4 / 6
第4話 入会費だけだろ
しおりを挟む
「レン君ごめんなさい!」
ミキの泣き叫ぶ声がして扉が開いた。途端に、ミキを連れ俺は飛び出した。あと一歩遅ければ阿羅亜の鎌が、背中を突き刺すところだ。
建物を飛び出ても俺達は振り返ることなく走った。ミキはずっと泣きじゃくっている。ひとまず、人通りの多い場所に出れば安心だ。
ミキが泣きじゃくるので、人々の視線が集中した。俺も混乱してどうしたらいいのか分からなくなっている。とにかく落ち着こう。
「大丈夫だ。泣くな」
「だって、私のせいで。私のせいで。みんな死ぬんだよ。阿羅亜さんたちがまさか死神の崇拝者だったなんて」
言っている意味が分からない。いや、阿羅亜以外にも誰かいたのか?
「どういうことだ?」
ミキは余計に声を荒げて泣き喚いた。
「私たちの後に、入ってきた子がいたの。でも、その子、退会を申し出たとたんに、奥の部屋に連れていかれて。出てこなくなったの。それから、代わりに出て来たのが、死武唖さんっていう女の人なんだけど、靴に血がたくさんついてた。退会したら命を頂くなんて、最初冗談で阿羅亜さん言ってたから信じてなかったんだけど、まさか本当に殺されちゃうなんて!」
「馬鹿、声がでかい。と、とにかく警察に行くぞ」
やっと警察の存在を思いついた俺は、警察に報告しにいった。ところが、警察は取り合ってくれなかった。実際に殺された瞬間を見たわけではないし、そもそもあのビルは存在していないとのことだった。
今日は手持ち無沙汰な感じで家に帰った。もう一度死神クラブの場所に足を運んで確認してみたかったが、阿羅亜がうろついていると思われてならなくて、仕方なく家で過ごした。父に話してみたが、酔っ払っていて取り合ってくれなかった。
仕方なく次の日、ミキと二人で死神クラブの存在を確かめに行くことになった。
じわじわとビルが近づくにつれ、身の毛がよだつ。ビルが存在していてほしいような、存在していてほしくないような嫌な寒気がする。
ビルは存在していた。何だ、はったりかと思ったと同時に中に入るのを躊躇ってしまう。警察がいてくれたら心強いのだが。
「やっぱり帰ろうよ。生きてただけでもさ、もういいじゃん」
ミキが弱気なことを言う。心の中では俺もそう思っていた。だけど、このまま放っておいたら、次なる犠牲者が出る。後ろ髪を引かれる思いで地下への階段を降りていくと、ふと、黒い影が足元に伸びてきた。人間の形をしたそれは、一瞬揺らめいて大きな怪物の姿になった。
「やあ、レン君」
後ろから軽快な声がした。阿羅亜だ。見間違いだったのだろうか、影は阿羅亜の輪郭と寸分の狂いもない。それより、まずいことになった。入り口からも白い布を頭から被ったような人たちがぞろぞろと、手に斧やらナイフやらを持って現われた。これでは挟み討ちだ。
「入会費はただだよ」
「入会費だけだろ」
阿羅亜は、物静かに噛み殺したような笑い声を立てた。
「君は神を信じていないようですね」
ミキの泣き叫ぶ声がして扉が開いた。途端に、ミキを連れ俺は飛び出した。あと一歩遅ければ阿羅亜の鎌が、背中を突き刺すところだ。
建物を飛び出ても俺達は振り返ることなく走った。ミキはずっと泣きじゃくっている。ひとまず、人通りの多い場所に出れば安心だ。
ミキが泣きじゃくるので、人々の視線が集中した。俺も混乱してどうしたらいいのか分からなくなっている。とにかく落ち着こう。
「大丈夫だ。泣くな」
「だって、私のせいで。私のせいで。みんな死ぬんだよ。阿羅亜さんたちがまさか死神の崇拝者だったなんて」
言っている意味が分からない。いや、阿羅亜以外にも誰かいたのか?
