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5章 エルフの森
無難とは
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「モチロン ジャシンカラ ミヲ マモルタメ ダケニ ツカウヨ ダカラ アンシン アンゼン ダイジョーブネー」
「なぜカタコトになっておるのだ? ……まあ良い、くれぐれも取扱には注意するのだぞ」
「ういーっす」
お説教でほぼ1日が終わってしまった。
その後、特に邪神の使徒が来ることも、何か事件起こることも無く、2週間ほどが過ぎ去った。
一応前回の失敗を考慮して、訪問者には必ず鑑定と解析ツールを使わせてもらい、本人かどうかを確認させてもらう事にしている。
まあ、スリーサイズまで見えるとアリーセがバラしたようで、パールとマックスしか来なくなったがな。
ちなみに魔晶石と交換でホーリークリスタルを追加で貰えないか? という交渉は了承され、パールを経由して10個ほど手に入れた。
正直なところ千個くらい欲しかったのだが、そんなに用意が出来ないということで、流石に却下されてしまった。
何に使ったかといえば、無難なことに魔改造した魔除けのアミュレットにホーリークリスタルを埋め込んで、スーパーアミュレットを制作したのである。
リーラ様からはホーリーメタルの時と違い、特に使い方に制限を受けていないので、何に使おうと問題は無いはずなのだが、いちいちパールが口を出してくる為、何を作るかなかなか決まらなかったのはご愛嬌というやつだ。
完成したアミュレットは、万が一が無いようにパーティメンバーメンバーにプレゼントしてある。
完成品は解析ツールが弾かれてしまうので、最終的な能力は不明だが、ベースにしたアミュレットは、状態異常無効、全耐性大アップ、HPMP回復1%/秒、の効果となっている。
通常の鑑定スキルで見たところ以下のような結果になった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
神の息吹とも呼称すべき護符
アーティファクト。 地上において究極のアミュレットの一つ。
身に着けた者に対する様々な不利益な効果から身を守ることができる。
「邪」を完膚なきまでに打払い、不死身に最も近づくことができるようになる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「これを見て、無難に仕上げた結果と言えるのはご主人様くらいのものであろうよ。 好きに作らせたらどんな非常識な物を作っていたのかと思うと頭が痛くなるの」
「え? 好きに使うなら、もちろんボールベアリングに……」
「ふむ、ご主人様に関しては、無難な物を作る事こそが至高の物を作るのに必要な、たった1つ事だと、我は理解したぞ」
「それの何が面白いっていうんだよ。 物作りってのは、もっとこう斬新で浪漫があって然るべきだと思うんだ」
「突飛な発想と斬新な発想は違うと心得んか!」
ホーリークリスタルをボールベアリングとしては使わせて貰えないので、仕方なく、ワトスンにベースとなるものをアダマンタイトやミスリルで作成してもらった。
こちらには普通に解析ツールが使えるので、品質をチートツールで上げられるし、サイズの変更なんかも容易だったので、むしろ使い勝手は良かったかもしれない。
ベースにした金属の種類によって違いはある様だがチートツールで耐久値を変えると大きさや材質が変わるので、無駄にいろんなサイズを取り揃えることが出来たのは嬉しい誤算だったな。
「何故ご主人様はそこまで、そのボールベアリングとやらにこだわるのだ?」
「こんなに利用頻度の高い部品もなかなか無いと俺は思うのだが? 俺の居た世界じゃ回転する物であれば、それこそオモチャから戦車まで、ほぼ全ての機械で使っているんだぞ」
戯れに親指の先くらいのサイズのボールベアリングを使い、風車状のハンドスピナーを作ってほら、こんな回るだろ? と、遊んで見せる。
「魔法で浮かせて、その摩擦? とやらを極力無くせば良いのではないのか?」
パールが手近にあったタンスをヒョイと持ち上げて、指の上でクルクルと回しだした。
魔法を使ったのだろう、数センチばかり指先から浮いている。
「それはこっちの世界でも人類には不可能だろうが! そもそもそれが簡単に出来たら誰も苦労せんわい、ドラゴン基準で言わないでくれるかな!?」
同じ様な魔法による摩擦の軽減については、王都の錬金術師達も研究をしていたが、魔力の精密な制御が必要な上に、魔道具自体の消費魔力が大幅に増えてしまう為、何らかの技術革新でもなければ、金属製の軸受けに油を塗っただけの物の方が、費用も消費魔力も大幅に下げられるので実用的であるという世知辛い話なのだ。
例えば10のエネルギーロスを無くす為に100のエネルギーを使うのでは無駄でしかないからだ。
その点、精度さえ出せれば、ボールベアリングならば、余計な加工も追加のエネルギーも必要無く、この10のロスを4とか3にまで減らせる事になる。
しかも既存の軸受けを使っている道具や魔道具にも、小改造またはそのまま部品を交換するだけで使えるのである。
