落ちぶれて捨てられた侯爵令嬢は辺境伯に求愛される~今からは俺の溺愛ターンだから覚悟して~

しましまにゃんこ

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俺の婚約者が可愛くない

4.かわいい義妹

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◇◇◇

 それから数日たったある日、両家から訪問を願い出る手紙が届いた。俺は双方に快諾の返事を出した。

「初めましてカイル様。マリアナ=ドーサです」

 マリアナのカーテシーは年相応にちょっと不格好で、思わず笑ってしまった。ちょうど俺とソレイユが出会ったときと同じ五歳。まだまだ小さな子どもだ。そうだよな。これぐらいが普通だよな。ソレイユのカーテシーは本当に完璧すぎた。

 しかし、笑ったのを馬鹿にされたと思ったようで、マリアナが顔を赤くして目を潤ませたので慌ててフォローを入れる。

「あ、ごめん。馬鹿にして笑った訳じゃないんだ。初めてソレイユに逢ったときのこと思い出してさ。さすが姉妹、そっくりだな」

 マリアナはソレイユに良く似ていた。柔らかな蜂蜜色の髪は、ソレイユが綺麗なストレートでマリアナが緩やかな癖毛。すみれ色の瞳は、ソレイユのほうがちょっと色が濃い。小さい頃のソレイユを思い出して、思わず顔がにやける。うん、やっぱりあのときのソレイユも可愛かったな。

「カイル様……この度は妹と共に訪問の許可をいただきありがとうございます」

 ソレイユが気まずそうに、でもいつものように完璧なカーテシーを見せる。

「やぁソレイユ、逢いたかったよ。まぁ、取り敢えず皆でお茶でもしようか」

 俺は二人を庭園に誘う。今日もソレイユの好きな紅茶と小さい子が好きそうなお菓子をたっぷり用意してあった。

 相変わらずソレイユは甘くない紅茶を飲んで、俺はたっぷりの蜂蜜を入れる。マリアナも入れたそうだったから勧めると、嬉しそうにたっぷり入れていた。そうだろうそうだろう。やっぱり甘い方が旨いよな。

 俺がマリアナを見てにこにこしていると、ソレイユが意を決したように話し掛けてきた。

「あ、あの!私たちの婚約のお話ですが……」

「ん?ああ。俺はソレイユじゃないと結婚しない。もしソレイユが結婚してくれないなら、もう誰とも結婚するつもりはないから」

 俺の言葉にソレイユはポカンと口を開ける。

「で、でも。妹が……」

「ソレイユの妹、可愛いね。マリアナはなんで俺と結婚したいの?俺が好きな訳じゃないんでしょ?」

 初めて逢ったとき、俺は気付いた。マリアナは俺なんかちっとも眼中にないってことに。そりゃそうだ。あったこともないんだから。でも、ソレイユに似ていると言ったら弾けるような笑顔をみせてくれたし、綺麗なカーテシーをきめるソレイユを、キラキラした目で見つめていた。

「ソレイユお姉さまと、もっと一緒にいたいから……」

「えっ!マリアナ……」

「お姉さまは私のお姉さまなのに、お家にいなくて寂しい。お姉さまはカイル様の婚約者だから、マリアナよりもカイル様と一緒にいないと駄目なんでしょ」

 なるほど。それで王子の婚約者選びの席でも、始終不機嫌だったのか。王子妃候補になったら、ますます王都から離れられなくなるもんな。

「カイル様、私もお姉さまと一緒にカイル様のお嫁さんにして下さい」

 今度は俺が呆気に取られた。
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