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江ノ島 de らんでぶ~
第七話
しおりを挟む下船すると、午前中来る時に歩いてきた、すばな通りを戻るように言われる。
(また江ノ電に乗るの?)
(いや、今度はモノレール)
湘南江の島駅からモノレールで終点の大船駅に行き、そこからシャトルバスに乗って、陽太が入院している病院へ向かうという。
灯里はだんだん緊張してきた。
これから陽太の本当のからだと対面する。
灯里はパンダである陽太しか知らない。
六年前の葬儀のときだって、母親に連れられて来た小柄な男の子、という印象しか記憶に残っていないのだ。パンダ姿の陽太しか見てきていないので、まったくもって想像がつかなかった。
病院に到着するとナースステーションで面会希望であることを伝え、来訪者名簿に灯里の名前を記入する。名簿のすぐ上の欄には「沢城希美」と記入されており、
(良かった、かあちゃん来てる)
と、陽太がつぶやいた。
廊下の一番奥にある一人部屋の病室のドアをノックすると、中から「どうぞ」と返事があった。灯里は緊張が高まるなか、ゆっくりと引き戸を開けて中に入る。
ベッドのそばに座っていた女性が、ドアの方を振り向いて、灯里に気がつくと、
「あなたは……」
と、驚きの表情を見せ、すぐに立ち上がってきた。
灯里は背筋を伸ばすと、緊張しているのが伝わらないよう、なるべく穏やかな口調で
「お久しぶりです。私、宮下灯里です」
と頭を下げた。
「あの、どうして、ここに?」
陽太の母親、沢城希美は、いったい何故、灯里がここに来たのかどうやってこの場所を知ったのかなど疑問が溢れたようで、混乱している様子だった。
灯里は、ベッドで眠っている、陽太と思われる少年の顔をちらりと盗み見する。もう少年ではなく、その容姿は青年の顔つきをしていた。
体つきは細く、華奢な感じだが手足が長い。あれから背が伸びたのだろう。
顔は……眠って目を瞑っているのでよくわからないが父に似ただんご鼻が特徴的で、男の子にしては可愛らしい顔の造りをしている。髪も伸びたのであろう、巻き毛のようにくるっとした癖っ毛は肩につくくらいの長さがあった。
灯里は陽太からあらかじめ頼まれ、バッグから外しておいたキーホルダーのパンダを手のひらに乗せると、希美の前に差し出した。
「これは……陽太の?」
「あの、とても信じられないお話ではあるのですが……」
自分の息子が体を離れ、精神だか魂だかがパンダに乗り移り、しかもぬいぐるみのキーホルダーになってしまっている、だなんて。
にわかには信じられないだろうなと思いつつ、灯里が説明しようとしたその瞬間。
陽太が大きなパンダ姿になり突然現れた。
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