そんな話を、とくとくパールに行って聞かせていたら、ちょっとマルの様子を見てくると言って、窓からほうきで出て行ってしまった。
「ち、逃げられたか……これからが良いところだったのに……」
コレから摩擦と戦ってきてきた、日本の熱き技術者達のドラマをドキュメンタリー形式お届けする予定だったのに、残念だ。
パールが窓から文字通り飛び出して、さほど時間を置かずに、ドアをノックする音が聞こえた。
「はいはい、いま行きますよーっと」
鍵は掛けていないが、パーティメンバーならノックもせずにいきなり入って来るので、一応警戒をして解析ツールを起動して、ツムガリをアイテムボックスから出しておく。
パールが居なくなったタイミングというのも気になるしな。
「どちら様でー?」
まずドアは開けずに声をかける。
「王の使いで参りました。 こちらはコリンナ・ローデンヴァルト様の師である、イオリ殿の部屋で間違いないでしょうか?」
「あ、はい、今開けますー」
王の使いとか、リーラ様の忠告もあったし、なんか面倒ごとの予感がするな。
ゆっくりとドアを開けると、若干良さげな服を着たおっさんなエルフがいた。
解析の結果的に邪神とかと関わり合いがありそうには見えない。
「どんな御用で? 手合わせ的な事でしたらお断りをして居るのですが?」
「手合わせは大変魅力的なのですが、本日は我が国の王より、召喚状を届けに参りました」
「召喚状? 招待状でなく?」
歓迎されるわけじゃなさそうだな。
「はい、コリンナ・ローデンヴァルト様の魔法は、我々エルフが長年に渡り研鑽と研究を続けておりました魔法と比べ、大変異様……、いえ失礼しました、大変特殊な魔法でしたので、王が興味を持ち、その師であらせられるイオリ殿に、是非ともお話を伺いたいと、申しておりました。 日時等詳しいことはそちらをご覧ください」
話を聞きたいと言うわりに、強制感の漂う感じだな。 まあ実際、国とか関係なく平民呼びつけるのに、こっちの都合なんて考えないか。
もし断ってみたらどんな反応するだろうか?
……説教食らいそうだから、面白そうってだけで断るのは止めておくか。
コリンナ様にも迷惑が掛かりそうだし。
「承知しました。 では召喚状に従い、登城いたします。 しかし自分は貴族でもなければ外交に携わってもおりません、文化の違いによるご無礼には寛大に容赦を頂きたく存じます」
「はい、そちらにつきましては重々承知しておりますのでご安心ください。 ではこれにて失礼いたします」
おっさんエルフは、始終丁寧な態度のまま去っていった。
丁寧すぎてかえってなにか怪しいと思ってしまうのは、俺が捻くれているからなのか、リーラ様の言葉が気になっているからなのか……。
召喚状に目を通してみれば、2日後の昼前に直接、城というか中央?というか、王が居る場所に単身で乗り込む事になった。
「なぜカタコトになっておるのだ? ……まあ良い、くれぐれも取扱には注意するのだぞ」
「ういーっす」
お説教でほぼ1日が終わってしまった。
その後、特に邪神の使徒が来ることも、何か事件起こることも無く、2週間ほどが過ぎ去った。
一応前回の失敗を考慮して、訪問者には必ず鑑定と解析ツールを使わせてもらい、本人かどうかを確認させてもらう事にしている。
まあ、スリーサイズまで見えるとアリーセがバラしたようで、パールとマックスしか来なくなったがな。
ちなみに魔晶石と交換でホーリークリスタルを追加で貰えないか? という交渉は了承され、パールを経由して10個ほど手に入れた。
正直なところ千個くらい欲しかったのだが、そんなに用意が出来ないということで、流石に却下されてしまった。
何に使ったかといえば、無難なことに魔改造した魔除けのアミュレットにホーリークリスタルを埋め込んで、スーパーアミュレットを制作したのである。
リーラ様からはホーリーメタルの時と違い、特に使い方に制限を受けていないので、何に使おうと問題は無いはずなのだが、いちいちパールが口を出してくる為、何を作るかなかなか決まらなかったのはご愛嬌というやつだ。
完成したアミュレットは、万が一が無いようにパーティメンバーメンバーにプレゼントしてある。
完成品は解析ツールが弾かれてしまうので、最終的な能力は不明だが、ベースにしたアミュレットは、状態異常無効、全耐性大アップ、HPMP回復1%/秒、の効果となっている。
通常の鑑定スキルで見たところ以下のような結果になった。
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神の息吹とも呼称すべき護符
アーティファクト。 地上において究極のアミュレットの一つ。
身に着けた者に対する様々な不利益な効果から身を守ることができる。
「邪」を完膚なきまでに打払い、不死身に最も近づくことができるようになる。
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「これを見て、無難に仕上げた結果と言えるのはご主人様くらいのものであろうよ。 好きに作らせたらどんな非常識な物を作っていたのかと思うと頭が痛くなるの」
「え? 好きに使うなら、もちろんボールベアリングに……」
