃべらなかったと今更ながら気がついた。
「んでも、あいつが四人でいる時、あんまりしゃべんないのなんていつものことだろ。搾乳の段取りでも考えてたんじゃねえの?五月二十三日だったよな佐藤、誕生日」
「うん。ってお~い真島~」
「ハハハッ」
「0523と。あ、開いた」
「お~い!」
「うるさい佐藤。ステイ。真島」
「ん?」
「灰谷はオマエのこと見てたよ」
「え?」
「返せよ~」
灰谷がオレのこと見てた?
なんで?
なんかバレた?まさかな……。
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