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ハシビロコウのねがいごと
*1
しおりを挟む虹色の流れ星。
そのカケラを見つけると
ひとつだけ願いがかなうという。
今夜は年に一度の流星群。
たくさんの星が
いくすじもの線を描きながら、
つーっと流れていく。
まるで夜空が涙をこぼしているよう。
ハシビロコウのコウタは、
小さな両翼を自分の前で
重ね合わせると静かに祈りをささげた。
お母さんが早く元気になりますように。
コウタの母親が病で倒れたのは
三カ月前。
近頃はほとんどの時間を
自室のベッドで寝て過ごしている。
体調がいいときは、
コウタに絵本を読み聞かせ、
笑顔を見せるときもあるけれど、
もう以前のように好きな料理を
作ることはできなくなった。
父は仕事が忙しいうえに料理は苦手。
母に代わり、コウタが自ら
台所に立つようになった。
コウタは料理上手な母の手ほどきを
小さな頃から受けてきた。
いろんな食材を、
切ったり、焼いたり、煮込んだり。
みるみるうちに、
おいしいご馳走が目の前に現れる。
すごいなー、魔法みたい。
コウタがはしゃいで抱きつくと、
そうね。
おいしくなあれ、
おいしくなあれ、って
心の中で魔法の呪文を
つぶやくことがポイントよ。
母はコウタの頭をやさしくなでると、
にっこり笑った。
もっとお母さんに
料理を教えてもらいたい。
もっとお母さんと話がしたい。
もっとお母さんに笑ってほしい。
翌日、朝早くに目を覚ましたコウタは、
虹色の流れ星のカケラを
探しに行くことにした。
もしかしたら森の中に
落ちているかもしれない。
カケラを見つけたら、
お母さんの病気が治るように、
お願いをしよう。
コウタは近くの森へ向かうことにした。
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