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第2章
43話 教会の協力を取り付ける俺
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教会に第3者として立ち合いをお願いすることを決めた俺たちは、早速教会へと向かう。
サクリア大聖堂は以前来た時と変わりなく、いや寂れかけの雰囲気がより色こくなっていたが、そこにいる職員や神殿騎士の姿は人数も変わらず見ることができた。
それを見ると人々の信仰を取り戻すことも世界を結びつけるのには必要なことだよなと思う。王家への信用と神への信仰が帝国への強い意志となるはず。
だが、そのためには今はキーレンを助けることが大切だ。心のそこから国民のことを考えている王子を見捨てれば、きっとこの国は近い将来再起不能となるだろう。それだけは避けたい。
大聖堂に入り受付の職員にまずエンリコ騎士団長を呼び出してもらうようにお願いした。話をした職員が呼びに行ってくれた後すぐにバタバタと音を立ててエンリコ騎士団長がやってきた。
「タケル殿!クリス殿!ようこそ参られた!今日はどのような用件でいらっしゃった!?」
久しぶりに会うエンリコは満面の笑みで対応してくれる。それはクリスが神からのお告げを特別に受ける人物だからだろうが、なぜ俺の名前まで呼ぶのか?それもクリスより先に。
「ああ、エンリコ殿。突然訪問して申し訳ない。実は折り入ってお願いしたいことがありまして。」
「クリス殿のご要望とあらば、我ら統一教全力を持って支援する所存ですよ!とりあえずここではなんですから場所を変えましょう。さあどうぞこちらに!」
妙にハキハキした声には多少の緊張感も含まれている気がする。俺のことを尊敬している部活の後輩に話しかけられたような気分だ。
エンリコの誘導で以前も通った職員用の通路を通り、以前とは違う扉の前についた。中に入ると大きな円卓に椅子が10個ほど並んでいる。見るからに会議室のようだ。
「お茶を用意しますので、しばしお待ちください。」
そう言ってエンリコが部屋から出ていくと、ベレッタが話し出す。
「なんだか以前来た時よりもだいぶ対応が丁寧な気がするけど、どうしたんかね?」
「さあ?誘拐事件の時に神様に奇跡を与えられたからとか、クリスさんがいるからとかじゃないですか?」
「それだけかねえ…完全に目上に対する態度だよ。あれは。」
まあ確かに。まだ俺のことがバレてるわけじゃないと思うが…念の為発言や行動には気をつけよう。
しばらくして、お茶を持ったエンリコが現れた。と同時にその後ろについてきた人物に思わず目を見張る。
「あれ?教皇猊下ではないですか!わざわざきてくださったのですか?」
「タケル殿とクリス殿がいらっしゃったと聞きましてね。私も同席させていただいてよろしいでしょうか。私でも何かお役に立つことがあるかもしれません。」
「お忙しいのに…本当にすみません。ありがとうございます。」
「礼などそんな!私たち統一教幹部で皆さんを全力でサポートさせていただくつもりです。なんなりとお申し付けください。」
マルヴィン教皇まで恐縮した態度で頭を下げながら、協力すると言ってくれている。なんだか違和感があるが、そう言ってくれるのは正直ありがたかった。
クリスが今回初めて連れてきたジェレミアを紹介する。
「私はキール第2王子の筆頭執事兼監査部部長のジェレミアと申します。教皇猊下、神殿騎士団長に拝謁が叶いありがたく存じます。」
「ジェレミア殿。そのようにかしこまらないでください。私たちは神の前では等しく平等。楽に話してください。」
「ありがとうございます。教皇猊下。」
「挨拶が終わったところで、今回伺った件についてお話しいたします。」
クリスがここに来た経緯について説明している間、2人は神妙な顔で話を聞いていた。
「キール第2王子の執事の方がいらっしゃった時点で、おおよその内容はわかったつもりではいましたが、そんなに状況は悪いのですか?」
「はい。1週間後の審査会に疑いを覆すような証拠を提出しないといけません。」
「キール殿下は先の誘拐事件でも先頭に立って攫われた子供達を助け出した、いわば英雄とも呼べる方。さらには神からの奇跡で聖剣まで託された方でもあります。そのような方を蔑ろにし、ましてや王族から下ろすようなことがあれば、かならずや神の怒りに触れることになるでしょう。」
そういうと教皇は俺の方をチラリと見た。なんで?
