俺の事が大好きな○○君

椿

文字の大きさ
上 下
31 / 32

文化祭小話 6

しおりを挟む

 それは母の声だった。
 快楽に茹っていた頭が、一瞬で冷水をぶっかけられたみたいに冴える。俺と瀬川は目を剥いて硬直し、声もないのに互いに示し合わせたように息を潜めた。頭の中はもう大混乱だ。
 何で、今日は帰ってくるの遅いって…、いやそれより!!……どうしよう!今のこの状況を見られるのは非常にまずいっっ!!

「今日急にシフト変わってほしいって言われて早く帰って来ちゃった。手の込んだご飯作れるよ~!ねえ、お友達来てるなら一緒に食べてもらうのどうかな?迷惑?」

 階段を上る音が聞こえる。二階には俺の部屋と物置ぐらいしかない。母がここまで来ようとしているのが分かって一気に血の気が引いた。迫りくる危機感にバックンバックンと今までにないくらいの激しさで心臓がジャンプし、変な汗が全身に滲みだす。

 やばいやばいやばい!どうにかしなきゃ!でも今更服着ても間に合わないし、見られてしまったら言い訳なんて出来るわけない!!

「ちょっと順平?居ないの?お母さんにおかえりは~?」


 ──ドアノブが、縦方向に動かされた。


「……っ、待っ…て!!い、今、友達が、っ、着替えてるから……っ」
「あら、ごめんなさい」

 間一髪。
 一生懸命呼吸を整えた俺の言葉で、一度開きかけた扉がゆっくり閉まっていく。声は普通だったか、掠れてはなかったか、上擦ってはなかっただろうか。……でも、とりあえず止まってくれてよかった…!

 考えられたのは、そこまでだ。

「お邪魔してます!ドア越しにすみません!瀬川睦月といいます!」

 ほっ、と息を吐いた瀬川が慌てて挨拶をする。好青年らしく、母が好きそうな態度だ。
 下から見上げるその姿がどんどんぼやけて、周りの音もまるで水中に沈んだみたいに遠くなって、何も聞こえなくなる。

 極度の緊張からの解放、瀬川が喋ったことによる微かな振動、そもそも絶頂の寸前で、埋まり続けていた剛直は動かずとも絶えず俺の敏感な場所を刺激していたこと。様々な条件が重なって、俺は、扉一枚を隔てた先に自身の母親が居るのにも関わらず、もうイクことしか考えられなくなってしまっていた。

 だめなのに。だめなのに。しかしそう思えば思うほど、絶頂を意識した体は真逆の方へと動く。

「わ、初めましてね瀬川君。順平がお世話になってまーす!順平、お菓子とか飲み物ある?お母さん持ってこようか?」
「……小崎?」

 瀬川が返事をしない俺を見下ろして、……ギョッとした顔をした。

 あ、だめ。もうむり、がまん、できない。イク…ッ。

 震える半開きの口から「ぁ、」と吐息のような喘ぎ声が漏れて、それだけで全てを察知した瀬川が咄嗟に俺の口を塞いだ。
 それが引き金になったみたいに、直後、凄まじい絶頂感が全身を襲う。

「~~~ッッ!!……っ!!……っ~~、ぅ…!!!」
「……ぐ……っ…!!」

 ビクンッ!!ビクッ!ガクガク…ッ!!
 瀬川は激しく痙攣し出した俺の身体を残った片腕と胴体で覆い被さるように押さえ込んで、ベッドの軋みを最小限に抑えようとする。
 もう止められなかった。全部気持ちが良くって、自分の身体が全くの別物になってしまったみたいに言う事を聞かない。これは一瞬で終わるような普通の絶頂じゃなかった。初めて経験する狂おしいほどの快感にぎゅーーっと中を締め付けて、それに瀬川はぐぅっ!!と怒ったみたいに眉を寄せ、強く歯を食いしばる。

 俺を気持ち良くさせる怒張の血管の形まで分かりそうなくらいに中が勝手に蠢いて、大きく傘の張ったイケメンなカリが更に肉に食い込み、またイッた。瀬川の焦りを表すみたいに口と身体を押さえ付ける力が強くなる。俺はその圧迫感にもゾクゾクと感じて、絶頂を重ねた。

 今、だめだ。全部だめ、全部気持ちい、全部イク。

 2人して返事が無いことを変に思ったのか、母が重ねて問う。

「ちょっと?順平?」

 コンコン、とノックの音が響き、瀬川がビクリと反応して俺はその刺激でまたイッた。…いや、もうこれが新しい絶頂なのか前の続きなのか分からない。理解できるのは、ただそこに大きな快感があるということだけだ。

「……っあります!大丈夫です!…こさっ…順平君、今、お菓子食べてて、口塞がってるので!」
「……そう?食べ過ぎたらダメだからね順平!ねえ瀬川君、もし良かったら晩御飯一緒にどうかな?」
「う、れしいです。……是非」
「はーい!気合い入るわー!親御さんに連絡しておいてね!」
「はい…っ」

 たん、たん…、と階段を下りていく音が小さくなって、そこからさらに数秒経った後。漸く大きな息を吐いた瀬川は、俺の拘束を解いた。

「………はーーっ…。…小崎、……お母さんの前で女の子イキしちゃったの…?」
「……ぁ、……っ、」

 今イッているのかそうでないのかすらもよく分からない。どこもかしこもビクンビクンと痙攣していないところがなくて、イキ過ぎて身体中に血が巡ったせいで全身が茹だったタコみたく真っ赤に染まっていた。生理的な涙で濡れた目は虚で、口周りは涎でベトベト。呂律も回らず、まともに意味のある言葉を発することも出来ない。
 精液が出ていたかいないかは自分でもはっきり認識していなかったが、今自分の陰茎がレースのパンツから飛び出しお漏らしみたいな量の先走りを垂らしながらも未だ固く張り詰めているのを見ると、ずっと射精しないでイッていたのかもしれない。
 女の子イキ。瀬川の言ったように、俺は確かに女の子のような射精を伴わない絶頂をしていたらしい。
 ……すごかった。今までで1番、怖いくらいにおっきいイキ方だった。瀬川が口を塞いでくれていないと、今頃俺は色んな意味で死んでいたかもしれない。
 咄嗟の英断に礼を言おうとして、しかしまだ整いきっていない快楽の波に息を乱していると、

「危なかったね…」と安堵の溜息を吐いた瀬川が抽挿を再開させようと動き出した。

 流石にもう終わりかと思っていた俺はその行動に驚くと同時、ちっとも鈍くなどなっていない後孔に感じて、首と背を大きく仰け反らせる。

 あ、またイッ、く…っ!!

「…はぁ、締め付けすごくて、俺もイキそうだった…っ」
「……~~っ!…まっ、ぉ、かさん、……っしたに、」
「大きい声出さなかったらバレないよ……っ」

 そう言って瀬川は、興奮のままに腰を揺すり続けた。
 今まで気になりもしていなかった、ぎっ、ぎっ、というベッドが軋む音が嫌に耳について、ひと突きごとにビクンッ!と腰を痙攣させながらも何とかやめさせようと、俺は瀬川の服を掴んだ。……震え混じりのか弱い指では引っ掛けたと言った方が正しいかもしれない。

「…っぁ!………っ、ゃ、…おと……っ…!」
「………俺まだ一回もイッてないんだけどな…。……メイドさんみたいにお願いしてみて?」

 興奮にギラついた目がこちらを見る。
 メイドさんみたいなお願い……が何かはよく分からないが、それをしなかったら、もしくは間違ったやり方でしてしまったら、ベッドの音なんて気にせずにガツガツ責められて、一瞬で何をしてるかバレるくらいの大きさで叫ぶみたいに喘いじゃって……。
 腰を起点として背筋を走った痺れは、恐怖によるものだと思いたい。

 バレるのは、だめだ。ちゃんとお願いしなきゃ。

「……っ、……っご、しゅじんさまっ、…は、激しくしたら、バレて、……っもう、できなくなっちゃうから、…はぁっ、…ん、ゆっ、くり、してください…っ」

 中の怒張がびくん、と震えた気がした。瀬川が舌なめずりをしながら、上から下までじっくりと俺を見る。

「……っ、うん。…もう出来ないのは困るね…。……ああもう、ここで理性飛ばさない俺に感謝してよ小崎」
「……っ、」

 ずっちゅ、ずっちゅ…っ

 瀬川はなるべく音を抑えるようにゆっくりと腰を動かし始めたが、その肉棒の暴力性は少したりとも変わっていなかった。抜かれた瞬間にぎゅっ、と閉じる肉をもう一度容赦なく割り開き、通るついでという風にぷくりと肥大した前立腺をへこませて、更に奥まった場所を亀頭でこれ以上無い程みっちり広げたかと思えばグリグリ押し付けられる。俺はまたすぐイキそうになるのを、強く歯を食いしばって耐えた。

「…はっ……んンッ!………だめっ、…もっと、ゆっくり…っ!」
「え、……もっと?いや、これ以上は流石に…。小崎の腰が動いちゃってるからじゃない?」
「ひゔ……っ!!……っ!」

 両手で腰を固定されて、再度ずっちゅん!と奥まで肉棒を挿し込まれた。今までと違う角度で埋まり、腰を揺らして刺激を逃がすことも出来ないそれは快感へと直結する。どうやらイキ癖が付いてしまったらしい俺は、予期せぬ責めで軽率に精を放った。咄嗟に両手で顔ごと口を覆ったのは、命を守る行動にも等しい反応だ。喉の奥で潰れた悲鳴が、顏に食い込んだ指から少しだけ漏れていた。

 気持ち良すぎて、我慢できない……っ!

「っ~~!!……ふ…っ、…っ!!」
「……っ、ゆっくりの方が感じる?」
「…はーッ!ハッ、フーッ!……っ、せが、わ…、」
「ん?」

「こえ、…でる…っ!…こえでるぅ゛……っ!……はぁっ、ふ、ふさいでっ、…さっき、みたいに、くち、ふさ、いで…っあ!ひっ、」
「……っ、」

 次の瞬間、俺の口を塞いだのは瀬川の口だった。噛み付くようなキスですぐさま舌を引っ張り出されて、いやらしく蹂躙される。同時に律動が再開され、響くはずの嬌声は瀬川の口内に吸い込まれていった。

「んん…っ!!……っ!!ん…っ…っ~~!!!」
「……んっ、ふ…っ」

 後頭部に手を添えられて、唇同士を深く押し付け合うように俺達は必死にキスをする。もっと密着したくなって、俺は瀬川の背に手を伸ばし服をぎゅっ、と掴んだ。重なった心臓は、どくんどくんと2人分の速い鼓動を合わせて更に速度を増す。
 上も、下も、真ん中も繋がって一つになれている感覚がぐわっ、と興奮を押し上げて、俺はまたイッた。

「ん゛~~っ、……ン゛ッ!!…~~っ!!」
「………っ、はぁっ、…ごめん、ちょっとだけ。…小崎がイッてるナカで扱けばすぐイけると思うから…っ」
「ぁ゛……んんん゛っ!!…っ!!……ん゛、っ~~!!……っ、」
「……ンッ……っ!!」

 瀬川は覆いかぶさるように俺を力強く抱きしめてから、ギッ!ギッ!と激しくベッドを軋ませて、イキたてほやほやで激しく痙攣する中を無理矢理じゅっぼじゅっぼと掻き回した。急な高速ピストンに耐性などあるはずもない。
 ずっと、イッてる…っ!!
 もう終わりや始まりすら分からなくて、絶頂とその直前を永遠に繰り返しているような感覚があった。頭は霞がかったように白くぼんやりとしている。イキ過ぎて苦しいのに、身体は全部瀬川に固定されていて逃げられもしなくて、出来るのは彼の腕の中で激しく腰を振り乱して絶頂し続けることだけだ。

 しかし無限に続くかに思われたそれは、瀬川の「ちょっとだけ」の宣言通り短時間で終わりを迎えた。数度最奥をどちゅっ!どちゅっ!と猛々しく雄の先端で抉られて、眼前に火花が散るような大きな絶頂に、中がグネグネと淫らに蠢いて精を強請るように吸い付く。瀬川はそれを全て振り切り、ぞりぞりぞりっ!と腸壁全部を激しい摩擦で擦って引き抜いてから、再び俺がイクのとほぼ同時にメイド服のスカートの中で射精した。
 ビューッ!ビュルっ!ピュ…ッ!
 黒地の生地に、派手な量の白濁が撒き散らされる。