「どういうことだ?」
ミキは余計に声を荒げて泣き喚いた。
「私たちの後に、入ってきた子がいたの。でも、その子、退会を申し出たとたんに、奥の部屋に連れていかれて。出てこなくなったの。それから、代わりに出て来たのが、死武唖さんっていう女の人なんだけど、靴に血がたくさんついてた。退会したら命を頂くなんて、最初冗談で阿羅亜さん言ってたから信じてなかったんだけど、まさか本当に殺されちゃうなんて!」
「馬鹿、声がでかい。と、とにかく警察に行くぞ」
やっと警察の存在を思いついた俺は、警察に報告しにいった。ところが、警察は取り合ってくれなかった。実際に殺された瞬間を見たわけではないし、そもそもあのビルは存在していないとのことだった。
今日は手持ち無沙汰な感じで家に帰った。もう一度死神クラブの場所に足を運んで確認してみたかったが、阿羅亜がうろついていると思われてならなくて、仕方なく家で過ごした。父に話してみたが、酔っ払っていて取り合ってくれなかった。
仕方なく次の日、ミキと二人で死神クラブの存在を確かめに行くことになった。
じわじわとビルが近づくにつれ、身の毛がよだつ。ビルが存在していてほしいような、存在していてほしくないような嫌な寒気がする。
ビルは存在していた。何だ、はったりかと思ったと同時に中に入るのを躊躇ってしまう。警察がいてくれたら心強いのだが。
「やっぱり帰ろうよ。生きてただけでもさ、もういいじゃん」
ミキが弱気なことを言う。心の中では俺もそう思っていた。だけど、このまま放っておいたら、次なる犠牲者が出る。後ろ髪を引かれる思いで地下への階段を降りていくと、ふと、黒い影が足元に伸びてきた。人間の形をしたそれは、一瞬揺らめいて大きな怪物の姿になった。
「やあ、レン君」
後ろから軽快な声がした。阿羅亜だ。見間違いだったのだろうか、影は阿羅亜の輪郭と寸分の狂いもない。それより、まずいことになった。入り口からも白い布を頭から被ったような人たちがぞろぞろと、手に斧やらナイフやらを持って現われた。これでは挟み討ちだ。
「入会費はただだよ」
「入会費だけだろ」
阿羅亜は、物静かに噛み殺したような笑い声を立てた。
「君は神を信じていないようですね」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
煩い人
星来香文子
ホラー
陽光学園高学校は、新校舎建設中の間、夜間学校・月光学園の校舎を昼の間借りることになった。
「夜七時以降、陽光学園の生徒は校舎にいてはいけない」という校則があるのにも関わらず、ある一人の女子生徒が忘れ物を取りに行ってしまう。
彼女はそこで、肌も髪も真っ白で、美しい人を見た。
それから彼女は何度も狂ったように夜の学校に出入りするようになり、いつの間にか姿を消したという。
彼女の親友だった美波は、真相を探るため一人、夜間学校に潜入するのだが……
(全7話)
※タイトルは「わずらいびと」と読みます
※カクヨムでも掲載しています
初めてお越しの方へ
山村京二
ホラー
全ては、中学生の春休みに始まった。
祖父母宅を訪れた主人公が、和室の押し入れで見つけた奇妙な日記。祖父から聞かされた驚愕の話。そのすべてが主人公の人生を大きく変えることとなる。
ルール
新菜いに/丹㑚仁戻
ホラー
放課後の恒例となった、友達同士でする怪談話。
その日聞いた怪談は、実は高校の近所が舞台となっていた。
主人公の亜美は怖がりだったが、周りの好奇心に押されその場所へと向かうことに。
その怪談は何を伝えようとしていたのか――その意味を知ったときには、もう遅い。
□第6回ホラー・ミステリー小説大賞にて奨励賞をいただきました□
※章ごとに登場人物や時代が変わる連作短編のような構成です(第一章と最後の二章は同じ登場人物)。
※結構グロいです。
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
※カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
©2022 新菜いに
怪物どもが蠢く島
湖城マコト
ホラー
大学生の綿上黎一は謎の組織に拉致され、絶海の孤島でのデスゲームに参加させられる。
クリア条件は至ってシンプル。この島で二十四時間生き残ることのみ。しかしこの島には、組織が放った大量のゾンビが蠢いていた。
黎一ら十七名の参加者は果たして、このデスゲームをクリアすることが出来るのか?
次第に明らかになっていく参加者達の秘密。この島で蠢く怪物は、決してゾンビだけではない。
機織姫
ワルシャワ
ホラー
栃木県日光市にある鬼怒沼にある伝説にこんな話がありました。そこで、とある美しい姫が現れてカタンコトンと音を鳴らす。声をかけるとその姫は一変し沼の中へ誘うという恐ろしい話。一人の少年もまた誘われそうになり、どうにか命からがら助かったというが。その話はもはや忘れ去られてしまうほど時を超えた現代で起きた怖いお話。はじまりはじまり
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
放浪さんの放浪記
山代裕春
ホラー
閲覧していただきありがとうございます
注意!過激な表現が含まれています
苦手な方はそっとバックしてください
登場人物
放浪さん
明るい性格だが影がある
怪談と番茶とお菓子が大好き
嫌いなものは、家族(特に母親)
禁踏区
nami
ホラー
月隠村を取り囲む山には絶対に足を踏み入れてはいけない場所があるらしい。
そこには巨大な屋敷があり、そこに入ると決して生きて帰ることはできないという……
隠された道の先に聳える巨大な廃屋。
そこで様々な怪異に遭遇する凛達。
しかし、本当の恐怖は廃屋から脱出した後に待ち受けていた──
都市伝説と呪いの田舎ホラー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる