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47 女神の系譜
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◇◇◇
「僕はね、この花園の価値に気が付いていないわけではなかった。むしろ、どんな大金を積んででも、喉から手が出るほど欲しいという気持ちもわかる。この花園は、シリウス一族が長年かけて築き上げてきた研究結果の集大成だ。……それでも。その場所がジェニファーの足かせになるのであれば、失ってもいいと思った。ジェニファーの想いも、一族の望みも知らずにね。傲慢だったよ」
「お父様……」
「ジェニファーは言ったんだ。シリウス一族の子ども達と、王家の行く末を見届けて欲しいと。そして、真実の後継者として相応しいものに、シリウス一族の全てを託すと。ソフィア、僕は君に……ジェニファーと同じ意思を持つ君に、全てを託すよ。ジークハルト殿下、ソフィアに一族の全てを託すことをお許しいただけますか?」
「ジーク……」
見上げるとジークは少し悲しそうな顔をしていた。それでも、こくりと頷いてくれた。
「ソフィア、君は君の望むように生きるといい。でも安心して。君は一人じゃないから。一人で全部背負おうなんて思わないで。私にもその夢の続きを見せて欲しい」
「ジーク、ありがとう。私、やってみる。シリウス一族から託されたこの場所を護ってみせる。だから協力してね。ジークの協力があったら百人力だわっ!」
そしてまだうだうだ考えているロイスにも振り返って話しかける。
「ねえ、『奴隷の首輪』もここで生み出されたものなら、どこかにきっと解毒薬があるはず。もしくは、完成されてなくても、必ず研究データは残ってるはずよ。あんたも協力してよね」
「あの毒薬の解毒薬が……」
「そう。毒には解毒薬が付きもの。毒を扱ってきたのなら必ず毒を中和させたり、効果を弱めたりさせる方法も一緒に考えたはずだわ」
「そうか……そうだな。もしなかったら、そのときは俺がこの手で作り出せばいいんだな」
「そういうこと。あんたの体にはシリウス一族の血が流れているんでしょう。お父様の話によれば、ある程度毒や薬に耐性はあるはずだから」
植物の中には触れるだけ、近寄るだけで害を及ぼすものも多い。長年色々な植物に触れる機会が多かったシリウス一族の人間は、おそらくそういったものに対する耐性が強いのだろう。研究者にはうってつけの体質だ。
「ここには無限の可能性が眠っているわ……いまだ解明されていない病の特効薬だって作れるはず」
「そうか、そうだな……。悪かった。俺もこの花園を護ることに協力させてもらう」
顔を見合わせ頷き合う私たちを見て父はにっこりと微笑む。
「もう一つ言い忘れてたことがあるんだけど」
「まだあるのっ!」
「今度はなんだ……」
同時に叫んだ私とロイスにジークが苦笑いしている。さっきからジークはすべてわかってる感じなのよね。
とてもさっき真実を明かされた人間とは思えない。本当はいつから知ってたんだろう。怪しい。
「シリウス一族は、かつて神のように神聖なる存在としてあがめられていたといっただろう?シリウス一族は地上に降りた女神の系譜と言われているんだ」
「「女神の系譜?」」
「そう。シリウス一族はもともと女系の一族でね。代々一族で最も優秀な女性が一族を率いて、跡を継いできた。毒に強い体質も、圧倒的に女子のほうが強い。つまり、女王を崇める一族だったんだ」
(ああ、だから、戦争を選ばなかったのか……なんだかわかる気がする)
そう思っていると、
「ああ、うん。なんか、わかる気がするわ」
と呟くロイスと目があった。
「お前には勝てる気しねーし」
真っすぐ宣言するロイスに追随するように頷く父とジーク。
「ああ、勝てないな」
「勝てないね」
なんとなくむかつくのは気のせいだろうか。
「僕はね、この花園の価値に気が付いていないわけではなかった。むしろ、どんな大金を積んででも、喉から手が出るほど欲しいという気持ちもわかる。この花園は、シリウス一族が長年かけて築き上げてきた研究結果の集大成だ。……それでも。その場所がジェニファーの足かせになるのであれば、失ってもいいと思った。ジェニファーの想いも、一族の望みも知らずにね。傲慢だったよ」
「お父様……」
「ジェニファーは言ったんだ。シリウス一族の子ども達と、王家の行く末を見届けて欲しいと。そして、真実の後継者として相応しいものに、シリウス一族の全てを託すと。ソフィア、僕は君に……ジェニファーと同じ意思を持つ君に、全てを託すよ。ジークハルト殿下、ソフィアに一族の全てを託すことをお許しいただけますか?」
「ジーク……」
見上げるとジークは少し悲しそうな顔をしていた。それでも、こくりと頷いてくれた。
「ソフィア、君は君の望むように生きるといい。でも安心して。君は一人じゃないから。一人で全部背負おうなんて思わないで。私にもその夢の続きを見せて欲しい」
「ジーク、ありがとう。私、やってみる。シリウス一族から託されたこの場所を護ってみせる。だから協力してね。ジークの協力があったら百人力だわっ!」
そしてまだうだうだ考えているロイスにも振り返って話しかける。
「ねえ、『奴隷の首輪』もここで生み出されたものなら、どこかにきっと解毒薬があるはず。もしくは、完成されてなくても、必ず研究データは残ってるはずよ。あんたも協力してよね」
「あの毒薬の解毒薬が……」
「そう。毒には解毒薬が付きもの。毒を扱ってきたのなら必ず毒を中和させたり、効果を弱めたりさせる方法も一緒に考えたはずだわ」
「そうか……そうだな。もしなかったら、そのときは俺がこの手で作り出せばいいんだな」
「そういうこと。あんたの体にはシリウス一族の血が流れているんでしょう。お父様の話によれば、ある程度毒や薬に耐性はあるはずだから」
植物の中には触れるだけ、近寄るだけで害を及ぼすものも多い。長年色々な植物に触れる機会が多かったシリウス一族の人間は、おそらくそういったものに対する耐性が強いのだろう。研究者にはうってつけの体質だ。
「ここには無限の可能性が眠っているわ……いまだ解明されていない病の特効薬だって作れるはず」
「そうか、そうだな……。悪かった。俺もこの花園を護ることに協力させてもらう」
顔を見合わせ頷き合う私たちを見て父はにっこりと微笑む。
「もう一つ言い忘れてたことがあるんだけど」
「まだあるのっ!」
「今度はなんだ……」
同時に叫んだ私とロイスにジークが苦笑いしている。さっきからジークはすべてわかってる感じなのよね。
とてもさっき真実を明かされた人間とは思えない。本当はいつから知ってたんだろう。怪しい。
「シリウス一族は、かつて神のように神聖なる存在としてあがめられていたといっただろう?シリウス一族は地上に降りた女神の系譜と言われているんだ」
「「女神の系譜?」」
「そう。シリウス一族はもともと女系の一族でね。代々一族で最も優秀な女性が一族を率いて、跡を継いできた。毒に強い体質も、圧倒的に女子のほうが強い。つまり、女王を崇める一族だったんだ」
(ああ、だから、戦争を選ばなかったのか……なんだかわかる気がする)
そう思っていると、
「ああ、うん。なんか、わかる気がするわ」
と呟くロイスと目があった。
「お前には勝てる気しねーし」
真っすぐ宣言するロイスに追随するように頷く父とジーク。
「ああ、勝てないな」
「勝てないね」
なんとなくむかつくのは気のせいだろうか。
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