25 / 50
25.
しおりを挟む
ランチバッグを腕にかけ、早く戻りたい一心で足を前へ前へと繰り出す。走り慣れていない足はすぐに悲鳴を上げ、ちょっとした小石につまづき、足がもつれて転びそうだ。少し走っただけなのに、すでに肺からはひゅうひゅうと苦しそうな音が聞こえてくる。
(そもそも、テオン様はどうして私を……? あぁ、きっと私はピクルスのような存在なんだわ。豪華なローストビーフサンドやお洒落なパンケーキに飽きて、隅にあるピクルスでお口直しをするような……)
息が上がり、酸欠になりかけたところで走るのをやめ、ゼエゼエ言いながらその場で立ち尽くす。運動不足がたたり、クロエの膝はすでにガクガクしている。
胸に手をあて何度も深呼吸をし、ようやく荒い息が落ち着いてきた時だった。
「はぁ、はぁ、……ひゃあっ!」
急に肩を掴まれ振り向くと、そこにはテオンの姿。
「急に走り出すから驚いた」
「へっ? こ、こちらの方が、お、驚きですが……」
まだ息が上がっているクロエに対し、テオンはいつものごとくクールな顔。体力の違いというやつなんだろうが、それにしたってテオンだって文官のはず。
全力疾走に追いつかれたことはさておき、ブルネットの女性はいいのかと尋ねたかったが、クロエが介入してもいいことにはならない。
困惑を隠せないまま、テオンに尋ねる。
「テオン様、ど、どうされたんですか……?」
「いや、言いそびれたと思って追いかけたんだけど。クロエ、足が遅いね」
「えっ……は、はい……」
ジト目で見上げるクロエのハーフアップの髪を一束とり、テオンがするっと指を通す。
「おさげやめたんだな、と思って。かわいいよ、今日の髪型。清楚な雰囲気だ。それを言おうと思って追いかけた。じゃあ、ランチ楽しんで」
うっすら口角を上げると、テオンはじゃあ、と踵を返す。
(え……それだけを言うために?)
ついさっきまで自分を卑下していたのに、胸の奥にじわっと何かが広がる。颯爽と立ち去っていくテオンを引き止めたい。クロエは思わず早口で告げていた。
「あ、あのっ! テオン様に食べていただこうと思ってサンドイッチを作ってきたので良かったら食べてください!」
すっと振り返ったテオンは表情を変えないまま、近づいてきた。
◇ ◇ ◇
「あ、あの……」
「早く。昼の休憩、終わっちゃうよ?」
テオンに連れてこられたのは、いつぞやの取り壊しが決まっている執務棟のテラス。今日もひと気がないどころか、この執務棟自体に人の出入りが少ない。少しずつ部署の引っ越しも進んでいるようだ。
二人きりの秘密の休憩場所では、テオンがクロエを困惑させていた。
「で、では……はい、あ~ん」
「んっ……うん……、おいしいよ。さあ、クロエも食べないと、はい、口を開けて」
おずおずと開けた口にテオンが小さくちぎったパンを押し込む。
いつもより素早く咀嚼し、ごくんと飲み込むクロエ。
「……、いつも食べているパンなのに、きょ、今日はもっとおいしい気がします」
「ふっ。クロエって本当にかわいいよね」
(……言葉通りではないような気がする)
はい、とまたパンをクロエの口に押し込むテオン。もっもっと口を動かす姿をなぜか嬉しそうに見つめている。
「そろそろお腹も満たされたね。おいしかったよ、ごちそうさま」
「あ、デザートにブドウも持ってきましたけど、食べますか?」
「そうだね、まだ時間あるし。じゃあここに座って?」
「え? えっと、こ、こういうことですか?」
ベンチに座るテオンの足を跨ぎ、向かい合わせで腰を下ろす。至近距離で見る造形美が眩しく、クロエはドクンドクンと鳴り響く心臓の鼓動を抑えようと冷静を装った。
だが、テオンは慣れた手つきで女官の制服をぷちぷちと脱がしていき、クロエは慌てる。
「えっ? テ、テオン様、ま、まさか、こんなところで……」
「大丈夫、大丈夫」
テオンはブラウスをはだけさせるとシュミーズをぐいっと押し下げ、乳房をむき出しにした。
屋外で胸をさらけ出すなんて、テオンと知り合うまでは考えられなかった行為。外気が胸に触れ、羞恥心とほんのわすかな期待にクロエの体に熱が灯っていく。
「薄いピンク色のブドウが二つ実っているね。もう少し色づいた方がおいしそうだ」
「なっ! は、恥ずかしいです……」
「さすがに外だから静かにね」
そういうとテオンはちゅっと色づいた蕾を口に含んだ。
「~~~~~っ! ん……、んんっ!」
口の中でレロレロと舌を動かされ、尖りの先端が押しつぶされ捏ねられる。反対の先端はテオンが指先にくにくにと弄び、徐々に赤く色づいていく。
声が漏れないように必死で口を覆うクロエを見上げ、テオンは人差し指と中指を口の中に入れた。
「指、舐めて」
「ふわぁ、んっ、あふっ、うぅん、んあっ」
舌を指でつままれ、口腔内を撫で回されると背中をゾクゾクとしたものが駆け上がる。唇の端から唾液が垂れ、クロエの胸元へポタポタと落ちるがテオンはやめようとしない。
そのうち、ちゅぱっと頂から口を離すとクロエの口を塞いだ。
「はぅっ、はぁっ、んっ、んふっ」
貪るようなキスの間、テオンの両手が硬く色づいた先端を弄ぶ。唾液でてらてらと光る花の蕾はコリコリに尖り、クロエは気持ち良すぎてテオンのシャツを掴みながら身を捩る。
「テオッ……はぁ、んっ、んふ、……はぁ、ふぁっ、んっんっ」
時間を忘れていたクロエだったが、そのうちテオンの指が乳首から離れ、器用にブラウスのボタンを留め始めた。銀糸がつながる唇をすっと離すと、テオンはクロエの唇を指で拭う。
「クロエ、とろんとしてすごい顔だよ? そろそろやめないと午後の仕事に差し支えるからこの辺でね。ランチ、ごちそうさま」
「は、はい……」
(体に熱がこもっているみたい……テオン様に振り回されてるのに嬉しいなんて、私どうかしてるわ)
(約束の日まで残り四十九日)
(そもそも、テオン様はどうして私を……? あぁ、きっと私はピクルスのような存在なんだわ。豪華なローストビーフサンドやお洒落なパンケーキに飽きて、隅にあるピクルスでお口直しをするような……)
息が上がり、酸欠になりかけたところで走るのをやめ、ゼエゼエ言いながらその場で立ち尽くす。運動不足がたたり、クロエの膝はすでにガクガクしている。
胸に手をあて何度も深呼吸をし、ようやく荒い息が落ち着いてきた時だった。
「はぁ、はぁ、……ひゃあっ!」
急に肩を掴まれ振り向くと、そこにはテオンの姿。
「急に走り出すから驚いた」
「へっ? こ、こちらの方が、お、驚きですが……」
まだ息が上がっているクロエに対し、テオンはいつものごとくクールな顔。体力の違いというやつなんだろうが、それにしたってテオンだって文官のはず。
全力疾走に追いつかれたことはさておき、ブルネットの女性はいいのかと尋ねたかったが、クロエが介入してもいいことにはならない。
困惑を隠せないまま、テオンに尋ねる。
「テオン様、ど、どうされたんですか……?」
「いや、言いそびれたと思って追いかけたんだけど。クロエ、足が遅いね」
「えっ……は、はい……」
ジト目で見上げるクロエのハーフアップの髪を一束とり、テオンがするっと指を通す。
「おさげやめたんだな、と思って。かわいいよ、今日の髪型。清楚な雰囲気だ。それを言おうと思って追いかけた。じゃあ、ランチ楽しんで」
うっすら口角を上げると、テオンはじゃあ、と踵を返す。
(え……それだけを言うために?)
ついさっきまで自分を卑下していたのに、胸の奥にじわっと何かが広がる。颯爽と立ち去っていくテオンを引き止めたい。クロエは思わず早口で告げていた。
「あ、あのっ! テオン様に食べていただこうと思ってサンドイッチを作ってきたので良かったら食べてください!」
すっと振り返ったテオンは表情を変えないまま、近づいてきた。
◇ ◇ ◇
「あ、あの……」
「早く。昼の休憩、終わっちゃうよ?」
テオンに連れてこられたのは、いつぞやの取り壊しが決まっている執務棟のテラス。今日もひと気がないどころか、この執務棟自体に人の出入りが少ない。少しずつ部署の引っ越しも進んでいるようだ。
二人きりの秘密の休憩場所では、テオンがクロエを困惑させていた。
「で、では……はい、あ~ん」
「んっ……うん……、おいしいよ。さあ、クロエも食べないと、はい、口を開けて」
おずおずと開けた口にテオンが小さくちぎったパンを押し込む。
いつもより素早く咀嚼し、ごくんと飲み込むクロエ。
「……、いつも食べているパンなのに、きょ、今日はもっとおいしい気がします」
「ふっ。クロエって本当にかわいいよね」
(……言葉通りではないような気がする)
はい、とまたパンをクロエの口に押し込むテオン。もっもっと口を動かす姿をなぜか嬉しそうに見つめている。
「そろそろお腹も満たされたね。おいしかったよ、ごちそうさま」
「あ、デザートにブドウも持ってきましたけど、食べますか?」
「そうだね、まだ時間あるし。じゃあここに座って?」
「え? えっと、こ、こういうことですか?」
ベンチに座るテオンの足を跨ぎ、向かい合わせで腰を下ろす。至近距離で見る造形美が眩しく、クロエはドクンドクンと鳴り響く心臓の鼓動を抑えようと冷静を装った。
だが、テオンは慣れた手つきで女官の制服をぷちぷちと脱がしていき、クロエは慌てる。
