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第43話 オレの頭にあった事
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ホテルを出てから城島さんはずっと何かを考えているようで上の空だった。
オレの方を見ない。
その日は会社帰りの城島さんと待ち合わせたので地元から少し離れたホテルを使っていた。
大丈夫だとは思うけど、また知り合いに見られても面倒だから、駅で別れて別々に帰ろうとオレから話してあった。
「じゃあここで。気をつけて帰ってね」
城島さんはいつもの笑顔で言うとすぐに立ち去ろうとした。
なんだかこのまま会えなくなるような気がした。
「城島さん」
気がつけば城島さんの腕をつかんでいた。
こんな風に城島さんを引き止めるのは二度めだった。
でも、この間とは違う。
いや、同じか?
少し驚いた表情の城島さんが言った。
「どうしたの真島くん」
「城島さん。また会ってくれるよね」
城島さんはオレの問いかけには答えずに少し困ったように微笑んだ。
その時だった。
「真島」
声の方を振り返ると灰谷が立っていた。
「灰谷!」
「オマエこんなとこで何してんの?」
「え?」
灰谷の後ろには明日美ちゃんの姿もあった。
オレは慌てて、城島さんをつかんでいた手を離した。
「オマエこそ……」
「オレたちはご飯食べに。もしかしてその人が親戚の人?」
「え?ああ」
どうしよう。
驚きすぎて頭が回らない。
城島さん、なんのことだかわかんないよな。
ええと……。
「君が灰谷くん?」
「はい」
「そして、その彼女さんかな?」
「はい。今晩は」
明日美ちゃんが挨拶を返しながら微笑んだ。
「こんばんは。こいつから話はちょくちょく。お世話になってるみたいで。城島です」
城島さんが微笑んで挨拶した。
合わせてくれた!!
「真島にこんなに若い親戚のお兄さんがいたなんて知らなかったです」
なんでそんなとこツッコんで来るんだよ灰谷は!
「会うのは久しぶりだからね。大きくなっててビックリしてる」
城島さんはオレを見て微笑んだ。
「真島くん、お久しぶり」
「ああ。明日美ちゃん。うん、久しぶり」
なんとか早く、城島さんと灰谷を離さないと……と思っていたら、灰谷がとんでもないことを言い出した。
「もうお帰りですか。良かったらみんなで一緒にメシ食いませんか?オレらこれからなんで」
「何言ってんだ。オマエらデートだろ」
「いやいいんだよ。二人より四人の方が楽しそうだし。いいよな明日美ちゃん」
「うん」
「美味しい洋食屋があるっていうから来たんですけど、よかったらそこでどうですか」
ふざけんな。
こいついつもこんなにハキハキしてねえし、全然フレンドリーじゃないくせに。
なんで今日に限って……。
「ごめんね。明日、ちょっと朝イチで会議があって早いんだ。悪いけどメシはまた今度に」
城島さんは感じのよい笑顔で灰谷に告げた。
「そうですか」
「じゃあな、気をつけて帰れよ」
城島さんはオレの頭をクシャっと撫でると行ってしまった。
オレは城島さんの姿を目で追った。
本当にこのままって事ないよな。
不安が押し寄せた。
「親戚のお兄さんって若いな。歳いくつ?」
灰谷が何か言ってる?
「え?」
「あの人、歳いくつ?」
「二十八」
「へえ~知らなかったよ節子の方の親戚?」
「いや、親父の方の……」
城島さん、振り返らないな。
「ふ~ん。いとことか?」
「え?ああ。まあそんな感じ……ワリぃ、オレ帰るわ」
「なんだよ。三人でメシ食おうよ」
「いやあ、帰るわ。疲れてて眠いし」
早く。早く話さないと。
「そっか。じゃあな」
「またね真島くん」
「うん。じゃあ」
灰谷と明日美ちゃんから遠ざかりながら、城島さんに電話をかける。
城島さん、頼むから出てくれ。このままなんてことないよな。
でも……なんかイヤな予感がする。
『はい』
出てくれた。
「城島さん。オレ」
『うん』
「さっき、ごめんなさい。合わせてくれてありがとう」
『いいよ別にそんなこと。大したことじゃない。下の名前知らなかったから、こいつとか言ってごめん』
「いや、そんなの別に」
会話が途切れた。
なんか、なんか言わなきゃ……。
「城島さん……オレの、下の名……」
『彼が……灰谷くんがそうなんだろ』
「え?……うん」
『そっか。彼女がいるんだね』
「うん。あのね、城島さん……このまんまって事ないよね」
『……』
もう、会わないと言われるのが怖かった。
「また、会ってくれるよね」
『……』
長い長い時間に感じた。
『……うん』
「よかった」
『おやすみ真島くん』
「おやすみなさい」
オレは胸を撫で下ろした。
不思議なことにその時、オレの頭の中には城島さんの事しかなかった。
オレの方を見ない。
その日は会社帰りの城島さんと待ち合わせたので地元から少し離れたホテルを使っていた。
大丈夫だとは思うけど、また知り合いに見られても面倒だから、駅で別れて別々に帰ろうとオレから話してあった。
「じゃあここで。気をつけて帰ってね」
城島さんはいつもの笑顔で言うとすぐに立ち去ろうとした。
なんだかこのまま会えなくなるような気がした。
「城島さん」
気がつけば城島さんの腕をつかんでいた。
こんな風に城島さんを引き止めるのは二度めだった。
でも、この間とは違う。
いや、同じか?
少し驚いた表情の城島さんが言った。
「どうしたの真島くん」
「城島さん。また会ってくれるよね」
城島さんはオレの問いかけには答えずに少し困ったように微笑んだ。
その時だった。
「真島」
声の方を振り返ると灰谷が立っていた。
「灰谷!」
「オマエこんなとこで何してんの?」
「え?」
灰谷の後ろには明日美ちゃんの姿もあった。
オレは慌てて、城島さんをつかんでいた手を離した。
「オマエこそ……」
「オレたちはご飯食べに。もしかしてその人が親戚の人?」
「え?ああ」
どうしよう。
驚きすぎて頭が回らない。
城島さん、なんのことだかわかんないよな。
ええと……。
「君が灰谷くん?」
「はい」
「そして、その彼女さんかな?」
「はい。今晩は」
明日美ちゃんが挨拶を返しながら微笑んだ。
「こんばんは。こいつから話はちょくちょく。お世話になってるみたいで。城島です」
城島さんが微笑んで挨拶した。
合わせてくれた!!
「真島にこんなに若い親戚のお兄さんがいたなんて知らなかったです」
なんでそんなとこツッコんで来るんだよ灰谷は!
「会うのは久しぶりだからね。大きくなっててビックリしてる」
城島さんはオレを見て微笑んだ。
「真島くん、お久しぶり」
「ああ。明日美ちゃん。うん、久しぶり」
なんとか早く、城島さんと灰谷を離さないと……と思っていたら、灰谷がとんでもないことを言い出した。
「もうお帰りですか。良かったらみんなで一緒にメシ食いませんか?オレらこれからなんで」
「何言ってんだ。オマエらデートだろ」
「いやいいんだよ。二人より四人の方が楽しそうだし。いいよな明日美ちゃん」
「うん」
「美味しい洋食屋があるっていうから来たんですけど、よかったらそこでどうですか」
ふざけんな。
こいついつもこんなにハキハキしてねえし、全然フレンドリーじゃないくせに。
なんで今日に限って……。
「ごめんね。明日、ちょっと朝イチで会議があって早いんだ。悪いけどメシはまた今度に」
城島さんは感じのよい笑顔で灰谷に告げた。
「そうですか」
「じゃあな、気をつけて帰れよ」
城島さんはオレの頭をクシャっと撫でると行ってしまった。
オレは城島さんの姿を目で追った。
本当にこのままって事ないよな。
不安が押し寄せた。
「親戚のお兄さんって若いな。歳いくつ?」
灰谷が何か言ってる?
「え?」
「あの人、歳いくつ?」
「二十八」
「へえ~知らなかったよ節子の方の親戚?」
「いや、親父の方の……」
城島さん、振り返らないな。
「ふ~ん。いとことか?」
「え?ああ。まあそんな感じ……ワリぃ、オレ帰るわ」
「なんだよ。三人でメシ食おうよ」
「いやあ、帰るわ。疲れてて眠いし」
早く。早く話さないと。
「そっか。じゃあな」
「またね真島くん」
「うん。じゃあ」
灰谷と明日美ちゃんから遠ざかりながら、城島さんに電話をかける。
城島さん、頼むから出てくれ。このままなんてことないよな。
でも……なんかイヤな予感がする。
『はい』
出てくれた。
「城島さん。オレ」
『うん』
「さっき、ごめんなさい。合わせてくれてありがとう」
『いいよ別にそんなこと。大したことじゃない。下の名前知らなかったから、こいつとか言ってごめん』
「いや、そんなの別に」
会話が途切れた。
なんか、なんか言わなきゃ……。
「城島さん……オレの、下の名……」
『彼が……灰谷くんがそうなんだろ』
「え?……うん」
『そっか。彼女がいるんだね』
「うん。あのね、城島さん……このまんまって事ないよね」
『……』
もう、会わないと言われるのが怖かった。
「また、会ってくれるよね」
『……』
長い長い時間に感じた。
『……うん』
「よかった」
『おやすみ真島くん』
「おやすみなさい」
オレは胸を撫で下ろした。
不思議なことにその時、オレの頭の中には城島さんの事しかなかった。
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