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45 真実と決断のとき

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 ◇◇◇

「え、ちょっと待って、お父様がアリラン王国の王族なら、私もアリラン王国の王族ってこと?」

 アリラン王国と言えば他国に戦争を仕掛けては奴隷として徴収するような戦争馬鹿の治める国だ。アルサイダー商会で保護した元奴隷の子や、逃げてきた人たちも大勢いる。

「血筋的にはそうなるね」

「アリラン王国ってラピス王国と敵対してなかった?」

「ああ、その点は大丈夫。もうすぐ革命が起こって現王政はなくなる予定だから」

「「はぁ?」」

 革命とは王家にとって最も恐れるもの。国の根幹を揺るがすできごとだ。あまりにもあっけない物言いに呆れてしまうが、アリラン王国に限って言えばそれは喜ばしいことのようにも思う。それほど残虐王と名高いアリラン国王は人々にとって恐怖の的だった。

「アリラン王国は長い間犯し続けてきたツケをようやく払うことになるってことさ。僕はもうアリラン王家とは関係のない人間だし、そのことについては気にしなくていいよ」

 父はそういうが本当だろうか。万が一民衆によって王族が処刑されるのであれば、王弟であるという父や私も、身分がばれれば無事ではすまないはずだ。

「関係ないって言ったって……お父様に類が及んだりしないの。その、王族とばれたら処刑されるんじゃないの……」

「ん~まあ~そこはねぇ……」

 言葉を濁す父にジークがくすっと笑う。

「心配いらないよ。だってその革命を起こす張本人がガイル殿自身なんだから。アルサイダー商会が革命軍のスポンサーなんだよ」

「へ……」

 ジークの言葉に思わず間の抜けた返事を返してしまう。父がアリラン王国の王弟でしかも革命の首謀者?それって王位簒奪者ってことなのでは?いや、でも王政が無くなるって……

「お前の親父とんでもねーな」

 ロイスが呆れたように見つめてくるが、この言葉に関しては全く同意見だ。

「大体いつそんなことしてたのよ。ちっとも気付かなかったんだけど。え?じゃあ私たちこれからどうなっちゃうの?」

「まあ、この国にもアリラン王国にも協力者は大勢いるからね。僕は必要な資金や物資を援助しただけ。僕なりの自国に対する贖罪さ。アリラン王国はこれから大きな変革のときを迎えることになる。もうあの国に王族なんか必要ないんだ。これからは共和国として民主化に向けての制度作りが大切になるだろうね。きっと、長い年月が必要になるだろうけど……引き続き支援していくつもりさ」

「うん……それがいいのかもね」

 なんとなく父の国を想う気持ちも理解できる気がした。母とのことだけでなく、国を捨てるにはそれなりの理由と覚悟があったのだろう。

「それで?俺たち三人を今この場所に集めてシリウス一族について語った理由はなんなんだ。そろそろ教えてくれてもいいだろう?」

 ロイスが父を真っすぐに見つめる。私も、その答えが知りたかった。

「僕はね、ジェニファーからシリウス一族の真実を預かったんだ。でも、僕はシリウス一族ではないからね。僕の意思でどうこうすることはできない。だからロイス殿、ソフィア、正当なシリウス一族の後継者たる君たち二人に選んで欲しいんだ。そしてラピス王家の正当な後継者たるジークハルト殿下。君にもぜひ見届けてもらいたい」

 三人で顔を見合わせてこくりと頷き合う。

「選んでほしい。この花園をどうしたい?シリウス一族の残した英知を、シリウス一族の持つ力を、君たちはどうしたい?滅ぼすか、存続させるか。決めるのは君たちだ」
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