ヴァーミリオンの絵画館

椿

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第七階層 幻想生物画(陸)-8

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「──ちょ、……っ、」
「あの時は痛くしちゃったから凄く後悔してて……。だから次は優しく、気持ち良くしてあげる」
「いや、結構でっ、ぁ…っ!?」

 向きあったまま一歩一歩近づかれて、グレイは後退りながら円卓へと追い詰められた。慌てている間にやけに手際よく上着を脱がされる。
 抵抗しつつもどこか既視感のある嫌な予感に、ノコノコと絵の中に入った自分の行動を早速後悔していると、不意にドラキアの指がグレイの乳首を掠めた。シャツの上からではあったが、カリッと引っ掻かれるような刺激に反射的に身体が反応する。ビクン!と肩が跳ねて同時に喘ぎ声に近い吐息も漏れた。咄嗟に口を塞いだがもう遅い。ジッと冷静にこちらを見るドラキアの碧眼に、グレイの顔は羞恥で真っ赤に染まった。

 嫌な予感は的中したらしい。ドラキアは今のごく僅かな刺激でムクリと膨らんだグレイの両乳首を、今度は二本の指で摘んでクニクニと優しく捏ねだす。
 階層を重ねるごとに刺激され、弄ばれ、これでもかという程快感を味合わされたそこは、今やもう少し擦られただけで全身に悩ましい疼きを与える立派な性感帯になってしまっていた。

「シャツの上からでもこんなにはっきり形が分かる」
「……っ、待っ、」

 一応抵抗のためにドラキアの腕を掴んでいた手は、完全に力が抜けて両方とも下がっていき、机の上で崩れそうな身体を支えるためだけに使われる。胸を多少突き出すかたちになって、ドラキアは更に弄りやすそうに凝りに触れた。
 先っぽに指の腹をつけて小刻みに揺すられると堪らず熱い吐息が漏れる。さっきまでゆるゆると交互に左右へと倒されていた乳首をちょっとだけ乱暴に引っ張られると、ビクンッ!と首を背けて反応してしまう。ゾクゾク、と小さな何かが背筋を駆けおりて腰に重く溜まっていく感覚に、触れられても居ない穴がくぱっ、と息をした気がした。

 あ、あれ?これ、おかしくない??何で俺、こんな最初から抵抗できないくらい感じて……??

 訳も分からずドクドクと高鳴る心臓に、それによって血色よく火照る身体。埋められることを待つようなジクジクとした身体の疼きと、触れられる度に口から出る喘ぎ混じりの浅い呼吸。どこか平常とは異なる感覚に、流石のグレイも多少の違和感を覚える。

 その時、不意にドラキアがグレイの首へと顔を寄せた。鼻先に鮮やかな髪が掠める程近くなる距離に、グレイは少しばかり動揺する。しかしドラキアはそんなグレイのビクつきを意にも介さず、すん、と小さく息を吸って言った。

「発情フェロモン出て来たね」
「……っ!?」

 それだ!!

 違和感の回答が成され、少しだけ胸の内がスッキリする。確かレオとセレンの階層でも、彼らの出すフェロモンはグレイの身体に催淫作用のような感覚をもたらした。獣のような要素を持つ生物の特性なのかもしれない。
 しかし、それが分かったからと言って現状がどうなるわけでもない。

 至近距離でドラキアと視線が合ったかと思えば、それはさらに近付いて、ふに、と柔らかな唇同士が触れる。え!?ドラキアさんとキス!?とグレイが動揺したのは一瞬だ。耳元に添えられた滑らかな指がすりすりとグレイの耳たぶを撫でて、その敏感な場所への刺激に意識が奪われる。ゾクゾクと全身が震えるような感覚に小さく声が漏れて、少しだけ空いたその唇の隙間から、まるで食むようにしてドラキアの舌がゆっくり差し込まれた。

