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椿

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第六階層 天使・悪魔画-7

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 今度は別の意味の喘ぎに苦しんでいるグレイだったが、そんな事情など推し量るものかとばかりに地面へと転がされた。ずるるっとデビッドの物が抜けて、背筋に走った痺れに小さな喘ぎ声が漏れる。
 そのデビッドと位置を変わるようにしてグレイに馬乗りになったのはアインセルだった。
 はぁはぁと息を乱して顔を赤く上気させる彼は、まるで怒っているかのように限界まで目を吊り上げていて……、ちょっと怖い。

「……ぇ、ぁ、ゲホッ、」
「……はぁ、はぁ、……挿れる、ぞっ」
「ッ、えっ!?や、あ゛ぁあ゛あ……ッッぁ!!」

 ぐぶぶ…っ、ぬぶっ、ぬ゛ぬ゛~~っ…、

 さっき出したばかりだというのに、どんな回復力をしているのか。アインセルは正常位で、もう既に硬く熱い肉棒をねじ込んだ。先程までデビッドの一物を受け入れていたグレイの中が、絶頂の敏感さを残したままにぎゅうっと怒張を締め付けて媚びる。

「……っ、ぐ、ぁっ、全部、が、絡みついてくる……っ!」
「~~ああ゛ぁッ!あっ、ん゛ッッ!」

 ばちゅん!ばちゅん!どちゅどちゅどちゅう!!ズンズンズンッ!!
 遠慮も何も無く肉棒が奥の行き止まりを叩いて、カリで肉襞全部を擦り上げながら縁ギリギリまで引き抜かれたかと思えば、またどちゅん!と重く突き入れられ…。荒々しいピストンで揺さぶられる度に、一回一回絶頂しているかのような強い快感が湧き上がり、訳も分からず酷い喘ぎ声が出た。
 声を抑えようだなんて、そんなまともな思考はずっと前に投げ捨てられている。

 あ、あ、俺、アインセルさんにも挿れ、られ……っ

 正面にアインセルの興奮に歪む顔がぼんやりと見えて、普段の清廉とした姿との明らかなギャップにグレイの心臓が不規則に軋む。このままでは自分が自分でなくなってしまうような漠然とした不安が襲って、グレイははひゅ、はひゅ、とまともに息も吸えていない口で必死に制止を訴えた。

「ぁひっ、ア゛ッ、やぁっ!……~~ッ、待っ、ン゛、止まっ、でぇ!!」

 言った瞬間、ピタリ、と律動が止む。

「……っ、分かった…っ」
「……ぁ、ぇ、」

 揺れることのなくなった視界に、グレイは目を丸くして驚きを隠せない。

 ……止まってくれた。
 初めて、行為中に言うことを聞いてもらえた。

 急激な安堵感が胸の内を占める。アインセルの剛直はまだグレイの中で硬さを維持しており、グレイの中も急に動きを止めた灼熱を確かめるようにぐねぐねとうねっていて、絡み合う熱に二人して息を詰めた。
 しかしそれでもやはり律動は止まったままだ。流石天使、他とは己の律し方が違う。それに倣って、グレイも無意識に揺れそうになる腰を、残った理性を総動員して押さえつける。
 じゃあ次は抜いて下さいと言おうとして、正面からこちらを見下ろす興奮しきった顔に反射的にヒクリと身体が戦慄いた。

 強く食いしばった歯の隙間から漏れるフーッ、フーッ、と荒い呼吸を更に飲み込んで、彼は告げる。

「……、っ、いつまで」
「……へ?」
「いつまで、待てばいい」

 ギラつく氷色の瞳が、全てを溶かす程の熱を孕んでグレイを貫いた。欲望を破裂させるのを今か今かと中で待ち構えている怒張が熱い。
 目の前でごきゅり、とアインセルの男らしく飛び出た喉仏が大きめの音を立てて上下するのがよく見えて、グレイもつられるみたいに渇いた喉を揺らした。

「ご主人、……許可を」
「──っ、」

 許可、って、そんなの、自分から「犯してください」と言っているような……、いやような、ではなくて確実にそう言ってる事になるじゃないか。あ、あり得ない。言うわけがない…っ!

 地面に付いたヘロヘロの腕を何とか突っ張ってアインセルの下から這い出ようとするが、それを阻むように頭上側からデビッドがグレイの顔を覗きこんできた。

「焦らしてないで早く言ってあげなよご主人様ぁ。清純な天使に肉欲を覚えさせたその責任、ちゃあんと取らなきゃね?」

 指が触れるか触れないかの柔らかさで顎から頬を撫でられて、弧を描くその赤眼に絡めとられる。
 脳味噌がじんわりと麻痺していく感覚に、恐怖とも快感とも取れない声が漏れた。

「ぁ、…ぁ、」

 この短いスパンで何回も同じ状況を味わっていると嫌でもわかる。この感覚の後にはいつも正常な思考が出来なくなってしまうという事が。
 多分デビッドが何かをしているのだろうとは思うけど……。その思考さえも次の瞬間には白い靄がかかってうやむやにさせられる。

「ご主人」
「ご主人様」

 両耳から吹き込まれる吐息がホイッパーみたいに頭を掻きまわして、もう難しい事なんて考えられなくなった。
 犯す許可なんてしたくない。その気持ちは確かに硬かったはずなのに、後ろを隙間なく満たすこの肉棒にガツガツ中を突かれて腸壁全てを擦り上げられたら一体どんなに気持ちが良いんだろうか、という淫らな欲求が他の全てを押し退け、主張して止まない。
 ゾクゾクと頭からつま先にまで甘い痺れが伝って、ヒクンヒクン、ちゅぱちゅぱ、と性器に吸い付く音がここまで聞こえた。アインセルが再び切なげに瞳を細めるのが見えて、きゅうんと心臓が痛みを持つ。
 グレイは薄く開いた唇を無意識に舌で湿らせて、熱く浅い吐息で何度も乾かしていた。

 ほしい。欲しい。気持ち良くして欲しい。気持ち良くなって欲しい。
 二人が望むなら、俺は──、


「──『許可す、る』、~~ッひ、ぐぅ…っ!?」
「……っ、はぁっ、」

 ズブンッッ!!
 一気に奥まで怒張を埋め込まれて、内臓を圧迫するその衝撃と全身を襲う狂おしい程の快楽でグレイの頭はまたバチリと切り替わったように晴れる。
 ……晴れる、が、押し寄せてくる快楽の波はそんな事情など構わずグレイを翻弄した。

「アッ、やあ゛っ!……っあ゛、はげしっ!やだぁ!!…ゔ、待っ、でぇ!!まっで、やめっ、」
「…フーッ、フーッ」
「や、めろっ!やめっ、お゛、ぉ゛っ、~~ッ!!あ゛っ、~~や、べでっぐだざ、い゛あっ、あ゛ぁあっ!!」

 ズンッズンッズンッ!ばちゅっ!ばちゅっ!ばちゅっばちゅんっっ!!

 激しい律動の中、グレイは必死に腕を突っ張ってアインセルを引き剥がそうとするがまるで効果は無い。制止の言葉ももう届いていないようで、前みたいに止まってくれる気配の無さに絶望した。
 昂り切った勃起が突き入れられる度にグレイの性感帯を容赦なく押しつぶし、それに反応して吸い付く粘膜を無理矢理引き抜くことで余すことなく擦り上げる。身体が地面から浮き上がる程の激しい抜き刺しが何度も何度も繰り返されて、どこかに逃がすことも出来ない壮絶な快感に、グレイは頭を振り乱して喘ぐことしか出来なかった。

 いつの間にか、抵抗のために伸ばされた手は、アインセルに縋るように彼の胸元の服をぎゅうっと掴んでしまっている。赤子が反射でやるようなその仕草だが、今のグレイがそれをやると、まるで「もっと」と今以上の快楽を強請っている風にも見えた。それで更にアインセルのピストンが激しさを増したのは言うまでもない。

 ずっとイッてるみたいだ。終わりのない快感が辛い。律動の度に、地面とアインセルの間で魚みたいに激しく身体をビクつかせて感じるグレイ。
 そんな中、完全に不意を突かれる形でピンッ!と乳首を弾かれて、急激な刺激に首をのけ反らせて震えた。

「~~あ゛ッッ!?」
「お、乳首感じる?こんなにビンビンに硬くしちゃって……、今まで放っておいてごめんねぇ?今からいっぱい捏ねてあげるね」
「あ゛ぁ~~ッッ!ぁ、ずっとぉ、さわるの゛っ、…ン゛ッ!あっ!だめ、ぇっ…ッッ!」
「ダメじゃないくせにぃ~」

