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1章 異世界転移
アイテムボックスが使いづらい
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「ここでジッとしてても仕方がないわ、ひとまずアルマベアーの討伐証明部位と運べる程度の素材を取って、街に戻りたいんだけど良いかしら? 話は移動しながらでも良いでしょ」
「こいつ、アルマベアーっていうのか。とりあえず、その感じで了解だ」
俺は道すがらに何を聞けば良いかと考えをまとめる。
カンストしている金の方は、どのくらいの価値か分からないけど、たった300であれだけ大騒ぎするんだから、生活には困らないかな?
幾らでも増やせるしな。 あ、でも治安とかどうなんだろう? 派手に金を使ってたら強盗とかに襲われたりとか……。
そんなことを、得体も無くつらつらと考えていると、アリーセが何やら線香のような物を焚く。
「それは?」
「ん? ああこれ? モンスター避けのお香よ。これから軽く解体するから血の匂いとかで他のモンスターが寄ってこないようにするってわけね」
「なるほど、あ、ちょっと確認したい事があるんだけど良いかな?」
「確認したい事? 別にいいけど何?」
さっさと解体を済ませてしまいたいのだろうアリーセは、それでも邪険にする事なく了承してくれる。かわいいし良いヤツだ。
「えーっと、アイテムボックスってあるよね?」
「アイテムボックス? あるけどなんでそんな……って記憶がないんだったわね」
「なんかスマン。でもあるなら良かった。それって使えるのって珍しかったりする?」
ものすごいレアスキルだとか言われたら困るしな。ん? 困らないか?
「容量はそれぞれだけど別に珍しくはないと思うわよ。5人居たらその中の一人くらいは使えるって位かな? 一応私も容量は多くないけど使えるわ」
こんなふうにと、何もない空間から手品のように包丁程度の大きさのナイフを出現させて見せてくれた。
「あ、それ、俺も使えるっぽいんだけど、空っぽみたいだから荷物持ちくらい手伝えるかなって思って」
「なんで、アイテムボックス空っぽなのに、そんなに荷物持ってるのよ……」
俺はリュックを背負っているので至極ごもっともである。金貨を入れた袋と同じようにデフォルトアバターの初期装備でゲームの時は見た目だけの用途が無かった装備で、基本的にアイテムボックスを使用してしまうゲームでは、なりきりプレイで使っているフリをする以外の使い道が無かった物なのである。そのために俺はすっかり存在を失念していたので、中に何が入っているかも確認していない。
「本当だな、何でだろう? 不思議だな!」
「はあ、記憶が無い人に理由を聞いても仕方ないわね。でも、私もアイテムボックスは使えるし、必要無いわ。それに依頼としてイオリの護衛を受けたんだし、クライアントの手を煩わさないのは、良い冒険者の条件よ」
と、魅力的笑顔で話すアリーセに一瞬見惚れる。たぶん営業用スマイルなんだろうけど。
「えーっと、そのアルマベアーの素材にどのくらいの価値があるかわからないけど、アリーセのアイテムボックスの容量が足りないなら、俺のアイテムボックスにまるごと入れちゃえば良いんじゃないかな?って思ったんだけど……」
倒したモンスターをまるごとアイテムボックスに入れ、そのまま売るというのは、ある種定番だよな? 時間も掛からないし、余すことなく売れるのでは?と、アリーセに聞いてみた。
「えーっとなんて説明すれば良いのかな? アイテムボックスには生き物は入れられないのよ」
「え? でもそれ死んでるよね?」
「うーん、なんて言えば良いんだろう、専門家じゃないから詳しくはわからないけど、確か錬金術士の人に聞いた話だと、無機物だったかな?っていうのじゃないとアイテムボックスには入れられないってことらしいわ。私は簡単に生きてるものと、食べ物とか元が生きてたものは入れられないって感じで判別してるけどね」
「なん……だと……!?」
