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椿

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第七階層 幻想生物画(陸)-11

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 や、やっと終わった……。
 ぐったりと机の上に上半身を横たえているところで、不意にドラキアが首元へと顔を寄せる。思わずグレイは、また何かされる!?と反射でビビってしまうが、

 ……えっと、もしかして匂い嗅いでる……?

「……ン。まあ多少はマシになったんじゃない?今度からオレ専用になるんだから、そのくっせえの全部消さなきゃ食えたもんじゃねえよ。……オイ、反省しろ。オレに前処理の手間かけさせてんだから『すみません』だろうが」

 ばちゅんっ!!

「が…っ!!すみまっ、あ゛っん!イッたあっ!…ふぎぃっ!…い、まっ!さっぎ、イ゛ッ、い゛っで、」
「ア?また出したのお前。……耐え性ねぇな。我慢しろっつっただ、ろっ!」
「あひぃっ!!……っ、むりっ、むり゛っ、むり゛む、っり゛ぃい゛っ!!ぁっ、おねがっ、やめ、やだぁあ゛っ!!」
「オレが人間の願いとか聞くと思う?虫にでも生まれ直してから出直せば」

 あ、駄目だこれ。終わらない。

 グレイの懇願など総無視でピストンを続けるドラキアと、それで性懲りもなくまた感じてしまうグレイ。耐え切れずにイッてしまうと謝罪を強要され、すみませんと言いながらその途中でまためちゃくちゃに突かれる。それが2回続いたところでグレイの体力も殆ど限界に達していた。はひっ、はひっ、と円卓を泡立つ涎で汚しながら、グレイは一刻も早くドラキアが行為に飽きてくれることだけを願う。

 と、その時、

 バチッ、と全身に電気ショックを受けたような感覚があって、グレイは完全に無意識のまま射精した。

「──は??」

 ぴゅ!と陰茎から飛び出た何度目かの精液が自分の知らないところで床を彩るのを、グレイは呆然と眺める。

 え??

 なに、今の。 俺、今イッた? 何で?
 だって今、別にそんな、イクようなタイミングじゃなかっ──、


 直後、ドカン!と腰の奥の方から、今までに感じたことが無いくらい強い快感が一気にグレイに降りかかった。

 脳味噌を直接鈍器で殴られたのかというくらいに、思考も、理性も、身体の動かし方や意味のある言語の発し方まで一度全部リセットされてぐちゃぐちゃにかき混ぜられる。

「わ、……あっ、ぁ、ぁああ゛あ、あ゛ぁあ゛~~~っっ!!?」

 それはまるで、先程の一回の射精に行きつくまでの快感を今、この瞬間に、一度で味合わされているようなそんな感覚。
 頭のてっぺんから爪先まで、全部がビックンッ!!と怖いくらいに思い切り跳ねる。グレイの意思とは関係なくガクガク痙攣して上下に動く腰は、その中をうねうねとキツく蠢かせたままドラキアの肉棒をじゅっぽじゅっぽと挿れたり出したりして好き勝手に扱いていた。まるでグレイがドラキアのペニスを使って後ろの穴で自慰でもしているような状況だ。ドラキアは少しも動かずただそこに居るだけなのに、グレイの奥はごちゅ!ごちゅ!と絶えず刺激されて、更なる絶頂を自身に課す。
 机に額を擦りつけながら、絶叫のような喘ぎ声が抑えきれなかった。目をこれでもかと大きく見開いて、それを閉じられないまま涙がボロボロと出て来る。足の爪先は何度も何度も床を蹴って暴れていた。ずっとゾクゾクと背筋を這う掻き毟りたくなるような刺激が治まらなくて、他の感覚が馬鹿になったみたいに拷問のような快楽しか感じとれない。

 一瞬でこれはヤバイものだと悟った。

 本能的な恐怖から、グレイは出来る限り身体の動かせる部分をバタつかせて逃げようとするが、ドラキアはガッチリとグレイの腰を固定してそれを許さない。
 もがく手が机の上を惨めに滑り、床を気持ちばかり擦って空を切る足は無力感に震えた。
 逃げられないグレイを見て恐らく初めて愉快そうな顔をしたドラキアは、その手の平にバチッ、とまるで静電気のような青白い光を発生させて、グレイの眼前へと翳す。

「こういうのも好きなの?」
「ぁ、ぁ?はっ、……や、やだっ、やだ…っ」

 問われて気付く。今のグレイの状況を作った原因が、一体何だったのかということに。

 ドラキアが手に光らせるそれは、彼の能力のようなものらしかった。
 青ざめた顔で拒絶を示すグレイに、彼は少々歪に口角を上げて、

「いいね。そういう顔は好きだよ」
「──あ゛っ!?やっ、……っ、ぁッ、アッ、ア゛ぁあ゛ッ!!ゔぎぃい゛~~ッッ!!」

 バチィッ!!

