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1悲鳴
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騒がしい都会の濁った空気を吸いながら地下鉄に乗り込んだ。降りてくる人たちと肩がこすれ合ったが、誰も謝りもしない。かき分けるように電車を降りていく。僕だって負けずに押し入った。発車音がなり、扉が強制的に人を押し込む。駆け込んだサラリーマンの鞄がドアに挟まり、扉が開き、すぐに閉まる。
悲鳴が上がった。サラリーマンではなく、すぐ近くの女性だった。痴漢かと思ったら、どよめきが広がり、異常な空気が漂った。サングラスにマスク、ニット帽の男がナイフを持ち出している。女性は腹部に手を当てている。
その先からは鮮血が滝のように溢れ出していた。眠っていた老人、大声で雑談していた小学生、携帯を打っている女子高生も、その男の様子を凝視した。席を立って、すぐに離れた青年もいる。それが一番正しかった。
男のすぐ隣に立っていたサラリーマンが首から血を噴いて倒れた。そのすぐ後ろのお婆さんが、膝をついた。足にナイフが刺さっている。
車内は悲鳴の嵐となって、隣の車両に逃げようとする人で津波のように押し合った。僕のヘッドホンも、人に押されて、外れてしまった。いくつもはめた僕の指輪が僕に向かって逃げてくる人のカバンにぶつかって、何度もお互いの動きを妨げた。
「どけ、この野郎」
この場で罵倒された僕は嫌に頭に来た。普段はこれぐらいでは胃が痛むほど怒ったりはしない。だけど、今日は違った。原因はすぐに分かった。
僕は弟とシンクロしているちょっと変わった体質だからだ。弟が怒ると、僕も理由もなくいらついてくる。弟が泣き出すと、僕も少し悲しくなる。それは、弟がすぐ近くにいなくても、全国どこにいても起きる現象だった。
悲鳴が上がった。サラリーマンではなく、すぐ近くの女性だった。痴漢かと思ったら、どよめきが広がり、異常な空気が漂った。サングラスにマスク、ニット帽の男がナイフを持ち出している。女性は腹部に手を当てている。
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