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それから首飾りはすぐにお父さまの手に渡ったのよね。お父さまは私を見て嘆いていたわ。
「お前も半分魔族の血が入っている。いつ、失うか分からない」と、半狂乱になっていた。それから、お父さまは私のことを普通の人間として育ててくれた。私自身が半魔族であることを忘れるぐらいに。
周囲からの偏見も強かったのかもしれない。魔族と結ばれたことはいつの間にかばれていたのだと思う。お父さまは、次第に私の存在そのものを否定するようになった。それでも、お父さまのお母さまへの恋慕は尽きず、屋敷にはお母さまの調度品を全てそろえた部屋を作った。まるで、お母さまがいっしょに暮らしているかのように。しばらくして、屋敷でも奇妙な趣味だとか、婦人服を買う伯爵家の跡取りという変な噂も立ち、お父さまはぱたりとお母さまのための部屋を開かずの間にしてしまった。
何にしても、受け止めるべきものが多いわ。私も半分魔族なのはショックだけれど、クリスティーヌと私は違う。お母さまのことを知ることができて良かった。
私が今の屋敷に慣れたころ、お父さまが幼いクリスティーヌを見つけてくる。大切に仕舞っていた首飾りを持ち出してクリスティーヌにつけさせた。どんな能力があるのか知らずに。だけど、当時のクリスティーヌには首飾りは大きすぎたから聖女になるまでつけなかったのね。
お父さまにも辛いことが多かったと思う。だけど、どうしてクリスティーヌなの? 生まれたところも見ていないのに。お母さまと瓜二つのその容姿だけで全てを褒めるのね。
「お母さまの形見の首飾りを私にはかけて下さらないのですね、お父さま……」
お父さまのことはそれほど好きではなかった。だけど、今こうしてお母さまとお父さまのことを理解してみるとお父さまにも愛されたいと思うわがままな感情が芽生えた。
首飾りで時を戻すなら、どうせならクリスティーヌと引き合わされるところからが良かった。お母さまの首飾りを絶対に手放したくない。
「お前も半分魔族の血が入っている。いつ、失うか分からない」と、半狂乱になっていた。それから、お父さまは私のことを普通の人間として育ててくれた。私自身が半魔族であることを忘れるぐらいに。
周囲からの偏見も強かったのかもしれない。魔族と結ばれたことはいつの間にかばれていたのだと思う。お父さまは、次第に私の存在そのものを否定するようになった。それでも、お父さまのお母さまへの恋慕は尽きず、屋敷にはお母さまの調度品を全てそろえた部屋を作った。まるで、お母さまがいっしょに暮らしているかのように。しばらくして、屋敷でも奇妙な趣味だとか、婦人服を買う伯爵家の跡取りという変な噂も立ち、お父さまはぱたりとお母さまのための部屋を開かずの間にしてしまった。
何にしても、受け止めるべきものが多いわ。私も半分魔族なのはショックだけれど、クリスティーヌと私は違う。お母さまのことを知ることができて良かった。
私が今の屋敷に慣れたころ、お父さまが幼いクリスティーヌを見つけてくる。大切に仕舞っていた首飾りを持ち出してクリスティーヌにつけさせた。どんな能力があるのか知らずに。だけど、当時のクリスティーヌには首飾りは大きすぎたから聖女になるまでつけなかったのね。
お父さまにも辛いことが多かったと思う。だけど、どうしてクリスティーヌなの? 生まれたところも見ていないのに。お母さまと瓜二つのその容姿だけで全てを褒めるのね。
「お母さまの形見の首飾りを私にはかけて下さらないのですね、お父さま……」
お父さまのことはそれほど好きではなかった。だけど、今こうしてお母さまとお父さまのことを理解してみるとお父さまにも愛されたいと思うわがままな感情が芽生えた。
首飾りで時を戻すなら、どうせならクリスティーヌと引き合わされるところからが良かった。お母さまの首飾りを絶対に手放したくない。
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