 犯人はデビッドだ。彼はアインセルとは反対の頭上側から両腕を伸ばしてグレイを追い詰めた。

 ぴるぴるぴるっと人差し指で乳首を引っ掻けるようにして小刻みに弄んでから、そのままグニグニ、こりこりっ、と今度は親指も足して擦り合わせるようにその粒をこねられる。既にピンッと立ち上がっていたそこは敏感で、刺激されるたびに後ろからの快感も混じって突き抜けるような痺れを全身に運んだ。
 この第六階層を含む3つの階層連続で乳首を弄られて、いよいよグレイのそこもおかしくなってしまったらしい。男性には必要のない飾りの筈なのに、間違っても快感を感じれるような部位じゃない筈なのに、デビッドによってこすこすっと摘まむように側面を擦られ、先端を爪でかりかりと小刻みに引っ掻かれ、時折強く押しつぶされ引っ張られるとひどく疼いて、未だ激しく穿たれている中を意図せずとも悩ましくぎゅううっと締め付けビクンビクンッと腰を跳ねさせてしまう。
 心なしか、誰にも触られたことが無かった頃よりもぷっくりと赤く肥大し、硬く芯を持って立ち上がっているそこは、本当に性器であるかのように卑猥だった。

「……っ、そ、なっ、じたらあ゛っ!……ぉ、おっ、きくなっ、るっ!!乳首おっぎぐなるうゔぅ~~っっ!」
「………っ、あっは!おっきくなっちゃえ!♡」
「~~~ッッ!!」

 少しだけ上擦ったような声で嘲笑された次の瞬間、グリィッ!!と充血しきった乳首の先端を爪で無理矢理肉の中に強く押しこまれて、想像を絶する強烈な快感にビックンと大きく身体を跳ねさせたグレイは訳も分からず絶頂する。

 ドクッ、ぴぴゅっ、ぴゅる…っ、とぷっ、とぷ…っ

 もう勢いの弱くなった精液は、アインセルの律動に合わせて押し出されるように幹を伝って垂れおちていた。爪先がきつく丸まった足が、ぴん!と膝を伸ばして無様に空を蹴る。
 絶頂によって無意識に圧を増す後孔は精を搾り取ろうとするように浅ましく収縮して、中の剛直を鮮明に形どる。そんなビキビキに浮き出た血管の膨らみも分かってしまう密着度にも関わらず、でっぷりと張ったカリで肉襞を全て引き連れて行くように無理矢理引き抜かれ、閉じ切った肉の隙間を再びこじ開けて何度も何度もズバンッズバンッ!と容赦なくペニスを出し入れされた。
 意識を飛ばしてしまいそうな程強い快感に、グレイの眼前に絶えず閃光が舞う。

「ぁ゛ッ、あ゛――、……あ゛ぅっ!ぁーー……っ、ひゔ…っ!!だ、…めっ、ぐるじ…っ!」
「……ご主人っ!ご主人…っ!」
「あ~あ~…。もう完全に快楽の虜じゃんアインセル。穢れを知らない無垢な天使様が形なしだぁ。……俺ちゃんはそっちの方が面白くて好きだけど!!
 ……ご主人様ぁ、すっごく気持ちよさそうだねぇ?」
「ふぎぃ…っ!!も゛っ、ひぅっ!あっ!あんッ、ア゛ッ!」
「もっと、頭馬鹿になっちゃうくらい気持ち良くさせてあげるね」

 そう言うとデビッドは、ひたすら夢中でグレイに欲望を打ち付けていたアインセルを一旦制止して、体勢を変えさせた。
 仰向けに寝そべっていた身体を持ち上げられ膝立ちになったグレイは、後ろからアインセルに抱き抱えられて背面座位の姿勢になる。
 一旦抜かれていた怒張がもう一度ゆっくりと入り込んだ。上半身を固定され、開いた足の隙間に太腿を割り入れられて密着しているせいで全く逃げ場の無いグレイは、ごちゅんっと簡単に奥まで届いたそれにただビクビク感じ入るのみだ。
 「動きにくい…」とアインセルが苦言を溢した通り確かに律動は緩やかになるが、その分この前の第五階層で強引にこじ開けられた禁忌の行き止まりの入り口をぐっぐっと押し込むように刺激されて、前立腺とはまた異なる涎の出そうな快感に、グレイは呼吸を一層荒くさせた。

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