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二章 災い転じて同居が始まる
災い転じて同居が始まる【8】
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約束の時間の五分前に迎えに来てくれた諏訪くんに、敦子は「志乃をよろしくね」とまるで母親のように言い、彼は真剣な顔つきで頷いていた。
その光景を見ていた私は、少しだけくすぐったいよな面映ゆいような気持ちになりつつも、こうして思いやってくれる友人がいて幸せだと思った。
諏訪くんは、レンタルスペースまで車を走らせ、荷物を積み込んでくれた。
「あの……ごめんね。こんな高そうな車に、いっぱい荷物積ませちゃって……」
車種はよくわからないけれど、スタイリッシュなブラックの車体は見るからに高級そうだし、左ハンドルに加えて車内のデザインも洗練されている。
いわゆるスポーツカータイプらしい車には、どう考えてもこんな大荷物は似合わない。
「そんなこと気にしなくていいよ。それより、香月って車に興味ない?」
「うーん、特には……。自分が運転するなら軽がいいし、そうじゃなくても乗れればなんでもいいかなって。地元と違ってこっちは交通量が多くて怖いし……」
前を向いたままクスッと笑った彼が、「そっか」と相槌を打つ。
その後も他愛のない話をしていると、諏訪くんが重厚な門構えのマンションの地下駐車場に車を停めた。
「あの、諏訪くん……ここが寮なの?」
「うん。荷物は一気に運べないから、あとでまた取りに来よう」
怪訝に思いつつも、彼があまりにも普通に答えたからそれ以上は尋ねられない。
「ひとまず、最低限の荷物だけ持って降りて」
地下にある駐車場に車を停めた諏訪くんは、助手席に回ってくるとドアを開けてくれた。周囲を見渡せば、高級そうな車がずらりと並んでいる。
疑問がいっそう大きくなり、少しだけ不安に思いつつも彼についていくと、エレベーターに促された。
港区の一角にあるこのマンションは四階建てのようで、諏訪くんがモニターの傍にカードキーをかざせば『Ⅳ』のパネルが光る。すぐに四階に着き、ドアが開いた。
エレベーターを中心に左右に廊下が広がっていて、両方の突き当りにドアが一枚ずつある。彼は私のキャリーバッグを持ち、「こっちだよ」と左に向かって歩き出した。
慌てて後を追いながらも、違和感が大きくなっていく。
部屋の前で足を止めた諏訪くんは、センサーにさっきのカードキーをかざし、ドアを開けて微笑んだ。
「どうぞ」
「あの、ここって……」
「ほら、早く」
疑問を紡ぐ暇もなく急かされ、私は広い玄関に尻込みしそうになりながらも「お邪魔します」と小さく言い、脱いだパンプスを揃える。
最奥のドアまで行くように告げられ、ゆとりのある廊下を進んだ。後ろから伸びてきた手がドアを開けると、モデルルームのようなリビングが視界に飛び込んできた。
「ここ、寮じゃない、よね……?」
確信を持ちながらも戸惑っていた私に、彼がにっこりと笑みを湛える。
その光景を見ていた私は、少しだけくすぐったいよな面映ゆいような気持ちになりつつも、こうして思いやってくれる友人がいて幸せだと思った。
諏訪くんは、レンタルスペースまで車を走らせ、荷物を積み込んでくれた。
「あの……ごめんね。こんな高そうな車に、いっぱい荷物積ませちゃって……」
車種はよくわからないけれど、スタイリッシュなブラックの車体は見るからに高級そうだし、左ハンドルに加えて車内のデザインも洗練されている。
いわゆるスポーツカータイプらしい車には、どう考えてもこんな大荷物は似合わない。
「そんなこと気にしなくていいよ。それより、香月って車に興味ない?」
「うーん、特には……。自分が運転するなら軽がいいし、そうじゃなくても乗れればなんでもいいかなって。地元と違ってこっちは交通量が多くて怖いし……」
前を向いたままクスッと笑った彼が、「そっか」と相槌を打つ。
その後も他愛のない話をしていると、諏訪くんが重厚な門構えのマンションの地下駐車場に車を停めた。
「あの、諏訪くん……ここが寮なの?」
「うん。荷物は一気に運べないから、あとでまた取りに来よう」
怪訝に思いつつも、彼があまりにも普通に答えたからそれ以上は尋ねられない。
「ひとまず、最低限の荷物だけ持って降りて」
地下にある駐車場に車を停めた諏訪くんは、助手席に回ってくるとドアを開けてくれた。周囲を見渡せば、高級そうな車がずらりと並んでいる。
疑問がいっそう大きくなり、少しだけ不安に思いつつも彼についていくと、エレベーターに促された。
港区の一角にあるこのマンションは四階建てのようで、諏訪くんがモニターの傍にカードキーをかざせば『Ⅳ』のパネルが光る。すぐに四階に着き、ドアが開いた。
エレベーターを中心に左右に廊下が広がっていて、両方の突き当りにドアが一枚ずつある。彼は私のキャリーバッグを持ち、「こっちだよ」と左に向かって歩き出した。
慌てて後を追いながらも、違和感が大きくなっていく。
部屋の前で足を止めた諏訪くんは、センサーにさっきのカードキーをかざし、ドアを開けて微笑んだ。
「どうぞ」
「あの、ここって……」
「ほら、早く」
疑問を紡ぐ暇もなく急かされ、私は広い玄関に尻込みしそうになりながらも「お邪魔します」と小さく言い、脱いだパンプスを揃える。
最奥のドアまで行くように告げられ、ゆとりのある廊下を進んだ。後ろから伸びてきた手がドアを開けると、モデルルームのようなリビングが視界に飛び込んできた。
「ここ、寮じゃない、よね……?」
確信を持ちながらも戸惑っていた私に、彼がにっこりと笑みを湛える。
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