「それではご協力いただけますか?」
「もちろんです。立ち会うだけでなく、教会に今でも参拝してくださる熱心な信者たちに真実を説きましょう。少しでもこのことを多くの人々が知ることも大切でしょう。」
「ありがとうございます!」
「それでは立ち合いは私が…」
エンリコが自分が立ち合いに参加すると言いかけたところで教皇に手で制される。
「いえいえ、立ち合いには私が行きます。私がいればさすがに議員といえど、拒否することは叶わないでしょう。私は議会や王家とは違う立ち位置にいますし、大昔ほどではありませんがそれなりに発言力はあります。必要があれば証言もいたしますよ。」
「猊下!何も猊下自ら…」
「エンリコ。私たちは最大限できることをクリス殿たちに協力すべしと決めたばかりでしょう?」
「は、はい…」
「じゃあこうしましょう。私とあなたの2人で立ち会いましょう。それでいいですか?」
「わかりました…」
世界で最も信者の多い統一教を統べる教皇自らが立ち会うと言って譲らないので、守る立場であるエンリコもそれに同意するしかなくなった。こうして、元騎士団長フランクの元に俺たちとマルヴィン教皇、エンリコ神殿騎士団長という教会のツートップが協力してくれることになった。
1日も早く疑いを晴らすべく、早速明日元騎士団長が投獄されている留置場に一緒にいく約束を取り付ける。
帰り際、以前も使用した小ぶりな礼拝堂に立ち寄って礼拝もしたのだが、その時教皇が俺の方を向いて手を組んでいたような気がするんだが…気のせいだろうか?
ちょっと本気で気をつけよう。こんなところで自分の正体がクリスにバレたら、せっかくここまで進んだ2人の距離が遥かに遠ざかってしまう。俺は心の中で『マルヴィン教皇は要注意』とメモをした。
サクリア大聖堂は以前来た時と変わりなく、いや寂れかけの雰囲気がより色こくなっていたが、そこにいる職員や神殿騎士の姿は人数も変わらず見ることができた。
それを見ると人々の信仰を取り戻すことも世界を結びつけるのには必要なことだよなと思う。王家への信用と神への信仰が帝国への強い意志となるはず。
だが、そのためには今はキーレンを助けることが大切だ。心のそこから国民のことを考えている王子を見捨てれば、きっとこの国は近い将来再起不能となるだろう。それだけは避けたい。
大聖堂に入り受付の職員にまずエンリコ騎士団長を呼び出してもらうようにお願いした。話をした職員が呼びに行ってくれた後すぐにバタバタと音を立ててエンリコ騎士団長がやってきた。
「タケル殿!クリス殿!ようこそ参られた!今日はどのような用件でいらっしゃった!?」
久しぶりに会うエンリコは満面の笑みで対応してくれる。それはクリスが神からのお告げを特別に受ける人物だからだろうが、なぜ俺の名前まで呼ぶのか?それもクリスより先に。
「ああ、エンリコ殿。突然訪問して申し訳ない。実は折り入ってお願いしたいことがありまして。」
「クリス殿のご要望とあらば、我ら統一教全力を持って支援する所存ですよ!とりあえずここではなんですから場所を変えましょう。さあどうぞこちらに!」
妙にハキハキした声には多少の緊張感も含まれている気がする。俺のことを尊敬している部活の後輩に話しかけられたような気分だ。
エンリコの誘導で以前も通った職員用の通路を通り、以前とは違う扉の前についた。中に入ると大きな円卓に椅子が10個ほど並んでいる。見るからに会議室のようだ。
「お茶を用意しますので、しばしお待ちください。」
そう言ってエンリコが部屋から出ていくと、ベレッタが話し出す。
「なんだか以前来た時よりもだいぶ対応が丁寧な気がするけど、どうしたんかね?」
「さあ?誘拐事件の時に神様に奇跡を与えられたからとか、クリスさんがいるからとかじゃないですか?」
「それだけかねえ…完全に目上に対する態度だよ。あれは。」