 俺達は両方ともはあはあっ、と息を乱しながら、絶頂後の余韻を分け合うように口をつけた。今度のキスには先ほどまでの荒々しさはなく、舌の先端だけをくっつけて、ちゅ、ちゅ、と何度も触れ合う戯れのような優しいキスだ。


「……はぁっ、……ねえ小崎、音立てないようにゆっくりするし口も塞ぐから、次ゴム付きで中に出させて…」
「………、……だめ…」
「クッソ……ッ」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺をハーレムに組み込むな!!!!〜モテモテハーレムの勇者様が平凡ゴリラの俺に惚れているとか冗談だろ?〜

嶋紀之/サークル「黒薔薇。」
BL
無自覚モテモテ勇者×平凡地味顔ゴリラ系男子の、コメディー要素強めなラブコメBLのつもり。 勇者ユウリと共に旅する仲間の一人である青年、アレクには悩みがあった。それは自分を除くパーティーメンバーが勇者にベタ惚れかつ、鈍感な勇者がさっぱりそれに気づいていないことだ。イケメン勇者が女の子にチヤホヤされているさまは、相手がイケメンすぎて嫉妬の対象でこそないものの、モテない男子にとっては目に毒なのである。 しかしある日、アレクはユウリに二人きりで呼び出され、告白されてしまい……!? たまには健全な全年齢向けBLを書いてみたくてできた話です。一応、付き合い出す前の両片思いカップルコメディー仕立て……のつもり。他の仲間たちが勇者に言い寄る描写があります。

平凡腐男子なのに美形幼馴染に告白された

うた
BL
平凡受けが地雷な平凡腐男子が美形幼馴染に告白され、地雷と解釈違いに苦悩する話。 ※作中で平凡受けが地雷だと散々書いていますが、作者本人は美形×平凡をこよなく愛しています。ご安心ください。 ※pixivにも投稿しています

失恋したのに離してくれないから友達卒業式をすることになった人たちの話

雷尾
BL
攻のトラウマ描写あります。高校生たちのお話。 主人公(受) 園山 翔(そのやまかける) 攻 城島 涼(きじまりょう) 攻の恋人 高梨 詩(たかなしうた)

島恋ちゅーずわんっ!

椿
BL
【あらすじ】 島在住高校生主人公と、島留学都会っ子転校生が最悪の出会いを経て同居(ホームステイ)するところから始まるラブコメ。かつ、高校に上がってから主人公と疎遠になったタイプの幼馴染男女が、ポッと出の転校生に慌てふためいたり嫉妬したり主人公の首を絞めたりキスを迫ったりする話です。 告白に命かけました🌼 夏だからという理由で、「島BL」「幼馴染」「転校生」の要素を入れた小説を書くゆるゆる企画によって出来上がった頭の悪い作品です。 強気なツンデレ美少女がガッツリ絡んできます。あらゆる方の地雷に配慮しておりませんので、苦手な方は×。 女の子苦手だけど読んでみたい、という方は、まずは出て来た女の子全員を男の娘だと思えるような洗脳教育を自身に施してから来てください。 ギャルゲーの主人公みたいな気の多い鈍感タラシ主人公(受け)がいます。 【攻め(ヒロイン)ズ】 チャラ男系イケメン転校生 ツンデレ美少女幼馴染 硬派イケメン幼馴染

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

毒/同級生×同級生/オメガバース(α×β)

ハタセ
BL
βに強い執着を向けるαと、そんなαから「俺はお前の運命にはなれない」と言って逃げようとするβのオメガバースのお話です。

それはきっと、気の迷い。

葉津緒
BL
王道転入生に親友扱いされている、気弱な平凡脇役くんが主人公。嫌われ後、総狙われ? 主人公→睦実(ムツミ) 王道転入生→珠紀(タマキ) 全寮制王道学園/美形×平凡/コメディ?

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

処理中です...