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4章 王都

また毛の話してる

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「ふ、不正な事は、し、してませんですよ?」

「いきなり挙動不審にならないで下さい」

「いや、そんなこと言われましてもー、元々不正なツールですしお寿司」

 BANされてしまうのだろうか? 現実になっちゃった世界でBANされたらどうなるんだろうか?
 強制ログアウトで元の世界に戻れるのか?
 いや、この場合ただ殺されてしまうと考えるのが妥当だ。
 逃げるべきなのかもしれない。

「別にあなたをどうこうするつもりはありませんよ?」

「え、マジで?」

「是です。 スキル発動時には邪な気を感じましたが、あなた自身から発せられているわけではありませんし、神々に敵対するようにも見えません」

 そりゃ、なんかされたわけでも無いのに好き好んで敵対する理由はないからだが……。

「お咎め無しですか?」

「あなた自身を咎める理由がありませんよ? それとも敵対を望みますか?」

「望みません! このスキルを使いまくっても構わないという事ですか?」

 女神様から不正ツール使い放題のお墨付きを貰えるなら、気にせず使えそうだけど。

「確かにそのスキルの効果は異常ですし、人の子が持つには大き過ぎる力でもあります」

「大きな力には、大きな責任を伴うってやつですか?」

 俺がアメリカンなヒーローの映画で聞いたフレーズを言うと、リーラ様が少し感心したような顔になった。

「責任について考えず、自ら身を滅ぼす子が多く短命な者が多いのですが、それがわかっていれば大丈夫でしょう」

 あ、すでに何度も死にそうにはなってます。
 言わないけど……。

「スキルから発せられる邪な気には覚えがあります。 この世界の神々と敵対する勢力に与する者があなたを召喚し、そしてなんらかの失敗をしたのでしょうね。 あなたは言わば人さらいにあっただけの被害者ですから、それを罰するようなことはしませんよ」

 この世界に俺を呼んだ何者かのアタリがついた感じか。
 気になるワードも出てきたな。

「なぜ失敗したと判断が出来るのですか?」

「あなたは神々に対する何らかの対抗手段、もしくはそれに類するものとして選ばれたのでしょう。 ですが、あなたを見る限りそのように利用された痕跡が一切ありません。 上位世界への干渉は神であっても非常に難しく、また膨大な魔力を必用としますので、この世界に呼んだだけで召喚が破綻したのでしょう」

「ハイエースで誘拐されたけど、途中で事故って知らない土地に放り出された状態って解釈で良いですかね?」

「ハイエースがなにか知りませんが、そういうことです」

 うーん、ラノベとかで良くあるパターンの、ダンジョン・マスターとして召喚されたとか、魔王に転生しました的な展開になる予定だったけど、呼んだだけで終わってしまったってところかな?
 まあ、不正行為をしておいて勇者ってのもおかしな話だから、そういう事だったというのならば多少は理解できるな。

 金貨を大量に流出させて経済を混乱させたり。 膨大な魔力を利用して殲滅魔法を撃ちまくったり。 解析ツールとチートツールでマックスにやったように勇者とかをボコボコにしたり、神の使徒を瞬殺し、その能力も手に入れて我が物にする。
 
 ……うん。 どう考えても世界を救うって感じじゃあないな!

「急に落ち込んでどうかしましたか?」

「すみません、ちょっと自分という存在に対して色々と思う所がありまして……」

「今あなたがここに在るのは、あなたのせいではありません。 気にしすぎると人の子は頭髪が薄くなってしまいますよ?」

「は、禿げてねーし! まだ大丈夫だし!」

 思わず自分のおでこと頭頂部を確認してしまった。
 こっちの世界だとAGAケアのシャンプーとか無いから、死活問題だな。
 ってか、教会でAGAケアしてもらえるってイーリスが言ってたな、教会……というかリーラ様とは是非とも仲良くしなければならないようだ。
 さり気なくその事を意識させ、異世界人である俺に自然と信仰を向けさせるとは、流石は女神だ。

「あなたはどうしたいですか?」

「禿げたくないです!」

「あ、いえ、そうではなくてですね、この世界でどうしたいかと……」

「魔晶石が必用ってことですか!? わかりました、いくつ必用ですか!?」

「ですから、そういうことでは無く……。 え? ちょっと待って下さい、魔晶石をまだお持ちなんですか?」

「いくらでも出します!」

 千個でも1万個でも!

「召喚が失敗した理由はそれですね、異世界からの召喚をする場合……」

「いえ、今はその話はどうでも良いんで!  魔晶石を後いくつ渡せば今後の憂いを無くせるのかの話をですね」

「……驚きです。 異界の子は価値観が随分と違うのですね。 薄毛の悩みでしたら、教会に相談すれば私が間接的に助成しますので大丈夫です。 多少の寄付を求められるでしょうが、あなたなら問題ないでしょう?」

「ありがとうございます!! 感謝の気持ちとして魔晶石を千個奉納します!!」

 リーラ様マジ女神!

「千個もですか!? それだけあれば数千年は魔力の心配が無くなりますね。 いえ、否ですね、一気にそんなに大量の魔晶石は分体の身では処理しきれませんね。 しかし本体が降臨するわけにもいきませんし……」

 リーラ様が何やら悩んでいる。
 まあ、この世界じゃ魔晶石が非常に貴重な物なわけだし、ハゲを薄毛と言う優しいリーラ様が遠慮をしてしまうのも仕方がないか。 幾らでも増やせる魔晶石を奉納するくらいなら、俺にとってはお安い御用だし、ここはAGAの悩み解決したわけであるし、無理にでも受け取って貰うべきだろう。

「遠慮しないでください、この位なら何でもありませんから!」

 奉納する皿に魔晶石をゴロゴロと取り出していく。
 流石に千個も乗らないな、何回かに分けるか。

「いけません! そんなに出しては結界石が保ちません! 結界が無くなれば私の使徒達が魔晶石の存在に気が付きココに集まって来てしまいます!!」

「え?」

 魔晶石を30個位出したところで、部屋の四隅に置かれていた結界石が甲高い音をたてて同時に砕け散った。

「ここは大きな街の中です。 エンシェントドラゴン神の使徒である事は余り知られていませんから、ここにやってきたら大変な混乱が起こるでしょう。 仕方がありません、少し力を行使します!」

 あれ、なんか俺やらかした? 
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