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舞踏会は珍しく昼から開催された。昼から夜にかけて行われる。こんなことはじめてだったわ。やっぱり前回の襲撃で警備が強化されたのね。日中の開催なら魔物が出現しても目視で確認しやすいでしょうし。
「また来てくれて嬉しいよ」
リュカ王子が私目掛けて駆け寄ってきた!
相変わらずリュカ王子に会うためには十五分以上待たされる。と思ったんだけど。クリスティーヌでなくて、私でいいの?
「あの、リュカ王子さま。こんにちは。私の方から挨拶しなければいけませんのに……」
「さあ、ほかの女性たちに見せびらかしてやろう」
「行っておいで」と、お父さまが小さく手を振ってくれた。クリスティーヌはその真横で顔を真っ赤にして怒っている。あら、今頃王子の移り気の早さが分かったの?
王子が私の手を引く。エントランスに入っていない貴族たちをかき分けて王宮内部へ案内された。
「君のことが頭から離れなかった。なんでだろう。今日も会えると分かっていたのに」
「私も陛下にお会いできて光栄です」
そのまま大広間に直進する。早足だから少し汗をかいてしまうわ。
「リュカ王子、こんなに急いではダンスまで体力が持ちませんよ?」
「俺の心配をしてくれるのか? 優しいんだな。おや、今日は黒のドレスに紫のローブか。なかなか大人な雰囲気だな」
「え、ええ。そう言って下さると嬉しいですわ。お父さまに頂いた魔導士のローブです」
「ほう。道理で妖艶。生足の一つでも出して俺に魔法をかけてくれ」
「お、王子? 一体どんな想像をしてらっしゃるんですか!」
「とにかく、ダンスを楽しみにしているよ」
ほ、ほんとに油断も隙もない人ね。私を困らせたいってどれだけよ?
「私は演奏しないといけませんので」
「ああ、そうだったな。……っち」
舌打ち!? 今、王子さま舌打ちしなかった? なんでよ。あなたに言われて演奏してあげるんじゃない。ダンスはおまけよ。お・ま・け。ほんとにもう。
クリスティーヌが王子と踊る。ほらね、私が演奏してあげないと、あなたはクリスティーヌとも踊れないのよ?
あ、クリスティーヌが踊りながらこっちに「勝利!」みたいな顔を見せてくる。あらあら、あなたいっしょに踊ってるリュカ王子の顔を見てあげなさいよ。王子、嫌々踊っていることに気づかないの? 口は堅く結んで、目は閉じちゃってるじゃない。
ほんと、二人とも露骨なんだから。
大広間に昼間の太陽が照りつける。異例の日中の舞踏会。これから、あの太陽が欠けていくのね。日食。私は首にかけてきたルビーの首飾りを握り締める。クリスティーヌはさっき、この首飾りを目にしたはずなのに驚きもしなかった。あの子も同じルビーの首飾りをつけている。偽物だって分かってるんでしょう? なのに、どうしてつけてきたの?
同じ首飾りをつけて仲がいいのねと貴婦人たちから声をかけられた。
「ええ。私の誕生石ですの」
「あら、じゃあ聖女さまはあなたの宝石を真似しているの? 変わっているわね」
「ほんとにそうですよねー」わざと聞こえるように言ってやった。クリスティーヌは、踊りながら睨んできた。
お互いに今日が最終決戦日だと心に決めているんだ。間違いなく仕掛けてくる。いいわ、返り討ちにしてあげる。
「また来てくれて嬉しいよ」
リュカ王子が私目掛けて駆け寄ってきた!
相変わらずリュカ王子に会うためには十五分以上待たされる。と思ったんだけど。クリスティーヌでなくて、私でいいの?
「あの、リュカ王子さま。こんにちは。私の方から挨拶しなければいけませんのに……」
「さあ、ほかの女性たちに見せびらかしてやろう」
「行っておいで」と、お父さまが小さく手を振ってくれた。クリスティーヌはその真横で顔を真っ赤にして怒っている。あら、今頃王子の移り気の早さが分かったの?
王子が私の手を引く。エントランスに入っていない貴族たちをかき分けて王宮内部へ案内された。
「君のことが頭から離れなかった。なんでだろう。今日も会えると分かっていたのに」
「私も陛下にお会いできて光栄です」
そのまま大広間に直進する。早足だから少し汗をかいてしまうわ。
「リュカ王子、こんなに急いではダンスまで体力が持ちませんよ?」
「俺の心配をしてくれるのか? 優しいんだな。おや、今日は黒のドレスに紫のローブか。なかなか大人な雰囲気だな」
「え、ええ。そう言って下さると嬉しいですわ。お父さまに頂いた魔導士のローブです」
「ほう。道理で妖艶。生足の一つでも出して俺に魔法をかけてくれ」
「お、王子? 一体どんな想像をしてらっしゃるんですか!」
「とにかく、ダンスを楽しみにしているよ」
ほ、ほんとに油断も隙もない人ね。私を困らせたいってどれだけよ?
「私は演奏しないといけませんので」
「ああ、そうだったな。……っち」
舌打ち!? 今、王子さま舌打ちしなかった? なんでよ。あなたに言われて演奏してあげるんじゃない。ダンスはおまけよ。お・ま・け。ほんとにもう。
クリスティーヌが王子と踊る。ほらね、私が演奏してあげないと、あなたはクリスティーヌとも踊れないのよ?
あ、クリスティーヌが踊りながらこっちに「勝利!」みたいな顔を見せてくる。あらあら、あなたいっしょに踊ってるリュカ王子の顔を見てあげなさいよ。王子、嫌々踊っていることに気づかないの? 口は堅く結んで、目は閉じちゃってるじゃない。
ほんと、二人とも露骨なんだから。
大広間に昼間の太陽が照りつける。異例の日中の舞踏会。これから、あの太陽が欠けていくのね。日食。私は首にかけてきたルビーの首飾りを握り締める。クリスティーヌはさっき、この首飾りを目にしたはずなのに驚きもしなかった。あの子も同じルビーの首飾りをつけている。偽物だって分かってるんでしょう? なのに、どうしてつけてきたの?
同じ首飾りをつけて仲がいいのねと貴婦人たちから声をかけられた。
「ええ。私の誕生石ですの」
「あら、じゃあ聖女さまはあなたの宝石を真似しているの? 変わっているわね」
「ほんとにそうですよねー」わざと聞こえるように言ってやった。クリスティーヌは、踊りながら睨んできた。
お互いに今日が最終決戦日だと心に決めているんだ。間違いなく仕掛けてくる。いいわ、返り討ちにしてあげる。
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