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 リュカ王子が私をつかんでそのまま着地した。この人、浮遊魔法で着地の衝撃を和らげたわ。だけど、三階から一階まで落とされて、何人かの貴族が負傷している。骨折で済めばいいけど、意識がない人もいる。いや、この人たちははじめから気絶しているのかも。一階にはミレーさまと複数の兵によって討伐されたコウモリの魔物と狼の魔物の死骸が飛散している。私に続いてお父さま、コラリー、フルールも落ちてくる。私にも浮遊魔法が使えるか分からない。

「リュカ王子。彼らをお願い!」

「仕方ないな」

 リュカ王子は一人、また一人と落下する彼らを捕まえる。まるで空中に階段でもあるように飛んでいく。

 リュカ王子が空中で三人をつかんだとき、黒い稲妻が走った。

「お姉さま、死ね!」

 上空にいたクリスティーヌが両手から稲妻を降らす。リュカ王子は素早く着地する。降ってくる稲妻は三人を追うように迫ってくる。だけど、狙いは私。結界魔法、ど、どうやるんだっけ。私、炎しか出せないんだった。

 なんでもいから出すのよ!

 両手をかまえる。お父さまが駆け寄ってくる。待って、どうしてこっちに?

「……えっ……?」

 バリバリバリバリッッッ!

 肉の焦げる臭い。呻くお父さま。お父さまの服が背中から破れている。赤黒い地が熱で蒸発して吹き抜けになった上階へ昇っていく。
 ゴフッ。口から血を吐いたお父さま。

「お父さまああ!」

 クリスティーヌの魔法を背中から受けている。

「ア……ミシア」

 嘘。嘘よ。抱き留めると胸に大きな穴が空いているを感じる。だって、肉ではなくあばら骨の尖った感触がじかに胸に伝わってきたから。熱いお父さま。でも、流す血も全部焼けて吹き飛んでしまう!

 お父さまの顔は真っ赤。後頭部は焦げて真っ黒。顔面にひびが入っていく。

「……愛している。アミシア……アミシア」

 私にすがりついたお父さまの腕は塵になって消えた。私の腕の中で人型だったお父さまが風に崩れた。

「……そんな」

(お前は母さんに似ていない!)

(私にお前は救えん。早く地獄に行ってくれ)

 お父さまのこと、許す。いいえ。許さないわよ。どうして? やりなおせたのに。これからじゃない。これから私、お父さまと新しい生活を楽しみにしていたの。お父さま。こんなお別れの仕方あんまりじゃない? 
 一階の窓は割れ、壁は崩れ外の庭は炎に包まれている。燦燦と輝く太陽が夕闇のように翳《かげ》った。

 日食がはじまった――。

 魔物の咆哮と人の悲鳴も聞こえる。王宮内部だけでは留まらない。

「クリスティーヌ……絶対に許さないわよ」
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