パンダ☆らんでぶ～

プロローグ

  三十歳を迎えた男の人は、ある条件を満たすと魔法使いになれるらしい。そんな風なことを漫画やアニメで見聞きした。

  じゃあ、女性である私にだって、もしかしたら魔女になることができるかもしれない。

なんてね。

  でも、そんなふうに考えれば、年を重ねることも悪くないように思えてくる。

  子どもの頃は魔女になりたかった。

  テレビに出てくる魔女っ子や妖精たちが、自分に近い存在だと信じて疑いもしなかったあの頃。

  当時住んでいた団地には、階段途中の踊り場にまだ落下防止の柵がなく、小学生だった私でも簡単によじ登ることができた。

  四階と五階の間にある、踊り場の手摺によじ登って座り、ぶらぶらさせた足にスースーと風が当たるのを楽しんでいた。

  下を覗のぞけば広場の公園で、追いかけっこを
している友達の頭のてっぺんがよく見えて、ここから今、飛び降りても無事に着地出来るか、風のようにふわりと空を飛べるイメージしか浮かばなかった。

  根拠のない万能感。

  そんな風に無邪気に空想の世界を楽しんでいられたあの頃の私は、大人になった今の私を見て、一体何を思うだろう？