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6. 初夜に「別にあなたに愛されたいなんて思っていない」と告げたところ、夫が豹変して怖い
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◇◇◇
新婚初夜。ベッドに真っ赤な薔薇の花弁を散らしたやたら気合の入った室内で。何時間も待たされた私は、ようやくやってきた夫に安堵のため息をついた。どうやら初夜をすっぽかす気は無かったらしい。
しかし気まずい。今日から夫婦と言われても、そう簡単に受け入れられるものではない。何しろ夫は、結婚するまでろくに話したこともない相手なのだ。
「あの、私、別にアレン様に愛して貰おうなんて思っていませんから」
あまりの気まずさに思わずポツリと呟いた。知っているのだ。夫となったアレン様が本当に求婚したかったのは、幼馴染みである姉のエリスだということを。
エリス姉様は優秀な宮廷魔術師で、アレン様は更にその上司である宮廷魔術師長。スーパーエリートである。普段からパートナーとしても支え合っており、誰が見てもお似合いのカップルだ。
だから、我が家にアレン様から婚約の打診があったとき、誰もがエリス姉様宛だと思った。それなのに、蓋を開けてみれば何故か私の名前が記されていて。
「エリス様にこっぴどく振られたのでは」
などという話がまことしやかに囁かれることになった。
それでも、なぜ私を選んだのか見当もつかない。姉妹だから、エリス姉様に似ているところが一つぐらいあるかもと期待したのだろうか。そっとアレン様を見ると、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「ごめんね、マリアンナ。僕を、許して欲しい」
初夜に新妻に掛ける最初の言葉が謝罪の言葉なのだ。やはり、そうなのだなと諦めがついた。
強いアルコールの香り。お酒を随分召されたようだ。酒の勢いを借りなければならないほど、寝所に来るのが嫌だったのだろう。酒に酔っていても、頬に触れた手は驚くほど冷たい。
「無理、しないで下さい。私も今夜は疲れました。もう休みます。アレン様もお休みになって下さい。……こちらで一緒にお休みになりますか?」
声が震える。侍女たちに張り切って着せられた薄い夜着も、夫の興味を引けなければ寒いだけだ。けれど、初夜に別々の部屋で寝るなど、使用人たちに何を噂されるか分からない。
精一杯の勇気を出してそっと目線で隣を示すと、アレン様は顔を真赤にして目を逸らした。図々しい上にはしたない女だと、怒らせてしまっただろうか。
「同じベッドが嫌なら、私はソファーでも……」
慌てて言い直したが、
「いや、同じベッドでいい」
短くそう言うと、くるりと背を向けて隣に横たわる。きしむベッドの上で、アレン様のサラリとした黒髪がほんの少し水を含んで、爽やかな香油の匂いが鼻をくすぐった。
(綺麗な瞳を見せては下さらないのね)
アレン様の魔力を秘めて煌めく金の目が、私は好きだった。姉と同じ、強力な魔力を持って生まれた特別な人。その目に惹き込まれるように、私はいつも彼の姿を追わずにはいられなかった。幼い子どもの頃から、ずっと。
ずっとずっと、憧れていたのだ。彼の隣に立てるほどには、私には魔力の才能が足り無かったけれど。
振り向いて欲しかった。抱き締めて欲しかった。一度でいいから、その瞳に私だけ映して欲しかった。
だから、姉の身代わりでもいい。少しでも彼のそばにいられるのなら、愛されなくても構わない。そう、自分に言い聞かせて今日の日を迎えた。
けれど、向けられた背中がやっぱり悲しくて。そっとアレン様の背中に手を伸ばす。
「アレン様、好きです。ずっと、お慕いしておりました。例えあなたが私を愛することがなくても」
ポツリと呟いた言葉は、アレン様に届いただろうか。涙混じりの吐息だけが、夜の帷に、静かに零れていった。
◇◇◇
結局あのまま寝てしまったらしい。好きな人の隣で眠れるだろうかなど、無用の心配だった。遅くまで起きて待っていたせいか、もうすっかり日も高いようだ。燦々と降り注ぐ朝日が頬を照らす。その眩しさに思わず顔を顰めた。
「おはよう、マリー。お寝坊さんだな。もう目は覚めたかい?」
カーテンを開けながらにこやかに微笑む美丈夫に思わず目を見張る。……アレン様?