まあ確かに。まだ俺のことがバレてるわけじゃないと思うが…念の為発言や行動には気をつけよう。
しばらくして、お茶を持ったエンリコが現れた。と同時にその後ろについてきた人物に思わず目を見張る。
「あれ?教皇猊下ではないですか!わざわざきてくださったのですか?」
「タケル殿とクリス殿がいらっしゃったと聞きましてね。私も同席させていただいてよろしいでしょうか。私でも何かお役に立つことがあるかもしれません。」
「お忙しいのに…本当にすみません。ありがとうございます。」
「礼などそんな!私たち統一教幹部で皆さんを全力でサポートさせていただくつもりです。なんなりとお申し付けください。」
マルヴィン教皇まで恐縮した態度で頭を下げながら、協力すると言ってくれている。なんだか違和感があるが、そう言ってくれるのは正直ありがたかった。
クリスが今回初めて連れてきたジェレミアを紹介する。
「私はキール第2王子の筆頭執事兼監査部部長のジェレミアと申します。教皇猊下、神殿騎士団長に拝謁が叶いありがたく存じます。」
「ジェレミア殿。そのようにかしこまらないでください。私たちは神の前では等しく平等。楽に話してください。」
「ありがとうございます。教皇猊下。」
「挨拶が終わったところで、今回伺った件についてお話しいたします。」
クリスがここに来た経緯について説明している間、2人は神妙な顔で話を聞いていた。
「キール第2王子の執事の方がいらっしゃった時点で、おおよその内容はわかったつもりではいましたが、そんなに状況は悪いのですか?」
「はい。1週間後の審査会に疑いを覆すような証拠を提出しないといけません。」
「キール殿下は先の誘拐事件でも先頭に立って攫われた子供達を助け出した、いわば英雄とも呼べる方。さらには神からの奇跡で聖剣まで託された方でもあります。そのような方を蔑ろにし、ましてや王族から下ろすようなことがあれば、かならずや神の怒りに触れることになるでしょう。」
そういうと教皇は俺の方をチラリと見た。なんで?
「それではご協力いただけますか?」
「もちろんです。立ち会うだけでなく、教会に今でも参拝してくださる熱心な信者たちに真実を説きましょう。少しでもこのことを多くの人々が知ることも大切でしょう。」
「ありがとうございます!」
「それでは立ち合いは私が…」
エンリコが自分が立ち合いに参加すると言いかけたところで教皇に手で制される。
「いえいえ、立ち合いには私が行きます。私がいればさすがに議員といえど、拒否することは叶わないでしょう。私は議会や王家とは違う立ち位置にいますし、大昔ほどではありませんがそれなりに発言力はあります。必要があれば証言もいたしますよ。」
「猊下!何も猊下自ら…」
「エンリコ。私たちは最大限できることをクリス殿たちに協力すべしと決めたばかりでしょう?」
「は、はい…」
「じゃあこうしましょう。私とあなたの2人で立ち会いましょう。それでいいですか?」
「わかりました…」
世界で最も信者の多い統一教を統べる教皇自らが立ち会うと言って譲らないので、守る立場であるエンリコもそれに同意するしかなくなった。こうして、元騎士団長フランクの元に俺たちとマルヴィン教皇、エンリコ神殿騎士団長という教会のツートップが協力してくれることになった。
1日も早く疑いを晴らすべく、早速明日元騎士団長が投獄されている留置場に一緒にいく約束を取り付ける。
帰り際、以前も使用した小ぶりな礼拝堂に立ち寄って礼拝もしたのだが、その時教皇が俺の方を向いて手を組んでいたような気がするんだが…気のせいだろうか?
ちょっと本気で気をつけよう。こんなところで自分の正体がクリスにバレたら、せっかくここまで進んだ2人の距離が遥かに遠ざかってしまう。俺は心の中で『マルヴィン教皇は要注意』とメモをした。
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