「ふむ、ご主人様に関しては、無難な物を作る事こそが至高の物を作るのに必要な、たった1つ事だと、我は理解したぞ」
「それの何が面白いっていうんだよ。 物作りってのは、もっとこう斬新で浪漫があって然るべきだと思うんだ」
「突飛な発想と斬新な発想は違うと心得んか!」
ホーリークリスタルをボールベアリングとしては使わせて貰えないので、仕方なく、ワトスンにベースとなるものをアダマンタイトやミスリルで作成してもらった。
こちらには普通に解析ツールが使えるので、品質をチートツールで上げられるし、サイズの変更なんかも容易だったので、むしろ使い勝手は良かったかもしれない。
ベースにした金属の種類によって違いはある様だがチートツールで耐久値を変えると大きさや材質が変わるので、無駄にいろんなサイズを取り揃えることが出来たのは嬉しい誤算だったな。
「何故ご主人様はそこまで、そのボールベアリングとやらにこだわるのだ?」
「こんなに利用頻度の高い部品もなかなか無いと俺は思うのだが? 俺の居た世界じゃ回転する物であれば、それこそオモチャから戦車まで、ほぼ全ての機械で使っているんだぞ」
戯れに親指の先くらいのサイズのボールベアリングを使い、風車状のハンドスピナーを作ってほら、こんな回るだろ? と、遊んで見せる。
「魔法で浮かせて、その摩擦? とやらを極力無くせば良いのではないのか?」
パールが手近にあったタンスをヒョイと持ち上げて、指の上でクルクルと回しだした。
魔法を使ったのだろう、数センチばかり指先から浮いている。
「それはこっちの世界でも人類には不可能だろうが! そもそもそれが簡単に出来たら誰も苦労せんわい、ドラゴン基準で言わないでくれるかな!?」
同じ様な魔法による摩擦の軽減については、王都の錬金術師達も研究をしていたが、魔力の精密な制御が必要な上に、魔道具自体の消費魔力が大幅に増えてしまう為、何らかの技術革新でもなければ、金属製の軸受けに油を塗っただけの物の方が、費用も消費魔力も大幅に下げられるので実用的であるという世知辛い話なのだ。
例えば10のエネルギーロスを無くす為に100のエネルギーを使うのでは無駄でしかないからだ。
その点、精度さえ出せれば、ボールベアリングならば、余計な加工も追加のエネルギーも必要無く、この10のロスを4とか3にまで減らせる事になる。
しかも既存の軸受けを使っている道具や魔道具にも、小改造またはそのまま部品を交換するだけで使えるのである。
そんな話を、とくとくパールに行って聞かせていたら、ちょっとマルの様子を見てくると言って、窓からほうきで出て行ってしまった。
「ち、逃げられたか……これからが良いところだったのに……」
コレから摩擦と戦ってきてきた、日本の熱き技術者達のドラマをドキュメンタリー形式お届けする予定だったのに、残念だ。
パールが窓から文字通り飛び出して、さほど時間を置かずに、ドアをノックする音が聞こえた。
「はいはい、いま行きますよーっと」
鍵は掛けていないが、パーティメンバーならノックもせずにいきなり入って来るので、一応警戒をして解析ツールを起動して、ツムガリをアイテムボックスから出しておく。
パールが居なくなったタイミングというのも気になるしな。
「どちら様でー?」
まずドアは開けずに声をかける。
「王の使いで参りました。 こちらはコリンナ・ローデンヴァルト様の師である、イオリ殿の部屋で間違いないでしょうか?」
「あ、はい、今開けますー」
王の使いとか、リーラ様の忠告もあったし、なんか面倒ごとの予感がするな。
ゆっくりとドアを開けると、若干良さげな服を着たおっさんなエルフがいた。
解析の結果的に邪神とかと関わり合いがありそうには見えない。
「どんな御用で? 手合わせ的な事でしたらお断りをして居るのですが?」
「手合わせは大変魅力的なのですが、本日は我が国の王より、召喚状を届けに参りました」
「召喚状? 招待状でなく?」
歓迎されるわけじゃなさそうだな。
「はい、コリンナ・ローデンヴァルト様の魔法は、我々エルフが長年に渡り研鑽と研究を続けておりました魔法と比べ、大変異様……、いえ失礼しました、大変特殊な魔法でしたので、王が興味を持ち、その師であらせられるイオリ殿に、是非ともお話を伺いたいと、申しておりました。 日時等詳しいことはそちらをご覧ください」
話を聞きたいと言うわりに、強制感の漂う感じだな。 まあ実際、国とか関係なく平民呼びつけるのに、こっちの都合なんて考えないか。
もし断ってみたらどんな反応するだろうか?
……説教食らいそうだから、面白そうってだけで断るのは止めておくか。
コリンナ様にも迷惑が掛かりそうだし。
「承知しました。 では召喚状に従い、登城いたします。 しかし自分は貴族でもなければ外交に携わってもおりません、文化の違いによるご無礼には寛大に容赦を頂きたく存じます」
「はい、そちらにつきましては重々承知しておりますのでご安心ください。 ではこれにて失礼いたします」
おっさんエルフは、始終丁寧な態度のまま去っていった。
丁寧すぎてかえってなにか怪しいと思ってしまうのは、俺が捻くれているからなのか、リーラ様の言葉が気になっているからなのか……。
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