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ピンポーン。
こんな夜遅くに? ちょっと、私もお風呂に入って歯ブラシしたところなんだけど!!! パジャマだし。マスク手元にないし。寝たいっ!
「ロエリ代わりに出て。お母さんメイク落としちゃった」
「分かったー」
マスクマスクっと。
「こんばんは」
「げっ」
玄関を開けて庭に出る。遠くに白い人影。門扉越しにあの曽音田美杏がいた!!!
恐る恐る近づく。上品なたたずまいで私が近づくのを待っている。門扉は開けない。
「お母さんいる?」
「いません! 帰って! な、何しに来たの? こ、この口裂け女?」
「あら? 私って綺麗? ぐらい言わせてから罵って欲しいものね。お母さんにはこれを渡して欲しいの」
「わ、渡さないわよ」
受け取る前から首をぶんぶん振る。さっきから曽音田美杏の手には何か握られている。暗くてよく見えない。ナイフだったらどうしよう。
「馬鹿ね。ただの回覧板よ。私の家の次はあなたの家。夜遅くにごめんなさいね。お詫びにこれ、あなたにあげるわ」
そういって回覧板に何か黒いものを挟み込んできた。回覧板を受け取らないわけにはいかない。だけど、相手は口裂け女。こういうときに人間って変な理性が働いて、いつも通りの行動に出ちゃうのかな? 回覧板を素直に受け取った。って、手に何か絡みついた。髪の毛だ!
「あなたのお友達ならこの通りよ?」
うそ、これ、すみちゃんの髪の毛なの? どうして曽音田美杏が持ってるの? しかも、切ってるし。すみちゃんは今どこ? まさか、この人の家にいるとか言わないよね? でも、すみちゃんはまだ見つかっていないし、すみちゃんのお母さんは口裂け女になっちゃたし。すみちゃんが無事な方がおかしいぐらいなの? や、やだ認めたくない。泣いちゃ駄目! 絶対駄目! この人は敵なんだ!
目の前がかすんで見える。私、泣いてる? だめ、絶対に涙の一滴だってこの女の前で見せるもんか。曽音田美杏がマスクの上に手を当てて忍び笑いしている。あのマスクの下には裂けた口があるんだ。私、こんな人に弄ばれたりしない! 必ずすみちゃんを取り戻す!
「お母さん!」
お母さんに何が何でも説明しきってみせる。私の叫び声にお母さんが驚いて玄関をガラガラと開ける音が聞こえた。曽音田美杏は余裕の表情で逃げ帰ったりもしない。私の慌てふためく様子をうかがってほくそ笑んでいる。目元だけでも分かる。
「なあに、ロエリ。怖い声出さないでよ。それに、さっきから誰が来てるの? あ、曽音田さん? こんばんは。先日はゴディバのチョコレートありがとうございました。美味しく娘と頂きました」
「ねえ、そんなこといいから聞いてよ、お母さん! この人は口裂け女なんだよ」
「はぁ? あんたそんな失礼なこと言ったの? ごめんなさいね。この子が何か失礼なことを言ってるみたいで。早く謝りなさい」
「いいんですよ。夜分にマスクで押しかけたら怖いじゃないですか。子供にWITH感染症は難しいって聞きますし」
あ、なんか馬鹿にしたような言い方されて悔しい。そろそろマスクも慣れたつもりだし。てか、この人、ほんとに上手く言いくるめてくる。お母さんどうやったら信じてくれるの。
「とにかく聞いてよ。この人はすみちゃんを襲って――」
「ああ、それから夜分に失礼したのは私、これを渡したくて。今仕事から帰ってきたばかりで、朝も早く出ますから今しかないと思いまして」
話を遮られた。今日は帝国ホテルのクッキーを持ってきている。どれだけ私のお母さんに貢ぐの? これも作戦の一つだよね?
「まあ、ほんとにいつもありがとうございます」
お母さんが美味しそうと呟く。声に出ちゃってるよ。もう。
「こういうの、お好きなんじゃないかしらと思って」
お母さんと会ったのは少しの間だけじゃないの? あの日以降も会ってる? 私が学校に行ってる間とか? もうお母さん、丸め込まれちゃってるじゃない。
「こちらからも何か近いうちにお返ししなくちゃって思うんですけどね」
「かまいませんよ。娘さん、ロエリちゃんが私にいつも親切にしてくれるから、私も助かってますよ?」
曽音田美杏の作り笑いと目が合う。ムカツク!
言い返すチャンス全然なかった。この人、私が正体を知っていることを誰にも話せないと思ってるし、話しても信じてくれないことも確信している。
「明日、うちに来ます?」
「ちょっとお母さん」
「あんたには関係ないでしょ? 学校なんだから」
それがやばいんだって。私のいないときに家に上げないでよ。
「ほんとにいいのかしら? お子さん、私のことが怖いんじゃないかしら。さっきから落ち着きがなさそうだけど。大丈夫ロエリちゃん?」
大丈夫なわけないじゃない。早く帰ってよ。明日来るんだったら、こっちも考えがあるんだから。
「お母さんに何かあったら許さないから」
この人にだけ聞こえるように小声で挑むように告げる。曽音田美杏は、妖艶に眉をひそめた。何がおかしいの?
「では、明日の夜八時に寄らせてもらいます」
去り際、曽音田美杏も私にこっそりと早口で告げる。
「心配なら学校を休んであなたとお母さんと私の三人で会ってみる? 人数は多い方がいいわよね?」
ずる休みしてでもお母さんを守るつもり。見抜かれてても構わないけど。人数は多い方がいい? それって、お母さんも口裂け女の仲間に引き入れたいってことだよね? そんなこと絶対させないんだから。
こんな夜遅くに? ちょっと、私もお風呂に入って歯ブラシしたところなんだけど!!! パジャマだし。マスク手元にないし。寝たいっ!
「ロエリ代わりに出て。お母さんメイク落としちゃった」
「分かったー」
マスクマスクっと。
「こんばんは」
「げっ」
玄関を開けて庭に出る。遠くに白い人影。門扉越しにあの曽音田美杏がいた!!!
恐る恐る近づく。上品なたたずまいで私が近づくのを待っている。門扉は開けない。
「お母さんいる?」
「いません! 帰って! な、何しに来たの? こ、この口裂け女?」
「あら? 私って綺麗? ぐらい言わせてから罵って欲しいものね。お母さんにはこれを渡して欲しいの」
「わ、渡さないわよ」
受け取る前から首をぶんぶん振る。さっきから曽音田美杏の手には何か握られている。暗くてよく見えない。ナイフだったらどうしよう。
「馬鹿ね。ただの回覧板よ。私の家の次はあなたの家。夜遅くにごめんなさいね。お詫びにこれ、あなたにあげるわ」
そういって回覧板に何か黒いものを挟み込んできた。回覧板を受け取らないわけにはいかない。だけど、相手は口裂け女。こういうときに人間って変な理性が働いて、いつも通りの行動に出ちゃうのかな? 回覧板を素直に受け取った。って、手に何か絡みついた。髪の毛だ!
「あなたのお友達ならこの通りよ?」
うそ、これ、すみちゃんの髪の毛なの? どうして曽音田美杏が持ってるの? しかも、切ってるし。すみちゃんは今どこ? まさか、この人の家にいるとか言わないよね? でも、すみちゃんはまだ見つかっていないし、すみちゃんのお母さんは口裂け女になっちゃたし。すみちゃんが無事な方がおかしいぐらいなの? や、やだ認めたくない。泣いちゃ駄目! 絶対駄目! この人は敵なんだ!
目の前がかすんで見える。私、泣いてる? だめ、絶対に涙の一滴だってこの女の前で見せるもんか。曽音田美杏がマスクの上に手を当てて忍び笑いしている。あのマスクの下には裂けた口があるんだ。私、こんな人に弄ばれたりしない! 必ずすみちゃんを取り戻す!
「お母さん!」
お母さんに何が何でも説明しきってみせる。私の叫び声にお母さんが驚いて玄関をガラガラと開ける音が聞こえた。曽音田美杏は余裕の表情で逃げ帰ったりもしない。私の慌てふためく様子をうかがってほくそ笑んでいる。目元だけでも分かる。
「なあに、ロエリ。怖い声出さないでよ。それに、さっきから誰が来てるの? あ、曽音田さん? こんばんは。先日はゴディバのチョコレートありがとうございました。美味しく娘と頂きました」
「ねえ、そんなこといいから聞いてよ、お母さん! この人は口裂け女なんだよ」
「はぁ? あんたそんな失礼なこと言ったの? ごめんなさいね。この子が何か失礼なことを言ってるみたいで。早く謝りなさい」
「いいんですよ。夜分にマスクで押しかけたら怖いじゃないですか。子供にWITH感染症は難しいって聞きますし」
あ、なんか馬鹿にしたような言い方されて悔しい。そろそろマスクも慣れたつもりだし。てか、この人、ほんとに上手く言いくるめてくる。お母さんどうやったら信じてくれるの。
「とにかく聞いてよ。この人はすみちゃんを襲って――」
「ああ、それから夜分に失礼したのは私、これを渡したくて。今仕事から帰ってきたばかりで、朝も早く出ますから今しかないと思いまして」
話を遮られた。今日は帝国ホテルのクッキーを持ってきている。どれだけ私のお母さんに貢ぐの? これも作戦の一つだよね?
「まあ、ほんとにいつもありがとうございます」
お母さんが美味しそうと呟く。声に出ちゃってるよ。もう。
「こういうの、お好きなんじゃないかしらと思って」
お母さんと会ったのは少しの間だけじゃないの? あの日以降も会ってる? 私が学校に行ってる間とか? もうお母さん、丸め込まれちゃってるじゃない。
「こちらからも何か近いうちにお返ししなくちゃって思うんですけどね」
「かまいませんよ。娘さん、ロエリちゃんが私にいつも親切にしてくれるから、私も助かってますよ?」
曽音田美杏の作り笑いと目が合う。ムカツク!
言い返すチャンス全然なかった。この人、私が正体を知っていることを誰にも話せないと思ってるし、話しても信じてくれないことも確信している。
「明日、うちに来ます?」
「ちょっとお母さん」
「あんたには関係ないでしょ? 学校なんだから」
それがやばいんだって。私のいないときに家に上げないでよ。
「ほんとにいいのかしら? お子さん、私のことが怖いんじゃないかしら。さっきから落ち着きがなさそうだけど。大丈夫ロエリちゃん?」
大丈夫なわけないじゃない。早く帰ってよ。明日来るんだったら、こっちも考えがあるんだから。
「お母さんに何かあったら許さないから」
この人にだけ聞こえるように小声で挑むように告げる。曽音田美杏は、妖艶に眉をひそめた。何がおかしいの?
「では、明日の夜八時に寄らせてもらいます」
去り際、曽音田美杏も私にこっそりと早口で告げる。
「心配なら学校を休んであなたとお母さんと私の三人で会ってみる? 人数は多い方がいいわよね?」
ずる休みしてでもお母さんを守るつもり。見抜かれてても構わないけど。人数は多い方がいい? それって、お母さんも口裂け女の仲間に引き入れたいってことだよね? そんなこと絶対させないんだから。
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