巻き戻り悪女の復讐の首飾り。妹が偽りの聖女なので私が成り代わります!

影津

文字の大きさ
上 下
86 / 88

86.

しおりを挟む
 クリスティーヌは不気味に微笑んでいる。彼女の老婆のような髪は亡霊のように空に向かって逆立っている。今はもう王宮の天井にも穴がぽっかり空いており、断続的にコウモリの魔物が王宮内を飛び回っているありさまだ。騎士ミレーさまは、剣から光の柱を発射させる射撃魔法を覚えていて、ほとんど、彼一人で魔物を撃ち落としている状態だわ。

 日食がさらに進みまるで夜みたいな空が、この国の行く末を嘆いている。王都の広範囲で被害が拡大していく――。

 武者震いのような震えがする。ギロチンがここになくても、ここを乗り越えることができなければ私にとっては最期の日になると直感した。

「あら、お姉さま。震えてらっしゃるの? 怖いのなら部屋を貸してもらって閉じこもってくれてもいいのよ。あ、隠れる部屋なんてあと何室残っているかしらね?」

「隠れるわけないじゃない」

 私はルビーの首飾りを握り締める。ここがはじまりで終わりなの。首飾りの力があれば、どうにかなる。だけど、死んだら巻き戻るなんて危険な力、運任せにはできない。きっとあんな強力な魔法は何度も使えない。今が日食だとしてもね。

 クリスティーヌは自分の首飾りと私の首飾りを見比べる。

「すり替えていることは知っているわ。だけど、そんなものでどうにかなるのかしら? 私たちのお母さまは魔族だったけれど。お母さまはあっけなく死んだわよ? 人間なんかと仲良くしたから。私の血も汚らわしくって嫌になるのよ。この半分の人間の腐った血がね。それを毎日我慢して貴族のふりをするの、ほんっとクソみたいな生き方じゃなくて、なんなのかしら」

「お母さまのことを馬鹿にしないで! お母さまのことだけはあんたに語る資格はないわよ」

「お姉さま、まるで見て来たみたいに言うじゃない。そうよ。私、生まれ落ちてお母さまの手からすぐ離れたわ。だって、あの女、人間の男に惚れこんでたんだものね。私、魔族に馬鹿にされて育てられたのよ? それで嫌になって人間の町にやってきたの。それもこれも、大人になったときに、魔族として認めてもらうために人間の国を陥落させるためにね!」

 半分お父さまの血が入っているにも関わらず、人間になるつもりは一切ないんだわ!

「もう、黙って。あんたの考えそうなことよね! 魔族として認められたいから人間を滅ぼそうっていうのね。そんなことをしても、あんたは半人前のままよ!」

 炎の魔法でクリスティーヌに不意打ちを当てる。

 お母さまの力、真っ赤なオーラを感じる。放った炎はどんな花火よりも美しい。クリスティーヌはすんでのところで水魔法で壁を生成して防いだ。

「ちょっ! お姉さま! 卑怯ですよ!」

「卑怯? 私はあなたが思うほど優しいお姉さまじゃないのよ?」

「こ……この、悪女」

「そんなこと言うの? 半分はあなたに仕立てられたのに。お互い様でしょ?」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている

五色ひわ
恋愛
 ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。  初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

モブで可哀相? いえ、幸せです!

みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。 “あんたはモブで可哀相”。 お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

処理中です...