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第20話 登校時のルーティーン①

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朝、いつもの交差点に着き、オレの特等席(灰谷のチャリの後ろ)から降りたところで佐藤の呼ぶ声がした。

「マジハイ~~」

横断歩道を佐藤がものすごい勢いで走ってくる。
目を輝かせ、シッポがあれば間違いなくちぎれんばかりに振っている、そんな感じ。
たどり着くとゴール!とばかりにチャリの前カゴをガチャガチャと揺する。

「サトナカマジハイ。イエイイエイ。イエ~イ」
「や~めろ」

灰谷の止めるのもなんのその、ご機嫌でカゴをゆさぶる。

「灰谷チーッス、真島チーッス」

連日のバイトと反動のゲームでお疲れのオレは痛むこめかみを指でぐいぐいとつまみながら言った。

「佐藤、オマエ小学生か。朝っぱらからテンション高すぎ」
「マジマ・マジマジ?マジックざんまーい」

CMにあったどっかの寿司チェーンの社長みたいに腕を広げてリアクションを誘ってくる。

「鳩は出せねえって」

「ハイタニ・ハイハイ?ハイブラーンド」
「……」

ああそうな、灰谷じゃあボケもツッコミもできないよな、こういうの。
なんでもいいのにな。『ドルチェア~ンドガッパーナ!』とかね。
語感がおもしろいやつ。

「ハイタニ・ハイハイ? ハイテーンショーン」

お題を変えて佐藤がまた灰谷に仕掛けた。
灰谷は佐藤をみつめ、頭をフル回転させているみたいだ。

ポク・ポク・ポク……チーン。

「~~~…………」

あ~フリーズしちゃった。地蔵化だよ地蔵化。
 
「ん~灰谷くんにはむずかしかったか?これだから男前はいかんな」
「佐藤、灰谷にはまだムリだろ」
「……ムズい。激ムズ」と地蔵化が解けた灰谷がつぶやくと、「こういう時はテンションでボケ返すんだよ。ハイテーンショーン!ハイテーンショーン!!ハイテーンショーン!!!」と佐藤が江頭2:50みたいになる。
どんだけご機嫌なんだよ。

中田なら佐藤にビシッとツッコんで止めてくれるはず……って、中田はまだ横断歩道をトボトボ歩いている。
そう、トボトボって感じ。ポケットに手を突っこみ、肩をすぼめて。

「チッス」
やっと合流した中田は低い声でメッチャローテンション。

「チーッス」とオレと灰谷が返すと、「ナカタ・ナカナカ……」と、よせばいいのに佐藤が果敢に中田に仕掛けていく。

「ナカタ・ナカナカ……中出しOK?」

下ネタ!佐藤がメッチャ攻めた!
どう返す中田? と思ったら、中田は大きなあくびをして、首をポリポリかくとそのままスタスタ歩き出してしまった。
肩すかしを食うオレたち(マジハイサト)。

「なあんか、朝からああなんだよ中田のやつ。ノリが悪いったらねえわ」と佐藤がボヤく。「朝からド下ネタぶっこんでくんなよ」と灰谷。

普段はすました顔してるけど実は意外と下シモの話はそこまで好きじゃないんだよな灰谷(オレ調べ)。

「あらん、中田きゅんに合わせてみたのに~このイケズ~」
「イケずって、また下シモネタか!」と、わりと下シモネタキライじゃないオレは佐藤の胸にツッコミを入れる。

「痛っ!真島きゅん、マジ痛い」

なんてやり取りしながら学校へ向かって歩くオレたち。


「それにしてもよく続くよな、灰谷も」
灰谷が押しながら歩いているチャリの前カゴを佐藤がつかんでガチャガチャとゆらす。

「だから、やめろって」
「チャリで毎日、真島お迎えに行くとかさ」
「毎日じゃねえし。学校とバイトの時だけだし」
「ほぼ毎日じゃん。まるでカレシじゃん」

カレシ……。

魅惑的なワード……ではある。
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