ヴァーミリオンの絵画館

椿

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第七階層 幻想生物画(陸)-13

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「……ぅ゛、……、」
「あー…、久々に笑ったー」

 きっとドラキアはフェロモンを自由自在に操れている。そしてその操作性は酷く巧みだ。だからこそ境目が曖昧になる。フェロモンのせいなのか、それとも本当に自分が痛みでも感じられるような変態になってしまっているのか。グレイは分からなくなる。

 もう、むりだ。だめだ。
 このままじゃ、身体だけでなく心までめちゃくちゃにされる。
 逃げたい。助けてほしい。

 ボロボロととめどなく溢れる涙が机を汚す。

 オークルはまだ第七階層には入れない。今日はドラキアがグレイを呼んでいるという理由で、グレイだけ特別にこの場に来れている状況だ。あまり長時間第七階層から出ないようだと誰がが異変を察知してくれるかもしれないが、それじゃあいつになるか分からない。
 自分でどうにかするしかない。

 快楽に散る思考の中、必死で生き延びるための案を探ってやっと浮かんだのは、いつかのカガリの台詞だった。

『──次は尻たぶ広げながら「カガリのおち〇ぽをこの淫乱な濡れ濡れメスま〇こに奥までズポズホして下さい」って』

 ……酷い記憶だが、
 『人間の願いは聞かない』と明言していたドラキアに、もしもグレイがこれを言ったとしたら──。

 ヘロヘロの頭にしては上出来の案に、グレイは早速両手を自身の臀部へと伸ばす。

 羞恥心は捨てろ。命がかかってる。

 震える指を食い込ませて、汗だくの尻たぶをぐに、と左右に引っ張った。
 クパクパと物欲しげな開閉を繰り返し、その度にむわりと中の熱い粘膜が覗く卑猥な穴がドラキアの前に晒される。途中、どろぉっ、と中を満たす白濁がだらしなく溢れ出してくる感覚にグレイは堪らずビクついたが、あられもない声で喘いでしまうことは避けられた。

 ……っはやく、こえを、ととのえて、


「………っ、ドラキアさっ、んのぉ、おち〇ぽっ、い、いんらんメスま〇こに、はぅ……っ、いちばんっ奥まで、……っぅ、ず、ずぼずぼ、してください……っ」


 しん、と沈黙がその場を支配する。
 グレイは作戦の成功を期待して、僅かに心を明るくした。

 よ、よしこの隙に………隙に、も何も足腰まともに動かないんだった!と、とりあえず床にしゃがみ込んでから這って出口まで──、

 そこまで考えていたあたりで、後ろから無言で両脚を持ち上げられる。先程まで申し訳程度に床に引っ付いていたグレイの脚だ。そのまま円卓の上へと乗り上げさせられて、同時に今までずっとうつ伏せだった身体も正面を向く体勢に変えられる。

 両手で膝を引き離された。股がM字にパッカリと大きく開く。

「……ぁ、の、おれ、お、ぉ、おち◯んぽっ、中に……っ、」

 無意識にずり上がる腰を机の端の方まで引き戻された。ぐっ、とグレイの太ももが腹へ押しつけられ、雄を挿入するための性器が丸見えになる。

 じわりと更に視界がぼやけて、喉が痛みと共に激しくヒクつき出した。

「はぁーっ!はぁーっ!ひっ、ゃ、やめっ、……はっ、い、ぃいいちっばん、お、おくっ、おぐ……っ、はぁっ!はぁっ!はぁっ!」

 グレイの尻に、円卓の縁に立つドラキアの腰がピッタリ触れる。同時に、火傷しそうな程に熱い剛直がずしり、とグレイの縮こまった陰茎の上に乗せられた。次いで、ずり……、ずりぃ……、とブツだけの重さでグレイの物をすり潰すように、それは何度か同じ場所を往復する。

