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次に目が覚めたのは真っ暗な部屋の中。両手と両脚を縄で縛られ、部屋の中央付近に転がされているようだ。か弱い淑女に対し、せめてベッドに寝かせるくらいの心遣いはできないのか。最低である。攫った奴がろくでもない奴であることだけは分かった。
締め切った部屋には光が届かず、あれからどの位の時間が過ぎたのかも分からない。慌ててキャロルちゃんの姿を探す。
「キャロルちゃん!キャロルちゃん!」
「な、馴れ馴れしいですわ!」
暗闇の中からちょっとツンツンした声が返ってきてほっとする。
「良かったぁ。無事だったんだね……待ってて、今そっちに行くから……」
「動くな」
声のする方ににじり寄ろうとしたそのとき、冷たい男の声が響いた。途端首筋に感じる冷たい感触。
―――剣を突き付けられている。
「女、貴様何者だ」
「だ、誰ですの!彼女は私のお友達ですわっ!無礼なことをしたら許しませんっ!」
(キャロルちゃん!)
恐怖に声を震わせながら、私のことを庇ってくれようとするキャロルちゃんにジーンとする。私たち!もう友達だよね!?
しかし、剣を突きつけている男はキャロルちゃんの必死の声にも動じる気配がない。
「お前は必要ない。必要なのはそこの小娘だけだ。面倒なことにならないうちにここで処分する」
殺される。そう思った私は必死で声を張り上げる。
「私はアルサイダー男爵家の娘、ソフィア・アルサイダー!身の代金の額なら誰にも負けないわっ!こ、殺したら後悔するわよっ」
突き付けられた剣を前に声が震える。
「アルサイダー……くくっ、成金娘か。こんな所で会おうとはな。良いだろう。せいぜい身の代金の額を吊り上げるとしよう」
首から外された剣をカチャリと腰にしまう音がして、取りあえず胸を撫で下ろす。首の皮一枚で繋がったようだ。
「な、何者ですの。こんなことをしてただで済むと思わないことねっ!すぐにお父様が兵を率いて助けにきて下さるわっ」
果敢に言い募るキャロルちゃんにハラハラする。あまり煽ると厄介だ。
「ふん。随分傲慢な小娘だ。全く可愛げがないな」
「なっ……」
「これ以上騒いだら二人まとめて殺す。精々大人しくしておけ」
そういい残すと部屋を出て行く気配がした。張り詰めていた空気がなくなりほっとする。
「キャロルちゃん……」
囁くように呼び掛け、キャロルちゃんの元に何とか転がっていく。
「う、う、うう……」
声を押し殺して泣くキャロルちゃんを見て胸が痛む。泣くほど怖かったのに必死で私を庇ってくれたなんて……
「あの男!許しませんわ!この私に向かって可愛げのない女だとっ」
うん。やっぱりキャロルちゃんは可愛いな。こんな状況なのにちょっぴりほっこりした私だった。
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