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いよいよ、発表会ね。貴族たちのほか、騎士ミレーさま、リュカ王子と王国騎士団と大物ぞろい。クリスティーヌは人々の輪の中心にいて、私をちらりと見たけれど素知らぬ顔をしている。口元は笑っているけれど目が全然笑っていない。顔に出しくれた方が、私も復讐のしがいがあるのに。こっちから、嫌らしく笑ってやるわよ。誰も私の顔なんか見ちゃいないんだから。
「あ、アミシアさま」
「あ、はい!」
やだ、ミレーったら私のこと見てたの? ノーマークだった。あんたもリュカ王子といっしょに色んな女を見てくればいいじゃないの。
「なんだか、お困りの様子に見えたのですが」
「いえ、緊張してました」
困り顔に見えたのならあんたの目は節穴ね。
「この日を心待ちにしていました。楽しみです」
「急かさないで下さい。あと数分ではじまります」
ちょうどお父さまが大広間で集まって下さった方々に挨拶をしたところ。日頃の集大成を成すときが来たとか大げさに言ってる。
ミレーは、目を輝かせて私を見つめる。期待されてるみたい。
「応援しています。アミシアさま。音楽なしでは聖女さまも歌うことができませんから」
「聖女さまならアカペラもできると思いますけどね」
「そんなことはありませんよ。アミシアさまが支えなければ、聖女一人では成せない」
思わず苦笑してしまう。一人で成すことができるから聖女なんじゃないかしら。でも、ここで失敗するわけにはいかない。
ピアノの鍵盤にはもう針がないのだから、思いきって楽しんで弾かないとね。
意識せずとも滑らかに弾けることに驚いた。観客のことはみんな空気だと思うことにしていたんだけれど、しだいに私に集中してくる視線がたまらなくなってくる。やみつきになりそう。もちろん高らかなクリスティーヌの歌声に観客が惹きつけられているのもあるんだけどね。
不思議よね。憎しみ合っている二人のハーモニーよ。だけど、妙に馴染むのよね。リズムや、弾き心地とか。血は繋がっていないはずなのに……。
演奏が終わると、私の演奏に飲まれた人々が恍惚としていることに気づいた。彼らは拍手することを忘れている、数拍置いてからちらほらと拍手が起こった。次の瞬間には盛大に湧く。
「ブラボー!」
リュカ王子が一番の声援を送ってくれた。え、なんで王子が?
騎士ミレーが「アミシアさまああ!」と涙ぐんでいる隣で。
クリスティーヌは誇らしげな顔をしていたけれど、リュカ王子が私の前に歩み出たことで困惑している。
「ああ、お二人とも素晴らしかったよ」
一応二人とも褒めて下さるのね。まあ、当然かしら。嫌われなかっただけましよね。でも、どうして? クリスティーヌに会いにきたんでしょ? 私の前にきて賛辞されたら、クリスティーヌの目線が私を射るから痛いわ。
私の顔色が悪いことに気を良くしたのか王子が冷笑を浮かべている。やめてよ、こんなところでドS発動するつもり?
「とても一夜漬けには見えない。練習しましたか?」
一夜漬けって! どこ情報よ!
「私のことなにも知らないようですね。決めつけられては困ります」
睨み返すと王子はふっと頬を歪めた。
「本当はとても繊細な方のようだ。俺にはもったいないとも感じる」
「え?」
どういうこと? どうして寂し気な表情をするの?
「リュカ王子さまっ! 女神さまへの祈りが通じたから、こうしてリュカ王子も来てくださったのですね」
いくらなんでも馴れ馴れしすぎでしょ、クリスティーヌ。
リュカ王子はクリスティーヌを冷ややかに見下す。あれ? この前見たときはこの二人、仲むつまじかったのにどうして?
「気まぐれで来た。国中の女性たちが幸せに暮らしているかどうか、気になってね」
ただのたらしじゃないっ!