 許可もなくペニスに触れたまま電気を流されて、またピュ!と殆ど色のない精液が飛び散った。そして例の如く、少しの時間差で爆弾のような絶頂感が押し寄せ、一発で全神経が侵される。
 グレイは動物みたいに唸り声をあげながら、髪を振り乱し、手足を激しく暴れさせて感じた。これは暴力と言ってもいいくらいの重い快感。射精はゴールじゃなくスタートで、だからこそスッキリなんてしない。終わりはなく、狂おしい絶頂の余韻が次も、またその次もどんどん降り積もって、快感が前よりも強くなるのが心底恐ろしい。

 ドラキアは、きつく収縮して痙攣するグレイの中を堪能するみたいにピストンを続けた。絶頂中にもかかわらずズンッ!ズンッ!ズンッ!と無理矢理腸壁をこじ開けて抉ってくるそれは、もはや凶器だ。

 どうしたって逃げられない。
 グレイは電撃が次いつ来るのか怯えながら、中での刺激でビクンッ!!と大きく首を仰け反らせて感じた。

「ヒューッ、ヒュー…ッ、はっ、ぁ…っ?……~~ぉお゛お゛っ!!」
「ハハッ、玩具みたい」

 絶頂の境目はあってないようなものだ。落ち着いたかに思えても、すぐにドラキアの手で上り詰めさせられる。

 バチッ!と電気を流す度に激しく痙攣して暴れるグレイに、ドラキアからなんとも的確な表現がなされた。
 グレイの陰茎はさっきの電撃からずっと蛇口が壊れたみたいに汁が垂れ流しで、確かに、これも壊れかけの玩具みたいだなと頭の隅で自嘲する。

 彼にとってこれは娯楽でしかない。
 ここではグレイに人権などないのだ。

「ぁっ、や、もう…っひぅ!……っっ、やだぁっ!!…アッ!?ぁっ、あ゛っ……っっや、べでっ、ぐださい…っっ!!」
「絶対に嫌♡」

 泣いて縋っても、むしろそれを楽しんでいるような顔をされる。律動が激しくなり、無遠慮に奥をぐぽぐぽと蹂躙されて、グレイはまた悲鳴をあげながら後孔を激しく収縮させた。

「……ほらっ出すよ。電撃が嫌なら、それが無くても一生懸命締めないとでしょ?」
「……あ゛っ!!~~~っ、ゔ…っ、ぐっ、」
「ハッ、流石淫乱……っ」

 ドラキアに従って下半身に力を入れると、彼はその中に硬くて熱い怒張をずぶぶっ!と捻じ込んで、グレイの全部を掻き分けて、暴いて、めちゃくちゃに擦って、結腸を抉って、前立腺を轢き潰して……、
 一瞬、凄まじい快感に意識を飛ばしてしまいそうになる。

 ドラキアの息が荒くなる。律動もどんどん早くなって、グレイは彼の絶頂が近いことを察した。

 終わる…っ、もうちょっと。もう、ちょっとで……っ!


 その時、あの音が聞こえた気がした。
 咄嗟にドラキアに目線をやると、電撃を準備しているのが見える。
 無意識に、唇が恐怖で震えた。

「まっ、待っで……っ!!あっ、あ゛ぁあっ!だってっ、だっで…っ、ぉ、しり…っ!!ぎゅって、しでるのに…っ!!ヒッ、ぁっ、ゃあ゛っ!!やだぁっ!!それやだあぁっ!!」
「……はぁ、その叫び、最っ高」

 ゆっくりとグレイのペニスに伸ばされる手。それにガタガタと肩を震わせて恐慌状態で取り乱すグレイを、ドラキアは恍惚とした面持ちで眺めた。
 無駄に暴れるグレイを円卓と自身の身体で押さえつけて黙らせてから、ドラキアは萎えて縮こまってしまったグレイの中心を優しく包み込む。

 バッヂィッッ!!

 一瞬だけ、室内をドギツく照らすような光があって、




「──……っ、ぁ──、……、」

 しょろ、しょろ……

 全身にぶわりと鳥肌を立てて震えるグレイは、何処を見ているのか分からない呆けた表情で失禁していた。

 床に温かい黄金色の液体が広がっていく。
 細かく痙攣していた足がパシャッ、と尿を踏みつけて、その周辺に小さなしぶきを舞わせた。

 ドクドクと腹の中にドラキアの精液が叩きつけられる感覚があって、……まるで反射みたいに奥へ取り込もうと収縮する自身の腸の動きに、グレイは徐々に現実感を取り戻す。
 暫くの放心の後、自分が何をやったのか漸く理解出来たグレイは、ザアッ、と頭から一気に血が下がる感覚を味わった。

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