虹色の流れ星

藤沢なお

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黒猫のねがいごと

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湖のほとりに着いたとき、

「おっきいなあ―」

クロスケは、
目をまあるく見開いてつぶやいた。

周りをぐるりと森に囲まれた湖は、
しんと静まり返り、遠くで聞こえる
鳥のさえずりだけが響いている。

「湖のどの辺に落としたの?」

クロスケがきいてみると、

「ちょうど、真ん中あたりよ」

青い小鳥が羽を広げて指し示す。

「落としてすぐに
  上からのぞいてみたんだけれど
  青と水色のカケラでしょ。
  水の中に入っちゃったらもう、
  どこにあるのか
  ぜんぜん見えなくなっちゃったの……」

水色の小鳥も無言のままうなずいた。

この広くて大きい湖の中から、
一体どうやって落としたカケラを
見つければいいのだろう?

やはりもう一度、森に戻り、
同じ色の別のカケラを
探したほうがいいのだろうか。

クロスケがとほうにくれそうになったとき、

「あなたたち、ここで何をしているの?」

どこからともなく白猫があらわれた。

年の頃はクロスケと同じくらいのようだ。

「えっと……ぼくたち、
  流れ星のカケラを探してるんだ」

「ふーん、色は?
  何色のカケラを探しているの?」

「私たちは青と水色の
  カケラを探しているの」

小鳥たちが声をそろえて言うと、

「じゃあ、あなたは?」

白猫がクロスケにきいた。

「えっと、ぼくは……えーと……」

そこでクロスケは、とっさに青と水色、
と答えそうになったが、
自分が何色のカケラを
探していたのか考えてみた。

蝶たちが探しているのは黄色とオレンジ。
うさぎさんがなくしたのは赤と緑。
小鳥たちが落としたのは青と水色。

ぼくは……そうだ!

「ぼくはね、虹色!
  虹色のカケラを探しているんだ」

クロスケがそう答えると、
白猫はくりっとした大きな目を、
細めてほほえんだ。

「虹色のカケラ?  あら、それなら
  あそこの木の下にあったわよ」

「え!?」

クロスケは驚いて、
白猫が指差したほうを振り返り目をこらす。

ついさっき抜け出た森のすぐ手前に、
まだ若い木が一本立っている。
そのすぐ下で、
きらきらっと光るものが見えていた。

クロスケが急いで駆け寄ると……。

「うわぁ~」

そこには虹色に輝く、星のカケラがあった。

「きれいだなあ」

カケラを手に取り、太陽に透かしてみる。
せんさいなガラス細工のよう。

雨のしずくのような形の中に、
まるで虹が閉じ込められているみたい。

太陽の光に透けてできた
地面に映る影にさえ、
七つの色が照らしだされている。

クロスケがうっとり見とれていると、

「それで、あなたは何をお願いするの?」

白猫がきいてきた。

「え?」

「何か願いごとがあるから、
  虹色のカケラを探してたんでしょ?
  それなら今ここで、
  お願いしてみればいいんじゃない?」

そう白猫に言われて思い出す。

そうだった。
ぼくにはひとつだけ、
かなえたいことがあったんだ。
クロスケは手のひらの上で輝く
虹色のカケラをみつめた。

赤にオレンジ、黄色に緑、
水色に青に紫色。
全部で七つ、虹の色。

……あれ?

クロスケはそこで、あることに気がついた。
あれ、これってもしかしたら……。

「さあ早く。あなたの願いを言ってみて」

白猫も、青と水色の小鳥たちも、
クロスケが次に言う言葉を静かに見守った。

「ぼくのおねがいごとはね………」
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