 グレイの胸は忙しなく上下して、カチカチカチと細かく歯が鳴っていた。
 必死で言葉を繰り返す。
 しかし心の何処かで、もうそれではドラキアを止められないと分かっていた。

 激しい収縮が続くグレイの入り口に、灼熱の切っ先がぐっ、と決して逸れないようあてがわれる。


 グレイは、ぐしゃりと眉の下がりきった顔で言った。


「……ぃ、い゛れで、ほじぃ……っ!」


 瞬間、ごぷっ、と一気に溢れ出てきた白濁を奥に押し戻すように、ドラキアはグレイを貫いた。


「──お゛ッッ…!?っあ゛ーーー!!!」
「……ムカつくなあ……ッ!!」
「~~~ッッ!!」

 ばちゅん!ばちゅん!ごちゅごちゅごちゅっ!!
 押し潰すように覆い被さられて、散々中出しされた精液が泡立つくらい激しく揺さぶられる。変に反抗しようとしたのが癇に障ったのか、ドラキアは苛立った風に今度はグレイの首の横に噛み付いた。
 頸動脈に掠るそれに目の前が真っ赤になって、激しい痛みと恐怖の中、クラクラする蜜の匂いに全身を痺れさせて絶頂する。既に快感の容量限界を超過している身体は無意識に自身を守ろうと激しく暴れるが、ドラキアの胴体にのしかかられているため逃げ場はなく、羽をもがれた虫の如くもがくだけだ。

 ぺろっと彼自身の唇に付いた鮮血を舐めとったドラキアは、その源泉であるグレイの傷口を更にみぢっ、と噛んで新しく溢れ出た血液を啜る。繰り返されるそれはまるで吸血鬼の食事風景のようだった。
 絵画は外界の物質を取り込むと劣化する。それはグレイ達清掃スタッフにとっての常識で、当然どの階層でも気を遣ってきた。しかしドラキアは寧ろ積極的にそれを取り込もうとさえしている。
 もうグレイには彼が何を考えているのか本気で分からなかった。

「ぁ゛、……ぅ゛ーーっ、ぅ゛ーー、」
「……ッ、ほらもっとイッとけ」

 パチっと青白い電気をペニスに添えられそうになって、グレイは植え付けられた恐怖でガクガクと体を揺らす。

「……っ!?はぁっ、やっ、ごめんなさい、ごめ、なさいっ、ひっ、…ごえっ、ごえ、な゛ざいっ……!それやっ…です……っぃ、やだっ、」
「ン~??」

 震えるグレイに、ドラキアの表情は何だか一気に楽しそうなものへと変わった。バチッ!バチッ!と、何度も何度も近くで電気を弾けさせて、その度にひっ!ひっ!とビクつくグレイで遊んでいるようにも見える。

 嫌がるのは逆効果だ。どうせならこれも「して欲しい」と言った方が止めて貰える確率が上がる気がする。しかしそれを頭では理解していても、今のグレイが嘘でも電気を浴びせて欲しい、だなんて懇願を出来る筈がなかった。意味のある言葉を発すことが出来るとするならばごめんなさい、とやめてください、がか細く口から漏れるくらいである。

 一回でもあれでバチッとされたら、次の瞬間には狂おしい程の強制的な絶頂が待っている。そしてそれは絶対に一回では終わらず、ドラキアが飽きるまで何度も、何度も繰り返されるのだ。漸く飽きられた頃にはきっとグレイは失神してしまっているだろうし、……いや、もはや失神出来た方がマシだったと思えるくらいにボロボロに壊れてしまっているかもしれない。
 廃人のようになりながら一生電気を流され続けて絶頂する自分の姿を想像して、グレイは芯から戦慄した。

 したいって言わなきゃ。でも怖い。言えない。電気嫌だ。辛い。苦しい。怖い。こわい……っ!

 恐怖心がピークに達したその時、

 ──バチッ

 目の前で一際大きな電気が弾けた。
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