 ちゅっ、ちゅ……、と時たま聞こえる唾液の音が恥ずかしい。歯列を全部ぬるぬるの舌で優しくなぞられて、口内を絡めた舌同士でみっちり埋められて、一旦離れたかと思えば、先端の敏感なところだけを擽るようにくっつけて吸われた。はふはふ、と互いの間を行き交う吐息は酷く熱くて、濃密で、意識がぼうっと霞んでいきそうだ。キスは初めてじゃなかったが、ドラキアとしたそれは繊細で、柔らかくて、まるで蕩けるような優しいキスだった。ずっと、口をくっつけていたいと思ってしまうほどに。
 夢中になっていると、シャツの下へと手が滑り込んできた。グレイの柔肌を腰の辺りから指先でなぞりながら、ゆっくりと上へ上へ侵入してくるそれは酷くじれったい。胸辺りに届いてもすぐに敏感な場所には触れたりせずに、乳輪のそばをくるりと優しく撫でるのみだ。一瞬その中心に指の爪先が触れそうになって、ンッ、と期待から無意識に身を捩ると、上半身を弄る指は焦らすように遠ざかっていく。
 代わりと言わんばかりに口の中で口蓋を擽られて、ジンと頭の奥が快楽に痺れる感じがした。
 気持ち良いところ、全部触って欲しい。まるでそう仕向けられているみたいに思考が染まる。

「気持ち良い?」
「……っ、はあっ、…んっ、」

 返事をしなくても一目瞭然だったのだろう。クスッと鼻で笑われて、その吐息がグレイの首を掠めてゾクゾクする。
 すると不意にドラキアはグレイから離れた。離れたと言っても、彼は上半身を立てて元の立姿勢に戻っただけだ。しかしグレイにとっては、さっきまでキスをして、上半身に触れてくれて、常に身体の一部が触れ合っている状態だったのに、急に消えてしまった体温に微かに寂しさのような感情が襲う。
 ドラキアは、散々昂らされて火照る身体を放置されてしまったグレイを無感情な眼差しでジッと見下ろしていた。着衣に一切乱れの無い涼し気な表情のドラキアと、まだ一応全身を衣服で包まれているとはいえ、上半身は肌蹴て熱を含んだ息を吐くグレイ。乳首はピン、と白いシャツを押し上げてしまっていたし、触れられても居ない筈の股間すら既に兆して、恥ずかしげもなくその膨らみを晒している。明らかな差に、グレイは羞恥で首まで真っ赤にしたその顔を俯かせた。

 少しして、ドラキアはおもむろにグレイのシャツを捲る。肌着に勃起した乳首が掠って思わず甘い声が漏れた。同時に、血液の集中した赤い尖りがドラキアの目の前に晒される。はっ、はっ、と浅い呼吸で揺れるそれに誘われるように、彼は顔を近づけて、
 熱く濡れた粘膜が触れた。

「ぅあ…っ!」
「ん……」

 ドラキアはグレイの乳首を口含み、ちゅっと吸ったり、少しだけザラついた舌の表面で擦ったりして巧みに責める。指とは異なるふわふわと温かい粘膜に優しく包まれる感触が堪らなくて、グレイの腰がカクンと淫らに揺れた。空いていたもう片方の乳首にも指が這って来て、カリカリと爪で小刻みに引っ掻かれて刺激される。今まで触れられずに焦らされていたそれらは敏感になり過ぎていて痛いくらいで、漸く待ち望んだ刺激なのにもかかわらず強い快感に耐え切れなかったグレイは、身を捩って逃げ道を探した。しかしそれを察したのか、ドラキアはグレイが行動を起こす直前に腕を背中に回すと、グレイの身体を引き寄せ固定して舌と指での愛撫を続ける。

 逃げられない…っ!

「ぁ、はぁっ、舐めるの、だめ……っ」

 言葉での抵抗はあってないようなものだった。眼下でグレイの胸に縋りつくドラキアは、まるでグレイの声が聞こえていないとでもいうように一瞥すら寄越さない。しかし、じゅん、と下半身が濡れる感覚があってグレイが咄嗟に足を擦り合わせると、それにはすぐに気付いて盛り上がった中心を柔く撫で摩ってきた。乳首から口を離したドラキアにそのまま作業着のズボンを脱がされる。碌な抵抗も出来ず姿を現した黒いボクサーパンツは、グレイの先走りでぐしょぐしょに濡れて分かりやすく色が変わっていた。

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