「さぁ、もう起きて。一緒に朝食にしよう。今日のメニューはプレーンオムレツにヨーグルトとサラダ。フルーツを少々。搾りたてのりんごジュースを用意したよ」
「あ、はい」
「君が毎日食べていると聞いて特別に用意させたんだが、あってるかな?」
「あってます」
「そうか!良かった!」
ぱぁ~と顔を輝かせる人を見て思う。(この人、誰?)昨日の無口だったアレン様とのギャップが凄すぎてついて行けない。
あれ?アレン様ってこんな感じのキャラだった?なんだかイメージが違いすぎませんか?
混乱する私にアレン様は甘やかに微笑みかける。
「昨日はごめんね?さすがの僕も緊張して飲みすぎちゃった。何しろ初恋の女の子とようやく結婚できたけど、ろくに話したこともなかったから、急にがっついて嫌われたらと思うと怖くて」
初恋の女の子?誰が?
頭の中にクエスチョンマークが咲き乱れる。
「初めて魔法を使ったとき、君が僕に言ったんだ。世界一素敵な魔法使いさんだって。僕はあのときの君のキラキラした瞳にすっかり恋に落ちて、君に褒められたくて魔法の勉強を頑張ったんだよ。ほら」
アレン様の指先から、花が溢れ出す。薔薇、百合、フリージア、スイートピー、コスモス、アネモネ。次から次へと色とりどりの花が落ちる。幼い頃、アレン様が見せてくれた花の魔法。私もあのとき、彼に恋をしたのだ。
「昨日のベッドの薔薇もね、僕が用意したものなんだ。君に喜んでほしくて。使用人たちからは、今どきそんなの流行らないって言われたんだけどね」
はにかんだように微笑むアレン様から目が離せない。
「そ、そうだったんですね……」
良かった。無駄に張り切った部屋だなんて口にしなくて本当に良かった!
「愛してるよ、マリー。君と結婚できたなんて夢みたいだ」
私はすっかり混乱していた。まって、アレン様の初恋の相手は私だったの?じゃあ、エリス姉様のことが好きだっていうのは、単なる私の勘違い?
そう悟った瞬間、胸に甘やかな花が咲く。
「好きで好きで。たまらなく好きで。年頃になってどんどん綺麗になっていく君が眩しくて、ずっと目で追っていたんだ」
(私も、ずっとそうでした)
「でも、思い切って交際を申し込もうとエリスに相談したら、君にはすでに好きな男がいるから諦めろと言われてね」
(エリスお姉様!!!)
「他の男になんか取られてたまるかと、一足飛びに結婚を申し込んだんだ。君に恨まれても構わない。愛されなくてもいい。僕のものにしてしまおうって」
「アレン様……」
「でも、いざ君を前にすると、やっぱり怖かった。面と向かってあなたを愛するつもりはないなんて言われたら、僕、何をするか分からなかったし。だから、君から愛してもらおうなんて思っていないって言われたとき、絶望したよ」
「あ、あれは、アレン様が私のことなんか愛していないと思っていたから、負担になりたくなくて」
「僕はあのとき、君を滅茶苦茶にしてしまいそうで、怖くて背中を向けたんだ」
「えっ……」
「てっきり、好きな男が忘れられないから、触れるなって言われてるのかと思って。そのくせ同じベッドで寝ろなんて、なんて拷問だって思ったよ」
「そ、そんなつもりじゃ……」
「ん。だからね、好きだって言って貰えて嬉しかった。ずっと僕のことが好きだったって、あれ、本当だよね?」
真っ赤になってコクコクと頷く。恥ずかしい!朝になってみると死ぬほど恥ずかしい!
