ヴァーミリオンの絵画館

椿

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第三階層 獣人画-4

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 案内の終着地はレオの絵画だった。そこは元々今日のグレイの清掃担当区域でもあったため、丁度いいかとそのまま清掃に入る。

 レオが座す壇上の派手な玉座を中心としたこの部屋は、王に謁見する場か、執務室のような場所にも見えた。もしかするとその両方なのかもしれない。
 周囲にセンス良く配置された花瓶や美術品は、流石王の目に触れるインテリア、高価そうなものばかりだ。まあ高価だろうが何だろうが清掃スタッフが絵画内のそれを傷つけたり、ましてや破壊する事は御法度なのだけど。
 やはり見るからに高級そうなものに触れる緊張度合いは段違い……と、グレイは布巾で恐る恐る絵画の中の絵画(なんとも不思議な感覚だが)に積もった霞を拭き取る。

 そんな時ふと絵画を保護するガラスからの反射で、玉座に座るレオがジッとこちらをその金眼で眺めているらしい事が分かり、グレイは瞬く間に身を強張らせた。

 も、ももももしかして壊さないかどうか見張られてる!?それともちんたら掃除すんなよって怒り!?
 ひっ、怖っ!!

「おい掃除屋」
「はっ、はい!?何か粗相をっ!?」
「俺様の階層はどうだった」
「……へっ?」

 勝手にビビっていた手前、完全なる予想外の質問で呆気に取られるグレイ。しかしやけに真剣な表情で答えを待つレオに、慌てて我に返る。

「そう、ですね、……良い国だと思います。とても。
 俺に此処を案内してくれた時の王様がとても誇らしげで、慈愛に満ちた顔をしていたので」

 まだこの階層に来て二日目だ。何かを我が物顔で語れるほど深くを知れているわけじゃない。だからグレイの1番の判断材料になったのは、今日隣で楽しそうに国を案内してくれていたレオの表情や雰囲気といったものだった。
 自信と愛情が伝わってくるレオのそれを見て、そして同じものを返そうとする国民達を見て、直感的にそこが悪い国のようには思えない。

 レオはグレイのその回答を聞いた後数秒黙り込んだかと思うと、おもむろに玉座から立ち上がりこちらへ足を進めて来た。

 え?え?何か気に食わなかったですか??粗相??粗相ですか??などと、冷や汗をダラダラ流しながら固まるグレイ。手を伸ばさなくてもぶつかってしまうくらい間近に迫ったレオは、無言のまま、少し身を屈めて更にグレイとの距離を詰める。
 そんなレオの動作にグレイが反射でビクリと肩を揺らした直後、…スン、と匂いを嗅ぐような呼吸音が耳元で聞こえた。

「……やはり貴様の匂いはどこか懐かしい。……近づくと段々胸が、熱くなって、」
「えっ、えっ??」

 突如、手首と腰を掴まれたかと思うと、素早い動きでその場に押し倒される。上等なカーペットが敷かれていたためかあまり痛みは感じなかったが、問題はそこじゃない。

「──っ!?」
「…グルルッ、」

 獣のような喉を鳴らす音がすぐ近くで聞こえると同時、作業着の下にレオの手が入り込んだ。早急なそれは、新雪を踏み荒らすような荒々しい動作でグレイの胴をあちこちまさぐり出す。
 突然すぎて思考は全く追いついていなかったが、取り敢えず自身の身体を好き勝手弄ぶレオの動きを止めようと、グレイは咄嗟に彼の腕を掴んで、

 ──しかしその瞬間、ブワリと何かよく分からない濃密な空気を浴びせられる感覚があって、一気に力が抜けてしまった。
 ……それだけじゃない。身体は血の巡りが良くなったみたいにどくどく熱くて、何だか頭もぼーっとピンク色に染まる。自然に呼吸が浅くなり、何故か下半身がじんわりと熱っぽく疼き出した。
 明らかな状態異常に、グレイは焦る。

 何、だこれ、何だこれ??

 もはや抵抗ではなく、縋るように触れられていたグレイの手では当然レオの動きを止められるはずもなく。彼の手がより上を目指すにつれて、一緒に捲れていった作業服が徐々にグレイの白い素肌を外界へと晒していっていた。
 レオはその吸い付くような人肌を掌だけでなく視線でも堪能しながら告げる。

「確かグレイとか言ったな。……ふむ、民にも気に入られているようだし適任だろう。
 喜べグレイ、貴様を俺様の妃にしてやる」
「……は、…はあ!?」

 どうしてそうなる!?

 しかしその動揺を言葉にするよりも先に、レオに手際よく服を取り払われている現状の方へと意識が向いた。
 どんどん目の前の肉食獣に肌が晒されていくさまは、まるで包装紙を剥がれている食品のようだ。……剥がれる側がどんな気分かだなんて、経験したくはなかったけど。

 触れられた場所が悉く熱を篭らせて、微かに汗が滲むのが分かった。さっきから身体がおかしい。グレイの下着を太腿へとずらすレオの大きな手に、ゾクリと甘い痺れが走った。

「ぁっ、ま、まってっ、…っ!」
「……はぁっ、どこもかしこも柔らかいな」

 言葉での抵抗も虚しく、あっという間に生まれたままの姿にさせられてしまったグレイ。その両足を大きく開かせ股の間に入り込んだレオは、羞恥と危機感に震えるグレイの内腿にカプリと柔く歯を立てて熱い吐息を塗す。
 どこもかしこも柔らかいって、そんな筋肉ついてないですか俺~~、などと笑って返せる余裕があるはずも無く。たったそれだけの甘噛みでグレイの身体はじくじくと内側から疼くような快感に襲われた。

 いや勝手に疼くな俺の身体!?何だこれ!?絶っっ対におかしい!!

 心の声が通じたか、または余程グレイが混乱した顔をしていたのか。レオはその場でクン、と鼻を鳴らすと、

「ああ、俺様のフェロモンに当てられたな。発情期の雌の匂いがしてきた」
「フェ、ロモン!?…ん、アッ!?」

 既に硬く勃ち上がっていた陰茎に触れられ、溢れる先走りを塗り込むようにちゅこちゅこと上下に擦られる。
 突然の直接的な刺激に、先程まで内側で燻るだけだった疼きが全て解放されるような強烈な感覚がグレイを襲った。

 え、あ、うそっ、イ…ッ!!

 ガクガクガクッ!!
 ビュ!ビュクッ、ビュクゥッ!

 数度レオの手が陰茎全体を大きく擦っただけだ。時間で言うと数秒しか経ってないようなそんな微かな刺激で、グレイは訳も分からないままに呆気なく絶頂まで押し上げられた。
 腹の上に散らばった自身の精を信じられない思いで見つめながら、はっはっ、と乱れる息を精一杯整えていると、レオはそんなグレイの精液に触れる。
 そして、白濁を纏わりつかせたその指で、今度はゆっくりとグレイの後ろの穴の表面をなぞった。

 ぬる、ぬる…、と位置を確認するような動きで割れ目を往復されて、グレイの頭にはつい先日のカガリとの行為が過る。
 きゅうっ、と以前にも触れられた中が切なく収縮するような感覚があって、何だかよくわからない危機感を覚えたグレイは「やめっ、やめて…っ」と首を振って再度レオの腕を掴むが、力の入っていないそれでは勿論その動きを阻むことも出来なかった。

 くぷ、と中指の爪先が中を覗き込む動きに、グレイの腰が反射でビクンと跳ねる。塗り込められた自身の精液で濡れた入口が、まるで近付いたその指を食むようにヒクヒクと開閉を繰り返し出したのが分かって、顔が一気に羞恥で赤らんだ。

 ずぷっ、ぬっ、…ずぷぷっ、

 遂に指が奥へと入り込んできた。ただでさえ狭い中は自然にぎゅうぎゅうとレオの指を締め付けてしまって、その骨ばった棒の感触を鮮明にグレイへ知覚させる。
 熱く蠢く腸壁すべてに触れられ擦られる感触に、ゾワゾワと足のつま先から頭のてっぺんにまで快感が走り抜けた。
 グレイはその瞳を大きく見開いて喘ぐ。

「あっ、あっ、まって、ン゛ひッ!指っ、だめ……ぇッ!」
「まあそう急ぐな。すぐに指以外もハメ込んでやる」
「ちがっ…ンン゛ッ!?」

 奥へと進んでいるだけだった指は、次いでぐぬっ、ぐっ、ぐっ、と探るような動きに代わってグレイの中を蹂躙し始めた。それと同時、噛みつくようなキスが降って来る。
 熱い粘膜が隙間なく合わさり、性急に割り入って来た分厚い舌がグレイの口内を一瞬で満たした。粘つく唾液を纏った舌同士がれろ、と絡まりゆっくりと擦りあわされる感覚は、グレイの頭をより一層甘く痺れさせる。

 不意に、レオの指がグリ、と中の敏感な場所を押した。グレイは覚えのある衝撃に声も無く息を詰めるが、その微かな舌の震えさえ伝わったらしい。彼のフッ、と軽い鼻息が顔にかかったかと思うと、膨らむそこを集中的に折り曲げた指の腹でノックされ、引っ掻くようにして扱かれ出した。
 頭が真っ白になるような強い快感に、グレイの腰がへこへこと無様に上下に跳ねる。それを恥ずかしいと思う理性は残っていたものの、勝手に動いてしまう身体を止める方法が分からず、グレイは有り余る羞恥に涙すら浮かべながらレオの指使いに翻弄されていた。

 実はカガリに指を挿れられて不覚にも尻の中で快感を得てしまった後、グレイは「いやそんなことある!?」と現代っ子らしく即座にネットで検索していた。
 すると出て来る出て来る、男が尻で快感を得る方法から開発の仕方、経験談まで様々…。未知の世界を見た気分で一時放心していたグレイだったが、その中の記事の一つに快感を得る部位が人体図付きで描かれているものがあって。そこで漸く分かった。カガリの時も今も、快感を得ている場所は陰茎の丁度裏側辺りにある『前立腺』と呼ばれる部分だ。
 ……まあ、分かったところでどうしようも無いのだが。

 あっという間に指を増やされて、中を広げるようにずぷずぷと抜き差しされる。口はキスで塞がれたまま、呼吸は喘ぎごと全てレオに飲み込まれていた。
 口内で混ざる唾液はもうどちらのものか分からないくらいに溶けあって、飲み込み切れなかったそれは口の端で溢れて皮膚を伝う。下半身から断続的に襲い来る刺激もあって、グレイは息すらまともに出来なかった。

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