「そ、そうなんですか。でも、聖女である私に会いに来て下さったんですよね?」
「今日の気分はそちらのお姉さまの方が好みかな」
ん? そちらってどちら? まさか、私?
ニヤニヤしているリュカ王子。こ、この人もしかして私を困らせてもてあそんでる???
「あ、アミシアさま」
「あ、はい!」
やだ、ミレーったら私のこと見てたの? ノーマークだった。あんたもリュカ王子といっしょに色んな女を見てくればいいじゃないの。
「なんだか、お困りの様子に見えたのですが」
「いえ、緊張してました」
困り顔に見えたのならあんたの目は節穴ね。
「この日を心待ちにしていました。楽しみです」
「急かさないで下さい。あと数分ではじまります」
ちょうどお父さまが大広間で集まって下さった方々に挨拶をしたところ。日頃の集大成を成すときが来たとか大げさに言ってる。
ミレーは、目を輝かせて私を見つめる。期待されてるみたい。
「応援しています。アミシアさま。音楽なしでは聖女さまも歌うことができませんから」
「聖女さまならアカペラもできると思いますけどね」
「そんなことはありませんよ。アミシアさまが支えなければ、聖女一人では成せない」
思わず苦笑してしまう。一人で成すことができるから聖女なんじゃないかしら。でも、ここで失敗するわけにはいかない。
ピアノの鍵盤にはもう針がないのだから、思いきって楽しんで弾かないとね。
意識せずとも滑らかに弾けることに驚いた。観客のことはみんな空気だと思うことにしていたんだけれど、しだいに私に集中してくる視線がたまらなくなってくる。やみつきになりそう。もちろん高らかなクリスティーヌの歌声に観客が惹きつけられているのもあるんだけどね。
不思議よね。憎しみ合っている二人のハーモニーよ。だけど、妙に馴染むのよね。リズムや、弾き心地とか。血は繋がっていないはずなのに……。
演奏が終わると、私の演奏に飲まれた人々が恍惚としていることに気づいた。彼らは拍手することを忘れている、数拍置いてからちらほらと拍手が起こった。次の瞬間には盛大に湧く。
「ブラボー!」
リュカ王子が一番の声援を送ってくれた。え、なんで王子が?
騎士ミレーが「アミシアさまああ!」と涙ぐんでいる隣で。
クリスティーヌは誇らしげな顔をしていたけれど、リュカ王子が私の前に歩み出たことで困惑している。
「ああ、お二人とも素晴らしかったよ」
一応二人とも褒めて下さるのね。まあ、当然かしら。嫌われなかっただけましよね。でも、どうして? クリスティーヌに会いにきたんでしょ? 私の前にきて賛辞されたら、クリスティーヌの目線が私を射るから痛いわ。
私の顔色が悪いことに気を良くしたのか王子が冷笑を浮かべている。やめてよ、こんなところでドS発動するつもり?
「とても一夜漬けには見えない。練習しましたか?」
一夜漬けって! どこ情報よ!
「私のことなにも知らないようですね。決めつけられては困ります」
睨み返すと王子はふっと頬を歪めた。
「本当はとても繊細な方のようだ。俺にはもったいないとも感じる」
「え?」
どういうこと? どうして寂し気な表情をするの?
「リュカ王子さまっ! 女神さまへの祈りが通じたから、こうしてリュカ王子も来てくださったのですね」
いくらなんでも馴れ馴れしすぎでしょ、クリスティーヌ。
リュカ王子はクリスティーヌを冷ややかに見下す。あれ? この前見たときはこの二人、仲むつまじかったのにどうして?
「気まぐれで来た。国中の女性たちが幸せに暮らしているかどうか、気になってね」
ただのたらしじゃないっ!
「そ、そうなんですか。でも、聖女である私に会いに来て下さったんですよね?」
「今日の気分はそちらのお姉さまの方が好みかな」
ん? そちらってどちら? まさか、私?
ニヤニヤしているリュカ王子。こ、この人もしかして私を困らせてもてあそんでる???
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