「えっ? テ、テオン様、ま、まさか、こんなところで……」
「大丈夫、大丈夫」
テオンはブラウスをはだけさせるとシュミーズをぐいっと押し下げ、乳房をむき出しにした。
屋外で胸をさらけ出すなんて、テオンと知り合うまでは考えられなかった行為。外気が胸に触れ、羞恥心とほんのわすかな期待にクロエの体に熱が灯っていく。
「薄いピンク色のブドウが二つ実っているね。もう少し色づいた方がおいしそうだ」
「なっ! は、恥ずかしいです……」
「さすがに外だから静かにね」
そういうとテオンはちゅっと色づいた蕾を口に含んだ。
「~~~~~っ! ん……、んんっ!」
口の中でレロレロと舌を動かされ、尖りの先端が押しつぶされ捏ねられる。反対の先端はテオンが指先にくにくにと弄び、徐々に赤く色づいていく。
声が漏れないように必死で口を覆うクロエを見上げ、テオンは人差し指と中指を口の中に入れた。
「指、舐めて」
「ふわぁ、んっ、あふっ、うぅん、んあっ」
舌を指でつままれ、口腔内を撫で回されると背中をゾクゾクとしたものが駆け上がる。唇の端から唾液が垂れ、クロエの胸元へポタポタと落ちるがテオンはやめようとしない。
そのうち、ちゅぱっと頂から口を離すとクロエの口を塞いだ。
「はぅっ、はぁっ、んっ、んふっ」
貪るようなキスの間、テオンの両手が硬く色づいた先端を弄ぶ。唾液でてらてらと光る花の蕾はコリコリに尖り、クロエは気持ち良すぎてテオンのシャツを掴みながら身を捩る。
「テオッ……はぁ、んっ、んふ、……はぁ、ふぁっ、んっんっ」
時間を忘れていたクロエだったが、そのうちテオンの指が乳首から離れ、器用にブラウスのボタンを留め始めた。銀糸がつながる唇をすっと離すと、テオンはクロエの唇を指で拭う。
「クロエ、とろんとしてすごい顔だよ? そろそろやめないと午後の仕事に差し支えるからこの辺でね。ランチ、ごちそうさま」
「は、はい……」
(体に熱がこもっているみたい……テオン様に振り回されてるのに嬉しいなんて、私どうかしてるわ)
(約束の日まで残り四十九日)
190
お気に入りに追加
909
あなたにおすすめの小説
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
【R18】婚約破棄に失敗したら王子が夜這いにやってきました
ミチル
恋愛
婚約者である第一王子ルイスとの婚約破棄に晴れて失敗してしまったリリー。しばらく王宮で過ごすことになり夜眠っているリリーは、ふと違和感を覚えた。(なにかしら……何かふわふわしてて気持ちいい……) 次第に浮上する意識に、ベッドの中に誰かがいることに気づいて叫ぼうとしたけれど、口を塞がれてしまった。
リリーのベッドに忍び込んでいたのは婚約破棄しそこなったばかりのルイスだった。そしてルイスはとんでもないこと言い出す。『夜這いに来ただけさ』
R15で連載している『婚約破棄の条件は王子付きの騎士で側から離してもらえません』の【R18】番外になります。3~5話くらいで簡潔予定です。
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった
山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』
色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。
◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
【R18】利害一致のお飾り婚だったので初夜をすっぽかしたら大変なことになった
春瀬湖子
恋愛
絵に描いたような美形一家の三女として生まれたリネアだったが、残念ながらちょっと地味。
本人としては何も気にしていないものの、美しすぎる姉弟が目立ちすぎていたせいで地味なリネアにも結婚の申込みが殺到……したと思いきや会えばお断りの嵐。
「もう誰でもいいから貰ってよぉ~!!」
なんてやさぐれていたある日、彼女のもとへ届いたのは幼い頃少しだけ遊んだことのあるロベルトからの結婚申込み!?
本当の私を知っているのに申込むならお飾りの政略結婚だわ! なんて思い込み初夜をすっぽかしたヒロインと、初恋をやっと実らせたつもりでいたのにすっぽかされたヒーローの溺愛がはじまって欲しいラブコメです。
【2023.11.28追記】
その後の二人のちょっとしたSSを番外編として追加しました!
※他サイトにも投稿しております。
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる