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1.拾った彼女
もう一度
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──なんか濃い一日だった……。
王都のオルディス家のタウンハウスに帰ってきたマリアは、自室のベッドに身を投げ出して長い長いため息を吐いた。
長い一日だった。
思い出してうつ伏せのまま膝を曲げて手を伸ばす。深紅のパンプスに指を掛けると、ベッドから投げ落とした。コン、コン、と床に靴が転がる。
しまった。もう少し丁寧に扱えばよかった。
と、そこでマリアはがばっと起き上がった。駄目じゃないの、このドレスだってまだ。
──売れるんだから。
鉛のように重い身体を叱咤しながら、背中に手をかけ隠しボタンを外す。以前は伯爵家としてそれなりの教育も受けたが、爵位を取り上げられてからはごくごく質素な生活だ。お陰でコルセットがなくてもいいほどにほっそりとした体形になった。胸も若干しぼんだような気がするのはがっかりだけど、コルセットは一人では着付けられないから、必要なくて丁度良かった。
と、緩めた胸元を覗いてぎょっとした。変な声まで口をついてしまった。
「はっ!?」
ドレスを着ていたときには気付かなかったが、点々と小さな赤い花弁が胸のきわ、薄い皮膚の上に散っている。何これ……と一瞬真剣に考えそうになってマリアははたと思い出した。そういえば昨日、この辺りにも吸い付かれたんだった!
これがどんなものかは知っている。赤い痕は、所有の証。愛しい人が自分のものだと示すための印だ。でも見たのは初めてだった。
その話を聞いたときには、そんな人もいるのかという程度にしか感じなかった。
マリアは一通り赤くなったり青くなったりして、それからすとんと心が落ち着いた──というよりも凪いだように静かになった。
──三年間ずっと、一人で恋をしていたのね。
不思議に、痛みは感じなかった。ただ、そうだったのかと思っただけだ。
ゲイルの左手にあった指輪を思い浮かべる。その指輪と、赤い痕など付けられたことのない自分の身体は、同じことを指していたのだ。
間抜けな自分の姿に乾いた笑いが漏れた。
逆に、一晩だけの相手でもこういうことをする人はいるのね──とマリアは一つ心の中で付け加える。そこまでは知らなかった。またため息が勝手に出て行った。
「あれ? そういえば……」
マリアはドレスを脱ぐ手を止めた。
そういえば、ルーファスとは間違いなく初対面である。他の王子二人はもちろん顔を知っている。なぜなら、王族主催の催しに参加するときには、まず彼らへ拝謁をするからだ。たとえマリアが社交界にデビューする前の少女だとしても、王族の顔と名前は貴族として当然知っていなければならない。
ルーファスに拝謁した記憶がないのはなぜなんだろう。
「ええい、王族様のことなんて考えたってわからないし!」
マリアはふるふると頭を振り、ドレスをするすると脱いだ。
シュミーズとドロワーズだけの姿になると、律儀にドレスを続き部屋になっている衣装部屋に仕舞う。
このドレスはお手入れをしたら、売りに行こう。それとも普段使いのワンピースに仕立て直せるだろうか……と思い直してやっぱり駄目だと首を振った。これだけ胸元が開いていると詰めるのも難しい。色も普段使いにするには鮮やかすぎる。
──終わった、ね。
マリアはドレスをぼんやりと見つめ、ぽとりと自嘲めいた笑いを落とした。
あの婚約発表の場でみっともなく泣いたりしなかった自分を褒めよう。そして、ぐずぐずと落ち込まずに済んだのは少なからずルーファスのお陰だ。一晩のお代としては悪くなかったということにしよう。
さて、では明日からどうやって過ごそうか。
これまでは辛うじて父親の仕事で食いつなぎ、先に嫁いだ姉からの仕送りとゲイルからの援助ともいえない施しを借金の返済にあててきたけれど、それももう望むべくもない。マリアも時折教会や孤児院などに呼ばれて子供たちの家庭教師の真似事をしていたが、ささやかな収入では返済の足しにはほど遠い。加えて母親は危機感に乏しい人で、日がな一日かつての伯爵夫人のときと同じように過ごしている。多分現実を受け入れられないのだろう。もう四年も経ったのに。そして困ったことにマリアにもそれを求めようとするのである。
──姉様に相談できればいいのに。
でももう自分で何とかするしかない。
不意に王宮で渡された薬の味を思い出してマリアは顔をしかめた。
まさかあんなところで事後の避妊薬をもらうとは思わなかった。
あれを渡すためにルーファスが自分を王宮に連れていったのかと腑には落ちたものの、なんだか複雑な気分だ。
誠意の現れだと思えば良いのか、それとも手切れ金みたいなものと思えばいいのか判断がつかない。
それでも正直なところありがたかった。避妊薬は高価なのだ。そもそもが処女でないと結婚すら難しいヴェステリアでは、避妊薬の需要がほとんどないのである。何せ夫婦でないとそもそも営みをすることがないので。
実のところルーファスがその避妊薬を手に入れるために宮廷医師を言葉巧みに言いくるめたことなど、彼女は何も知らなかった。それもマリアの名誉が傷付かないようにしてくれたことなど。
湯浴みをしたい。なんだかべたべたする。そう思いはするものの、ドレスを脱いだら急に猛烈な眠気が襲ってきて、マリアはもう一度部屋に戻るとベッドに身を投げ出した。
もういいや。何もかも、してしまったものは変わらない。変わらないことをこれ以上思い悩んでも仕方がない。寝てしまおう。
まさか翌日もう一度自分が王宮に足を運ぶことになろうとは、思いもしなかったのである。
「で、忘れ物ってなに?」
今、マリアは強烈にお腹が空いていた。さすがにそんなことは口が裂けても言わないが、思考力は散漫も散漫、散り際だ。
ルーファスの笑顔さえ霞んで見える。というか本当に霞んでいる。
早く帰って食事にしたい。もうとっくに冷めただろう、豆と野菜で作ったスープと固いパンを思い返す。切ない。貴重な食事だったのに。
昨日はあれから食事もとらずにこんこんと眠ってしまった。寝すぎて頭が痛い。失恋したにしてはいささかあっけないというか神経が図太いというか。起きたら既に昼前で、食欲も腹立たしいほどあった。
が。
朝食と昼食を兼ねた食事を取ろうかとしていた矢先に、王宮から先触れがきたのである。しかも、先触れが来て慌てて身支度をし始めたところで、先触れを出した当の本人が迎えに来た。これにはマリアも母親も唖然としてしまった。
ルーファスは、そんな二人の表情にも動じず「お迎えに上がりました」と憎らしいほどに綺麗な笑みを浮かべる。
結局、食べそびれた食事を前に指を噛みながら、マリアは王宮に連れて来られたというわけであった。
「まあ、その話は脇に置いといて」
「えっ、待って、戻してよ。急いでるのに」
「その前に、せっかくですから食事をご一緒にいかがですか? ちょうど昼時ですし、お腹が空きました」
「あ、食べなきゃ話にならないなら食べましょう。まだ時間はあるわ」
「くくっ……マリアさんって……」
ルーファスがくしゃりと顔を崩した。
なんせマリアはほとんど丸一日何も口にしていなかったので、ひもじいのである。これも今の生活ならではかもしれない。食事は何よりも尊い。断ろうなどとはちらとも思いつかなかった。
考えてみれば随分と自分も淑女から遠のいてしまったものだ。
それにしても、お腹をよじらせて笑うのはどうかと思う。そりゃあ王族からすれば、食事の言葉に食い付く女性など珍獣にも等しいだろうけど、ちょっとやり過ぎではないだろうか。必死で声は堪えてるみたいだけど、目が糸のように細くなっていた。てらいのない笑みは綺麗だとは思うけれど。
それは食事中も変わらなかった。
「マリアさんがの食べっぷりは清々しいですね」
「……昨日ほとんど何も食べていなかったものだから」
「昨日は特に疲れましたしね」
思わせ振りなルーファスにむせた。向かいに座る彼をジト目で睨み付けたけれど、愉快そうな表情は少しも崩れることがなかった。
「マリアさんは痩せの大食いてすね」
「どうなのかしら。毎日身体を動かしているからだと思うわ」
「何かスポーツでも?」
「ううん、そうじゃなくて」
マリアは千切りかけのパンを皿に戻すと、ルーファスに向かって口の端を上げる。
「私、一通り何でもするのよ。簡単な料理なら自分で作れるし、美味しい紅茶を淹れるのも上手になったわ。ここのお茶よりは味は落ちるけど、二杯目でも美味しく淹れるコツはあるのよ。それに、お掃除も。暖炉の灰を集めたり、窓や床を磨き上げるのは気持ち良いわよ。あとは、お庭の手入れなんかもね。爪に土が入るから、人前に出るときには控えるけど」
ルーファスが一瞬目を見開いた。紛れもない驚きの表情に、はたと気付く。何を得意になることがあるだろう。マリアは内心で自分を呪いたくなった。こういうことをするのは彼らとは別世界の人間だけで、むしろ彼らから見ればそんな労働に従事することは恥ずべきことである。
「あ……ごめんなさい。不快にさせてしまったわ。もちろん、ダンスも練習するのよ? ピアノも嗜んではいたし。絵を描くことも……どれも最近はほとんどしていないけれど。お裁縫も時々は……繕い物の方が多いわね。残念ながら刺繍は苦手なの。できることは生活するのに最低限のことだけ」
言えば言うほど駄目なところをさらす羽目になってしまい、語尾は最初の勢いをすっかり失って、沈んだ声になってしまった。そうなのだ、本来ルーファスは決して馴れ馴れしい口をきいて良い相手ではない。許されたからついつい気安く接してしまっているが、どう考えてもこんな風に接して良いものではない。
重くなった雰囲気を元に戻そうと、マリアは果実水に手を伸ばす。くっと呷ると柑橘系の爽やかな酸っぱさが喉を滑った。
王都のオルディス家のタウンハウスに帰ってきたマリアは、自室のベッドに身を投げ出して長い長いため息を吐いた。
長い一日だった。
思い出してうつ伏せのまま膝を曲げて手を伸ばす。深紅のパンプスに指を掛けると、ベッドから投げ落とした。コン、コン、と床に靴が転がる。
しまった。もう少し丁寧に扱えばよかった。
と、そこでマリアはがばっと起き上がった。駄目じゃないの、このドレスだってまだ。
──売れるんだから。
鉛のように重い身体を叱咤しながら、背中に手をかけ隠しボタンを外す。以前は伯爵家としてそれなりの教育も受けたが、爵位を取り上げられてからはごくごく質素な生活だ。お陰でコルセットがなくてもいいほどにほっそりとした体形になった。胸も若干しぼんだような気がするのはがっかりだけど、コルセットは一人では着付けられないから、必要なくて丁度良かった。
と、緩めた胸元を覗いてぎょっとした。変な声まで口をついてしまった。
「はっ!?」
ドレスを着ていたときには気付かなかったが、点々と小さな赤い花弁が胸のきわ、薄い皮膚の上に散っている。何これ……と一瞬真剣に考えそうになってマリアははたと思い出した。そういえば昨日、この辺りにも吸い付かれたんだった!
これがどんなものかは知っている。赤い痕は、所有の証。愛しい人が自分のものだと示すための印だ。でも見たのは初めてだった。
その話を聞いたときには、そんな人もいるのかという程度にしか感じなかった。
マリアは一通り赤くなったり青くなったりして、それからすとんと心が落ち着いた──というよりも凪いだように静かになった。
──三年間ずっと、一人で恋をしていたのね。
不思議に、痛みは感じなかった。ただ、そうだったのかと思っただけだ。
ゲイルの左手にあった指輪を思い浮かべる。その指輪と、赤い痕など付けられたことのない自分の身体は、同じことを指していたのだ。
間抜けな自分の姿に乾いた笑いが漏れた。
逆に、一晩だけの相手でもこういうことをする人はいるのね──とマリアは一つ心の中で付け加える。そこまでは知らなかった。またため息が勝手に出て行った。
「あれ? そういえば……」
マリアはドレスを脱ぐ手を止めた。
そういえば、ルーファスとは間違いなく初対面である。他の王子二人はもちろん顔を知っている。なぜなら、王族主催の催しに参加するときには、まず彼らへ拝謁をするからだ。たとえマリアが社交界にデビューする前の少女だとしても、王族の顔と名前は貴族として当然知っていなければならない。
ルーファスに拝謁した記憶がないのはなぜなんだろう。
「ええい、王族様のことなんて考えたってわからないし!」
マリアはふるふると頭を振り、ドレスをするすると脱いだ。
シュミーズとドロワーズだけの姿になると、律儀にドレスを続き部屋になっている衣装部屋に仕舞う。
このドレスはお手入れをしたら、売りに行こう。それとも普段使いのワンピースに仕立て直せるだろうか……と思い直してやっぱり駄目だと首を振った。これだけ胸元が開いていると詰めるのも難しい。色も普段使いにするには鮮やかすぎる。
──終わった、ね。
マリアはドレスをぼんやりと見つめ、ぽとりと自嘲めいた笑いを落とした。
あの婚約発表の場でみっともなく泣いたりしなかった自分を褒めよう。そして、ぐずぐずと落ち込まずに済んだのは少なからずルーファスのお陰だ。一晩のお代としては悪くなかったということにしよう。
さて、では明日からどうやって過ごそうか。
これまでは辛うじて父親の仕事で食いつなぎ、先に嫁いだ姉からの仕送りとゲイルからの援助ともいえない施しを借金の返済にあててきたけれど、それももう望むべくもない。マリアも時折教会や孤児院などに呼ばれて子供たちの家庭教師の真似事をしていたが、ささやかな収入では返済の足しにはほど遠い。加えて母親は危機感に乏しい人で、日がな一日かつての伯爵夫人のときと同じように過ごしている。多分現実を受け入れられないのだろう。もう四年も経ったのに。そして困ったことにマリアにもそれを求めようとするのである。
──姉様に相談できればいいのに。
でももう自分で何とかするしかない。
不意に王宮で渡された薬の味を思い出してマリアは顔をしかめた。
まさかあんなところで事後の避妊薬をもらうとは思わなかった。
あれを渡すためにルーファスが自分を王宮に連れていったのかと腑には落ちたものの、なんだか複雑な気分だ。
誠意の現れだと思えば良いのか、それとも手切れ金みたいなものと思えばいいのか判断がつかない。
それでも正直なところありがたかった。避妊薬は高価なのだ。そもそもが処女でないと結婚すら難しいヴェステリアでは、避妊薬の需要がほとんどないのである。何せ夫婦でないとそもそも営みをすることがないので。
実のところルーファスがその避妊薬を手に入れるために宮廷医師を言葉巧みに言いくるめたことなど、彼女は何も知らなかった。それもマリアの名誉が傷付かないようにしてくれたことなど。
湯浴みをしたい。なんだかべたべたする。そう思いはするものの、ドレスを脱いだら急に猛烈な眠気が襲ってきて、マリアはもう一度部屋に戻るとベッドに身を投げ出した。
もういいや。何もかも、してしまったものは変わらない。変わらないことをこれ以上思い悩んでも仕方がない。寝てしまおう。
まさか翌日もう一度自分が王宮に足を運ぶことになろうとは、思いもしなかったのである。
「で、忘れ物ってなに?」
今、マリアは強烈にお腹が空いていた。さすがにそんなことは口が裂けても言わないが、思考力は散漫も散漫、散り際だ。
ルーファスの笑顔さえ霞んで見える。というか本当に霞んでいる。
早く帰って食事にしたい。もうとっくに冷めただろう、豆と野菜で作ったスープと固いパンを思い返す。切ない。貴重な食事だったのに。
昨日はあれから食事もとらずにこんこんと眠ってしまった。寝すぎて頭が痛い。失恋したにしてはいささかあっけないというか神経が図太いというか。起きたら既に昼前で、食欲も腹立たしいほどあった。
が。
朝食と昼食を兼ねた食事を取ろうかとしていた矢先に、王宮から先触れがきたのである。しかも、先触れが来て慌てて身支度をし始めたところで、先触れを出した当の本人が迎えに来た。これにはマリアも母親も唖然としてしまった。
ルーファスは、そんな二人の表情にも動じず「お迎えに上がりました」と憎らしいほどに綺麗な笑みを浮かべる。
結局、食べそびれた食事を前に指を噛みながら、マリアは王宮に連れて来られたというわけであった。
「まあ、その話は脇に置いといて」
「えっ、待って、戻してよ。急いでるのに」
「その前に、せっかくですから食事をご一緒にいかがですか? ちょうど昼時ですし、お腹が空きました」
「あ、食べなきゃ話にならないなら食べましょう。まだ時間はあるわ」
「くくっ……マリアさんって……」
ルーファスがくしゃりと顔を崩した。
なんせマリアはほとんど丸一日何も口にしていなかったので、ひもじいのである。これも今の生活ならではかもしれない。食事は何よりも尊い。断ろうなどとはちらとも思いつかなかった。
考えてみれば随分と自分も淑女から遠のいてしまったものだ。
それにしても、お腹をよじらせて笑うのはどうかと思う。そりゃあ王族からすれば、食事の言葉に食い付く女性など珍獣にも等しいだろうけど、ちょっとやり過ぎではないだろうか。必死で声は堪えてるみたいだけど、目が糸のように細くなっていた。てらいのない笑みは綺麗だとは思うけれど。
それは食事中も変わらなかった。
「マリアさんがの食べっぷりは清々しいですね」
「……昨日ほとんど何も食べていなかったものだから」
「昨日は特に疲れましたしね」
思わせ振りなルーファスにむせた。向かいに座る彼をジト目で睨み付けたけれど、愉快そうな表情は少しも崩れることがなかった。
「マリアさんは痩せの大食いてすね」
「どうなのかしら。毎日身体を動かしているからだと思うわ」
「何かスポーツでも?」
「ううん、そうじゃなくて」
マリアは千切りかけのパンを皿に戻すと、ルーファスに向かって口の端を上げる。
「私、一通り何でもするのよ。簡単な料理なら自分で作れるし、美味しい紅茶を淹れるのも上手になったわ。ここのお茶よりは味は落ちるけど、二杯目でも美味しく淹れるコツはあるのよ。それに、お掃除も。暖炉の灰を集めたり、窓や床を磨き上げるのは気持ち良いわよ。あとは、お庭の手入れなんかもね。爪に土が入るから、人前に出るときには控えるけど」
ルーファスが一瞬目を見開いた。紛れもない驚きの表情に、はたと気付く。何を得意になることがあるだろう。マリアは内心で自分を呪いたくなった。こういうことをするのは彼らとは別世界の人間だけで、むしろ彼らから見ればそんな労働に従事することは恥ずべきことである。
「あ……ごめんなさい。不快にさせてしまったわ。もちろん、ダンスも練習するのよ? ピアノも嗜んではいたし。絵を描くことも……どれも最近はほとんどしていないけれど。お裁縫も時々は……繕い物の方が多いわね。残念ながら刺繍は苦手なの。できることは生活するのに最低限のことだけ」
言えば言うほど駄目なところをさらす羽目になってしまい、語尾は最初の勢いをすっかり失って、沈んだ声になってしまった。そうなのだ、本来ルーファスは決して馴れ馴れしい口をきいて良い相手ではない。許されたからついつい気安く接してしまっているが、どう考えてもこんな風に接して良いものではない。
重くなった雰囲気を元に戻そうと、マリアは果実水に手を伸ばす。くっと呷ると柑橘系の爽やかな酸っぱさが喉を滑った。
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