死の定義にもよるが、死んだばかりの生き物は、まだ細胞レベル等で言えば生きているとも言える。生きているものが収納出来ないということは、まだ細胞が生きている状態のもの収納できないということになる。さらには生き物は大量の菌類と共存しているため、それらをひっくるめると生きているものが収納できないアイテムボックスには、倒したモンスターを収納することが出来ないというのである。
さらに植物もまた生きており、切り花が水を与えておけば生きているように、植物は切り取った一部分でも生存が可能であるため、採取した薬草等も収納することも出来ないということであった。
戦闘に自信を無くしていた俺は、チートツールによって得た、引くほどのアイテムボックス容量を利用しての食料不足解消や建設資材の大量運用等で、内政チート方向で俺SUGEEEEならいける!と夢想していたが、早くもその目論見は崩れ去った。ちくしょうめ。
とはいえ鉱物等の運搬は可能である。鉱夫や鍛冶屋などの暑苦しいゴリマッチョ軍団に囲まれながらなのは、まっぴらごめんだが……。
「まあ、魔法生物とかの種類だと、まるごと入れられる場合もあるから美味しいんだけど、こいつは無理ね」
と軽く肩をすくめ、内心めちゃくちゃ消沈している俺に気がつくことなく、ちょっと待っててね、とアリーセは先ほど取り出してみせたナイフを使って、慣れた手つきで解体作業に入る。
そのナイフもよく見れば、グリップ部分もすべて金属で出来ており、革ヒモや木材は使われていなかった。
多分、アイテムボックスに入れることが前提で作られているんだろう。
「無機物だけって、条件厳しくね? というか、無機物と有機物混ざってるような物体もダメなのか?」
いずれ、検証してみた方が良いなと、俺は心のメモ帳にメモをする。
アリーセがアルマベアーを解体するところをしばし見学していた俺は、現代人の多くがそうであるように生き物の解体など見たことがなく、微妙に気分が悪くなってきたので、ずっと背負っているリュックに、何が入っているのか確認してみることにした。
リュックの中に入っていたのは、
野営セット、毛布、ロープx10m、ランタン、油x三日分くらい、携帯用の食器、小型ナイフ、からっぽの袋類x5
であった。ほぼ、ゲームでデザインされていた部分がそのままある、という感じである。デザインされていなかったリュックのサイドポケットの中には何も入っていなかった。
「食料は無しか……」
アルマベアーに襲われていたところを助けられたということもあるが、食べ物が無いという点からもアリーセが居てくれて本当に良かったと思う俺だった。
------------------------------------------------------------------
この世界のアイテムボックスは使い勝手が悪い模様!
読んできただきありがとうございます。
「こいつ、アルマベアーっていうのか。とりあえず、その感じで了解だ」
俺は道すがらに何を聞けば良いかと考えをまとめる。
カンストしている金の方は、どのくらいの価値か分からないけど、たった300であれだけ大騒ぎするんだから、生活には困らないかな?
幾らでも増やせるしな。 あ、でも治安とかどうなんだろう? 派手に金を使ってたら強盗とかに襲われたりとか……。
そんなことを、得体も無くつらつらと考えていると、アリーセが何やら線香のような物を焚く。
「それは?」
「ん? ああこれ? モンスター避けのお香よ。これから軽く解体するから血の匂いとかで他のモンスターが寄ってこないようにするってわけね」
「なるほど、あ、ちょっと確認したい事があるんだけど良いかな?」
「確認したい事? 別にいいけど何?」
さっさと解体を済ませてしまいたいのだろうアリーセは、それでも邪険にする事なく了承してくれる。かわいいし良いヤツだ。
「えーっと、アイテムボックスってあるよね?」
「アイテムボックス? あるけどなんでそんな……って記憶がないんだったわね」
「なんかスマン。でもあるなら良かった。それって使えるのって珍しかったりする?」
ものすごいレアスキルだとか言われたら困るしな。ん? 困らないか?
