78 / 88
78.
しおりを挟む
舞踏会は珍しく昼から開催された。昼から夜にかけて行われる。こんなことはじめてだったわ。やっぱり前回の襲撃で警備が強化されたのね。日中の開催なら魔物が出現しても目視で確認しやすいでしょうし。
「また来てくれて嬉しいよ」
リュカ王子が私目掛けて駆け寄ってきた!
相変わらずリュカ王子に会うためには十五分以上待たされる。と思ったんだけど。クリスティーヌでなくて、私でいいの?
「あの、リュカ王子さま。こんにちは。私の方から挨拶しなければいけませんのに……」
「さあ、ほかの女性たちに見せびらかしてやろう」
「行っておいで」と、お父さまが小さく手を振ってくれた。クリスティーヌはその真横で顔を真っ赤にして怒っている。あら、今頃王子の移り気の早さが分かったの?
王子が私の手を引く。エントランスに入っていない貴族たちをかき分けて王宮内部へ案内された。
「君のことが頭から離れなかった。なんでだろう。今日も会えると分かっていたのに」
「私も陛下にお会いできて光栄です」
そのまま大広間に直進する。早足だから少し汗をかいてしまうわ。
「リュカ王子、こんなに急いではダンスまで体力が持ちませんよ?」
「俺の心配をしてくれるのか? 優しいんだな。おや、今日は黒のドレスに紫のローブか。なかなか大人な雰囲気だな」
「え、ええ。そう言って下さると嬉しいですわ。お父さまに頂いた魔導士のローブです」
「ほう。道理で妖艶。生足の一つでも出して俺に魔法をかけてくれ」
「お、王子? 一体どんな想像をしてらっしゃるんですか!」
「とにかく、ダンスを楽しみにしているよ」
ほ、ほんとに油断も隙もない人ね。私を困らせたいってどれだけよ?
「私は演奏しないといけませんので」
「ああ、そうだったな。……っち」
舌打ち!? 今、王子さま舌打ちしなかった? なんでよ。あなたに言われて演奏してあげるんじゃない。ダンスはおまけよ。お・ま・け。ほんとにもう。
クリスティーヌが王子と踊る。ほらね、私が演奏してあげないと、あなたはクリスティーヌとも踊れないのよ?
あ、クリスティーヌが踊りながらこっちに「勝利!」みたいな顔を見せてくる。あらあら、あなたいっしょに踊ってるリュカ王子の顔を見てあげなさいよ。王子、嫌々踊っていることに気づかないの? 口は堅く結んで、目は閉じちゃってるじゃない。
ほんと、二人とも露骨なんだから。
大広間に昼間の太陽が照りつける。異例の日中の舞踏会。これから、あの太陽が欠けていくのね。日食。私は首にかけてきたルビーの首飾りを握り締める。クリスティーヌはさっき、この首飾りを目にしたはずなのに驚きもしなかった。あの子も同じルビーの首飾りをつけている。偽物だって分かってるんでしょう? なのに、どうしてつけてきたの?
同じ首飾りをつけて仲がいいのねと貴婦人たちから声をかけられた。
「ええ。私の誕生石ですの」
「あら、じゃあ聖女さまはあなたの宝石を真似しているの? 変わっているわね」
「ほんとにそうですよねー」わざと聞こえるように言ってやった。クリスティーヌは、踊りながら睨んできた。
お互いに今日が最終決戦日だと心に決めているんだ。間違いなく仕掛けてくる。いいわ、返り討ちにしてあげる。
「また来てくれて嬉しいよ」
リュカ王子が私目掛けて駆け寄ってきた!
相変わらずリュカ王子に会うためには十五分以上待たされる。と思ったんだけど。クリスティーヌでなくて、私でいいの?
「あの、リュカ王子さま。こんにちは。私の方から挨拶しなければいけませんのに……」
「さあ、ほかの女性たちに見せびらかしてやろう」
「行っておいで」と、お父さまが小さく手を振ってくれた。クリスティーヌはその真横で顔を真っ赤にして怒っている。あら、今頃王子の移り気の早さが分かったの?
