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 集中。集中よ。

「アミシア、今日は張りのある歌声で素晴らしいですね」

「ありがとうございます。ララ先生。私、もっと頑張ります。クリスティーヌ。先に夕食に行ってらっしゃい。私は後で行くわ」

 歌った後に優しいお姉さまを演じるのって気持ちいいわ。

「お姉さまは夕食を抜くのですか?」

「時間をずらすだけよ」

「私たちと食事したくないってことですの?」

「そうじゃなくって。よく聞いて。お腹をすかせたあなたを待たせてまで居残り練習するわけにはいかないのよ」

「でも」

 ええ、いっしょに食べたくないのはあなたも知ってるでしょ。さっさと出てけ。どうして話が聞けないのかしらね。クリスティーヌの手を取る。耳元で囁く。

「心配しなくても大丈夫。今すぐあんたより上手くなったりしないわ、聖女さま。今はまだね」

 私の眼光にひるんだのか、顔を強張らせたクリスティーヌは私の手を振り払う。逃げるように大広間から去っていく。あらあら、魔族でも怖いものがあるのね。

「ララ先生。私クリスティーヌが心配です。最近は早く切り上げたり、さぼったりもしてるみたいですね。今日は久しぶりに顔を見たのに。元気がないのかしら」

「確かに歌声に元気はなかったわね。でもあの子の心配はいらないわよ。絶対音感の持ち主だからね」

 元気がなくても歌さえ上手かったらいいわけ? でも、絶対音感は羨ましい。

「アミシアも音痴はなおりましたね」

 ララ先生、心にグサッとくるわ。我慢よ、これはララ先生精一杯のフォローなんだから。あとは、魔法を身につけないと。
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