「容量はそれぞれだけど別に珍しくはないと思うわよ。5人居たらその中の一人くらいは使えるって位かな? 一応私も容量は多くないけど使えるわ」
こんなふうにと、何もない空間から手品のように包丁程度の大きさのナイフを出現させて見せてくれた。
「あ、それ、俺も使えるっぽいんだけど、空っぽみたいだから荷物持ちくらい手伝えるかなって思って」
「なんで、アイテムボックス空っぽなのに、そんなに荷物持ってるのよ……」
俺はリュックを背負っているので至極ごもっともである。金貨を入れた袋と同じようにデフォルトアバターの初期装備でゲームの時は見た目だけの用途が無かった装備で、基本的にアイテムボックスを使用してしまうゲームでは、なりきりプレイで使っているフリをする以外の使い道が無かった物なのである。そのために俺はすっかり存在を失念していたので、中に何が入っているかも確認していない。
「本当だな、何でだろう? 不思議だな!」
「はあ、記憶が無い人に理由を聞いても仕方ないわね。でも、私もアイテムボックスは使えるし、必要無いわ。それに依頼としてイオリの護衛を受けたんだし、クライアントの手を煩わさないのは、良い冒険者の条件よ」
と、魅力的笑顔で話すアリーセに一瞬見惚れる。たぶん営業用スマイルなんだろうけど。
「えーっと、そのアルマベアーの素材にどのくらいの価値があるかわからないけど、アリーセのアイテムボックスの容量が足りないなら、俺のアイテムボックスにまるごと入れちゃえば良いんじゃないかな?って思ったんだけど……」
倒したモンスターをまるごとアイテムボックスに入れ、そのまま売るというのは、ある種定番だよな? 時間も掛からないし、余すことなく売れるのでは?と、アリーセに聞いてみた。
「えーっとなんて説明すれば良いのかな? アイテムボックスには生き物は入れられないのよ」
「え? でもそれ死んでるよね?」
「うーん、なんて言えば良いんだろう、専門家じゃないから詳しくはわからないけど、確か錬金術士の人に聞いた話だと、無機物だったかな?っていうのじゃないとアイテムボックスには入れられないってことらしいわ。私は簡単に生きてるものと、食べ物とか元が生きてたものは入れられないって感じで判別してるけどね」
「なん……だと……!?」
死の定義にもよるが、死んだばかりの生き物は、まだ細胞レベル等で言えば生きているとも言える。生きているものが収納出来ないということは、まだ細胞が生きている状態のもの収納できないということになる。さらには生き物は大量の菌類と共存しているため、それらをひっくるめると生きているものが収納できないアイテムボックスには、倒したモンスターを収納することが出来ないというのである。
さらに植物もまた生きており、切り花が水を与えておけば生きているように、植物は切り取った一部分でも生存が可能であるため、採取した薬草等も収納することも出来ないということであった。
戦闘に自信を無くしていた俺は、チートツールによって得た、引くほどのアイテムボックス容量を利用しての食料不足解消や建設資材の大量運用等で、内政チート方向で俺SUGEEEEならいける!と夢想していたが、早くもその目論見は崩れ去った。ちくしょうめ。
とはいえ鉱物等の運搬は可能である。鉱夫や鍛冶屋などの暑苦しいゴリマッチョ軍団に囲まれながらなのは、まっぴらごめんだが……。
「まあ、魔法生物とかの種類だと、まるごと入れられる場合もあるから美味しいんだけど、こいつは無理ね」
と軽く肩をすくめ、内心めちゃくちゃ消沈している俺に気がつくことなく、ちょっと待っててね、とアリーセは先ほど取り出してみせたナイフを使って、慣れた手つきで解体作業に入る。
そのナイフもよく見れば、グリップ部分もすべて金属で出来ており、革ヒモや木材は使われていなかった。
多分、アイテムボックスに入れることが前提で作られているんだろう。
「無機物だけって、条件厳しくね? というか、無機物と有機物混ざってるような物体もダメなのか?」
いずれ、検証してみた方が良いなと、俺は心のメモ帳にメモをする。
アリーセがアルマベアーを解体するところをしばし見学していた俺は、現代人の多くがそうであるように生き物の解体など見たことがなく、微妙に気分が悪くなってきたので、ずっと背負っているリュックに、何が入っているのか確認してみることにした。
リュックの中に入っていたのは、
野営セット、毛布、ロープx10m、ランタン、油x三日分くらい、携帯用の食器、小型ナイフ、からっぽの袋類x5
であった。ほぼ、ゲームでデザインされていた部分がそのままある、という感じである。デザインされていなかったリュックのサイドポケットの中には何も入っていなかった。
「食料は無しか……」
アルマベアーに襲われていたところを助けられたということもあるが、食べ物が無いという点からもアリーセが居てくれて本当に良かったと思う俺だった。
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この世界のアイテムボックスは使い勝手が悪い模様!
読んできただきありがとうございます。
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