王子が私の手を引く。エントランスに入っていない貴族たちをかき分けて王宮内部へ案内された。
「君のことが頭から離れなかった。なんでだろう。今日も会えると分かっていたのに」
「私も陛下にお会いできて光栄です」
そのまま大広間に直進する。早足だから少し汗をかいてしまうわ。
「リュカ王子、こんなに急いではダンスまで体力が持ちませんよ?」
「俺の心配をしてくれるのか? 優しいんだな。おや、今日は黒のドレスに紫のローブか。なかなか大人な雰囲気だな」
「え、ええ。そう言って下さると嬉しいですわ。お父さまに頂いた魔導士のローブです」
「ほう。道理で妖艶。生足の一つでも出して俺に魔法をかけてくれ」
「お、王子? 一体どんな想像をしてらっしゃるんですか!」
「とにかく、ダンスを楽しみにしているよ」
ほ、ほんとに油断も隙もない人ね。私を困らせたいってどれだけよ?
「私は演奏しないといけませんので」
「ああ、そうだったな。……っち」
舌打ち!? 今、王子さま舌打ちしなかった? なんでよ。あなたに言われて演奏してあげるんじゃない。ダンスはおまけよ。お・ま・け。ほんとにもう。
クリスティーヌが王子と踊る。ほらね、私が演奏してあげないと、あなたはクリスティーヌとも踊れないのよ?
あ、クリスティーヌが踊りながらこっちに「勝利!」みたいな顔を見せてくる。あらあら、あなたいっしょに踊ってるリュカ王子の顔を見てあげなさいよ。王子、嫌々踊っていることに気づかないの? 口は堅く結んで、目は閉じちゃってるじゃない。
ほんと、二人とも露骨なんだから。
大広間に昼間の太陽が照りつける。異例の日中の舞踏会。これから、あの太陽が欠けていくのね。日食。私は首にかけてきたルビーの首飾りを握り締める。クリスティーヌはさっき、この首飾りを目にしたはずなのに驚きもしなかった。あの子も同じルビーの首飾りをつけている。偽物だって分かってるんでしょう? なのに、どうしてつけてきたの?
同じ首飾りをつけて仲がいいのねと貴婦人たちから声をかけられた。
「ええ。私の誕生石ですの」
「あら、じゃあ聖女さまはあなたの宝石を真似しているの? 変わっているわね」
「ほんとにそうですよねー」わざと聞こえるように言ってやった。クリスティーヌは、踊りながら睨んできた。
お互いに今日が最終決戦日だと心に決めているんだ。間違いなく仕掛けてくる。いいわ、返り討ちにしてあげる。
0
お気に入りに追加
202
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢は所詮悪役令嬢
白雪の雫
ファンタジー
「アネット=アンダーソン!貴女の私に対する仕打ちは到底許されるものではありません!殿下、どうかあの平民の女に頭を下げるように言って下さいませ!」
魔力に秀でているという理由で聖女に選ばれてしまったアネットは、平民であるにも関わらず公爵令嬢にして王太子殿下の婚約者である自分を階段から突き落とそうとしただの、冬の池に突き落として凍死させようとしただの、魔物を操って殺そうとしただの──・・・。
リリスが言っている事は全て彼女達による自作自演だ。というより、ゲームの中でリリスがヒロインであるアネットに対して行っていた所業である。
愛しいリリスに縋られたものだから男としての株を上げたい王太子は、アネットが無実だと分かった上で彼女を断罪しようとするのだが、そこに父親である国王と教皇、そして聖女の夫がやって来る──・・・。
悪役令嬢がいい子ちゃん、ヒロインが脳内お花畑のビッチヒドインで『ざまぁ』されるのが多いので、逆にしたらどうなるのか?という思い付きで浮かんだ話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】どうやら魔森に捨てられていた忌子は聖女だったようです
山葵
ファンタジー
昔、双子は不吉と言われ後に産まれた者は捨てられたり、殺されたり、こっそりと里子に出されていた。
今は、その考えも消えつつある。
けれど貴族の中には昔の迷信に捕らわれ、未だに双子は家系を滅ぼす忌子と信じる者もいる。
今年、ダーウィン侯爵家に双子が産まれた。
ダーウィン侯爵家は迷信を信じ、後から産まれたばかりの子を馭者に指示し魔森へと捨てた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる