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2章 冒険者としての生活

アリーセ強化週間

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「あははははははははははは、何これ凄ーい!」

 テンションが上がりすぎてキャラの変わってしまっているアリーセが、森の少し拓けた場所を荒野に変える作業に勤しんでいる。

 結論から言えば、ゲームで使っていた矢は魔改造した魔導銃程では無いにしろ、それに迫る効果があった。
 アリーセ自身の能力もあり、それを連射できるとか一軍にも匹敵するのではないだろうか?
 俺は恐ろしいモンスターを作り上げてしまったのかもしれない。

「誰がモンスターよ!?」

「あ、声が漏れてたか……」

 テヘペロをかましてやったら、物凄い微妙な顔をされた。
 すぐに立ち直ったアリーセがズンズンと俺の方に迫ってくる。

「この矢売って!」

「え、いや別にただで構わないけど……」

「そういうの良くないわよ、近づいて来る人が皆お金とかアイテム目当ての人に見えてきちゃうのを心配して、矢を増やせるとかいろんなアイテム持っているのを黙ってたんじゃないの?」

「なんでそういう事に関しては鋭いんだよ……」

「なによ、人を阿呆の子みたいに言わないでくれる」

 俺の呟きをしっかり拾ったアリーセが憤慨している。

「いや、別に馬鹿にしたわけじゃない。 それにアリーセがそういうつもりは無いって信じてるからな」

 だから、遠慮なく貰って欲しいと伝えたが、アリーセは良い顔をしなかった。

「そう言ってくれるなら、余計に対価は受け取って欲しいわね。 そうじゃないと対等な関係じゃなくなっちゃうわ」

 真面目か。

「それじゃあ、対価として金銭じゃなくて、検証や実験に付き合ってくれないか? 依頼の報酬がその矢って感じでさ」

「えー? そんな事じゃ対価には足りなくない?」

「いや、爆発とかあるし危険な事もあるから、むしろこちらが追加で出さないと駄目だと思うぞ」

「うぇっ!?」

 爆発と聞いて、アリーセ顔が少し引きつった。

「爆発って、さっきトロールが跡形も無くなったようなやつ?」

「ようなやつだ」

「ちょっと考えさせて……」

 アリーセがコメカミに指をあてて難しい顔をしている。

「それ以外の対価は受け取らないので、タダで持ってけば良いんじゃないか?」

 ちょっと意地悪を言ってみると、ゆっくりと首だけでこちらに振り向いた。
 135度くらいだろうか?

「い、良いわよそれで。 爆破実験くらい手伝うわよ!」

「爆発させるだけじゃないからな!?」

 しかし、ゲームのアイテム類はそこそこ強いのをピックアップしているとはいえ強力だな。
 魔導銃もこのまま単発式だと、アリーセの弓には全く及ばないことになってしまう。
 早々に銃床をつけて連発式にしたくなってきた。
 素直に別の武器を使うという手もあるが、アリーセに合わせるなら魔導銃がベターだろう。
 俺が弓のスキルを取っても、慣れるのに相当時間を費やす事になりそうだしな。

 矢の軌道は山なりだが、銃はある程度の距離までは水平に近い軌道なので狙いをつけやすいのだ。
 つまり練習時間が弓より銃のほうが随分と少ない時間で済むのである。
 スキルの有無については、銃のスキルというのも実はゲームに存在していて、魔導銃が使い物になるならば追加していく予定だ。

 アイテム変化でゲームにあった銃をゲットしない理由は単純で、FADではないゲームでもよくある事例なだが銃やそれを扱うガンナー等のジョブが不遇だったのである。
 これは、遠距離の物理職が強いと近接職の存在意義が無くなってしまうため、ゲームバランスの名のもとに弱くされてしまうのである。
 FPSでもないのに、向かい山などから魔王城の天守閣に居る魔王をヘッドショットされては、ゲームが成り立たなくなってしまうので仕方がないといえば仕方がない。
 
「あ、銃床とかのパーツだけ取ってニコイチすりゃ良いじゃないか」

 ニコイチとは、2個を1個にするという所から来ている言葉で、車などのジャンクパーツから使える部品を寄せ集めて使えるようにする。 というような意味である。
 数値をいじっても形が変わってしまうので使えないと決めつけていたが、パーツとして考えればむしろ優秀かもしれない。

「なんの悪巧みをしているのか知らないけど、そろそろ現実に戻ってきてね」

「悪巧みとは失敬な。 素晴らしいアイディアが浮かんで来ただけだ」

イカれた錬金術師マッドアルケミストとか、みんなそう言うのよ」

錬金術師アルケミストではない、科学者サイエンティストだ!」

 マッドつけんな、俺の中二心が喜ぶじゃないか。

「そんなどうでもいい事置いといて、具体的には何をすれば良いの?」

「非常に大事な部分だが、まあいい。 具体的には俺が持ってる武器や防具の性能テストだな」

「性能テスト? 私、弓以外は正直そこまでではないわよ?」

 まぁ、手伝いと言ってはいるが、金銭を受け取らずにアリーセに強力な武器防具を渡す口実だ。
 なので別に実際にテストを行って貰う必要も無いので構わない。
 どさくさでアリーセの防具の方も強化してやろうなどとも考えていたりもする。
 さっきのトロールも俺のせいだという可能性が否定できないし、ドラゴンの時のように俺のせいでアリーセに死にそうになられたくはない。

「強そうな弓をいくつか持ってるんだ、試そうにも俺は弓の扱いとか素人だからな」

「え!? 本当に!? それはぜひ見せてほしいわね!」

「近い近い!」

 すごい喰いつきで顔がずずいとよって来た。恋に落ちたらどうしてくれる。

「ちょ、ちょっと待っててくれ」

 弓を、さあ出せ、はよ出せとにじり寄ってくるアリーセを宥めて、アイテムボックスの中身を少し整理して、チートツールを使いガラクタを弓に変えていく。
 事前に登録済みのコードなのですぐに終わる。

「とりあえずタイプの違う弓があるから、それぞれ試してみて感想をくれ」

 俺が出したのは、神龍弓(和弓タイプ)、アルテミックボウ(短弓タイプ)、ガーンデーヴァ(ロングボウタイプ)、異界の化合弓(コンパウンドボウタイプ)、の4種類だ。
 それぞれ、超激レア武器ではないが、それらが手に入らない場合の代用品として良く使われていた激レアの弓だ。
 一応アイテムボックスに収納できるように木材っぽい素材やモンスター素材を使っていない弓をチョイスした。
 超激レアの弓も出せないこともないが、デザイン重視過ぎてまともに持てるかどうかも怪しいくらいゴテゴテしていたので、それは辞めておいた。

「これって、ダンジョン産なの? 見ただけで、凄い力を感じるわ……」

「そんな感じだ。 まあ、ドグラスの親父さんの武器みたいに個人個人に合わせて調整されたものじゃないから、使い勝手は良くないかもしれないが」

「何言ってるのよ、強力なダンジョン産の武器なんて、ほとんどの冒険者垂涎の武器なのよ、しかも自分がメインで使っている武器が運良く手に入る事だって稀だわ!」

 高価なアクセサリーを貰ったかのようにうっとりとした表情で力説された。 持っているのはアクセサリーではなくて大分物騒なものではあるが……。
 まあ、ドロップ品じゃなくてガチャなので、この世界で言うならアーティファクト扱いになるんだろうが、それは言わないでおこう。
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