上 下
39 / 43

第38話 雨のコンビニ④

しおりを挟む
「灰谷先輩、楽しんでますかねえ」

黙っているのにもさすがに飽きたのか脚をブラブラさせながら友樹がいう。


昨夜灰谷から電話があった。

「ワリぃ、明日迎えに行けなくなった。徒歩で行ってくれ」
「なん?どした」
「バイトも休みもらったから」

何事?と聞いてみれば少年サッカーをやっていた頃の友達に試合に誘われたのだという。


中学の時、足にケガをしてやめてから、ボールを蹴っている姿を見たことは一度もない。
見たかったなオレも。

灰谷がピッチを走り回る姿はホントにカッコ良かったから。
まあでもな、クラブメンバーと親しげな様子を見てるのはちょっとヤケたけどな。
ああいう戦友みたいな絆って幼なじみとかとは別物じゃん。

「どうだろうな。この天気じゃな。朝から行くつってたからもう終わってんじゃねえか」

「マコせんぱ~い。灰谷先輩いなくてさびしいでしょ?」
からかうような友樹の声。

「あのなあ~」と、見れば友樹の顔がすぐそばにあった。
キスまで三秒の距離。
オレの目をのぞきこんで人懐っこい顔でニコニコ笑っている。

あまりの近さにオレは首を後ろに引き、「んなわけあるか。友樹、顔近い」と額をちょんと人差し指で突いた。
友樹はそのまま動かず、なおも目尻を下げて面白そうな顔で見つめてくる。
目をそらしたら負けだと思うからそのまま持ちこたえてると見つめ合うカタチになってしまった。


ああ…友樹の瞳にオレが映ってる…。


「マコ先輩って、キレイな顔してますよね」
少しかすれた声で友樹がささやく。

は?キレイ?

「お肌もツルツルだし」

ああ。肌ね。何もしてないけど…って。

!!!

思わずビクリとカラダが反応してしまう。
友樹が手を伸ばし、オレの左頬をさわさわと撫でる。
その手は可愛らしい顔には似合わず大きく、そしてすらりと指が長い。

「メイク映えしそう」

?メイク?

そう言う友樹の方こそお肌ツルツルでキレイな整った顔してるんだけど。
オレみたいな奥二重じゃねえし、目なんかも大きくてパッチリ、キュートなネコみたい……ってなんなのこの不自然な距離感。
いたたまれねえんだけど……。


よし!

オレは頬を撫でていた友樹の手首をグッとつかみ、「友樹、キスすんぞ」って真面目な顔を作ってみた。

これで引くだろうと思ったら友樹のヤツ、「いいっすよ」って静かに目を閉じやがった。


おおぅ。キス顔。ナイスですね~。
赤く小さく、フチが少しクイッと上がって誘うような唇。
ヤローのくせになんてキュートさだ。

オレはつかんでない方の手の人差し指をそっと友樹の唇に押し当ててみる。

チュって友樹の唇が応えてきた。

「…ってバカ!やりすぎだろ」

オレのツッコミに友樹はパチリと目を開け、この指止まれみたいにその人差し指をぎゅっと握ってきた。

思いもかけぬ行動と強い力にドキッとする。


またも見つめ合うオレたち。
何このシチュエーション。



「先輩……好きです」

熱い吐息混じりの声で友樹はつぶやくと上目遣いでチワワみたいに目をうるうるさせた。


え?え?


うるうるうるうる。
水分をたたえた友樹の瞳が揺れる。


え?え?
ホントに?

オレの頭は一瞬パニック。
いつも冗談めかしてオレのことカワイイカワイイ言ってたけど、あれってマジだったの?

オレ……どうしよう?

「と…友樹…あの……オレ……」

オレの声が震えている。


とその時、ふいに友樹が下を向いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

新緑の少年

東城
BL
大雨の中、車で帰宅中の主人公は道に倒れている少年を発見する。 家に連れて帰り事情を聞くと、少年は母親を刺したと言う。 警察に連絡し同伴で県警に行くが、少年の身の上話に同情し主人公は少年を一時的に引き取ることに。 悪い子ではなく複雑な家庭環境で追い詰められての犯行だった。 日々の生活の中で交流を深める二人だが、ちょっとしたトラブルに見舞われてしまう。 少年と関わるうちに恋心のような慈愛のような不思議な感情に戸惑う主人公。 少年は主人公に対して、保護者のような気持ちを抱いていた。 ハッピーエンドの物語。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

聖也と千尋の深い事情

フロイライン
BL
中学二年の奥田聖也と一条千尋はクラス替えで同じ組になる。 取り柄もなく凡庸な聖也と、イケメンで勉強もスポーツも出来て女子にモテモテの千尋という、まさに対照的な二人だったが、何故か気が合い、あっという間に仲良しになるが…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...