「良かった!マリーと両想いだったなんて夢みたいだ。エリスとは、ちょっと良く話し合わないといけないようだね」
急にスッと笑顔の消えたアレン様に慌てて理由を話す。
「ち、違うんです!エリスお姉様とアレン様が恋人同士だって思ってたから、お姉様に好きな人がアレン様だって言えなくて!」
私の言葉にアレン様は心底嫌そうな顔をする。
「僕がエリスと?冗談やめてよ」
「そ、その、お二人は幼馴染でパートナーだし」
「魔術師なんてみんな、自分の魔法が一番だと思ってる変態揃いだからね。魔術師同士なんて絶対うまく行かないよ」
「そ、そうなんですか」
「大体、僕が初めてこの魔法を見せたときのエリスの言葉覚えてる?『馬鹿か。花なんか出しても腹の足しにもならんわ』だよ?あれで恋に落ちる男がいると思う?」
「あははは……」
そんな素直な姉も、私は好きなんだけど。
「とにかく、僕が好きなのはマリーだけだから」
ぐいっと顔を近付けられて、綺麗な金の瞳に思わず見惚れる。その瞳には、私だけが映っていた。嬉しくて、どうにかなりそうだ。
「だから、朝食を食べ終わったらもう一度最初からチャレンジしたいんだけど、いいよね?」
「何をですか?」
アレン様の言葉にきょとんと首を傾げる。新婚の休暇として、三か月の特別休暇が認められているけれど、今日は特に予定は無いはずだ。何しろ初夜の翌日だし。
そこまで考えてふと顔を上げる。
「僕たちの初夜は、まだ始まってないだろう?」
燦々と降り注ぐ朝日の中、爽やかに微笑む愛しい夫。
「大丈夫。休暇はたっぷり残ってるから。君をどんなに愛してるか、ちゃんと教えてあげるよ。朝も昼も夜もね?」
おしまい
新婚初夜。ベッドに真っ赤な薔薇の花弁を散らしたやたら気合の入った室内で。何時間も待たされた私は、ようやくやってきた夫に安堵のため息をついた。どうやら初夜をすっぽかす気は無かったらしい。
しかし気まずい。今日から夫婦と言われても、そう簡単に受け入れられるものではない。何しろ夫は、結婚するまでろくに話したこともない相手なのだ。
「あの、私、別にアレン様に愛して貰おうなんて思っていませんから」
あまりの気まずさに思わずポツリと呟いた。知っているのだ。夫となったアレン様が本当に求婚したかったのは、幼馴染みである姉のエリスだということを。
エリス姉様は優秀な宮廷魔術師で、アレン様は更にその上司である宮廷魔術師長。スーパーエリートである。普段からパートナーとしても支え合っており、誰が見てもお似合いのカップルだ。
だから、我が家にアレン様から婚約の打診があったとき、誰もがエリス姉様宛だと思った。それなのに、蓋を開けてみれば何故か私の名前が記されていて。
「エリス様にこっぴどく振られたのでは」
などという話がまことしやかに囁かれることになった。
それでも、なぜ私を選んだのか見当もつかない。姉妹だから、エリス姉様に似ているところが一つぐらいあるかもと期待したのだろうか。そっとアレン様を見ると、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「ごめんね、マリアンナ。僕を、許して欲しい」
初夜に新妻に掛ける最初の言葉が謝罪の言葉なのだ。やはり、そうなのだなと諦めがついた。
強いアルコールの香り。お酒を随分召されたようだ。酒の勢いを借りなければならないほど、寝所に来るのが嫌だったのだろう。酒に酔っていても、頬に触れた手は驚くほど冷たい。
「無理、しないで下さい。私も今夜は疲れました。もう休みます。アレン様もお休みになって下さい。……こちらで一緒にお休みになりますか?」
声が震える。侍女たちに張り切って着せられた薄い夜着も、夫の興味を引けなければ寒いだけだ。けれど、初夜に別々の部屋で寝るなど、使用人たちに何を噂されるか分からない。
精一杯の勇気を出してそっと目線で隣を示すと、アレン様は顔を真赤にして目を逸らした。図々しい上にはしたない女だと、怒らせてしまっただろうか。
「同じベッドが嫌なら、私はソファーでも……」
慌てて言い直したが、
「いや、同じベッドでいい」
短くそう言うと、くるりと背を向けて隣に横たわる。きしむベッドの上で、アレン様のサラリとした黒髪がほんの少し水を含んで、爽やかな香油の匂いが鼻をくすぐった。
(綺麗な瞳を見せては下さらないのね)
アレン様の魔力を秘めて煌めく金の目が、私は好きだった。姉と同じ、強力な魔力を持って生まれた特別な人。その目に惹き込まれるように、私はいつも彼の姿を追わずにはいられなかった。幼い子どもの頃から、ずっと。
ずっとずっと、憧れていたのだ。彼の隣に立てるほどには、私には魔力の才能が足り無かったけれど。
振り向いて欲しかった。抱き締めて欲しかった。一度でいいから、その瞳に私だけ映して欲しかった。
だから、姉の身代わりでもいい。少しでも彼のそばにいられるのなら、愛されなくても構わない。そう、自分に言い聞かせて今日の日を迎えた。
けれど、向けられた背中がやっぱり悲しくて。そっとアレン様の背中に手を伸ばす。
「アレン様、好きです。ずっと、お慕いしておりました。例えあなたが私を愛することがなくても」
ポツリと呟いた言葉は、アレン様に届いただろうか。涙混じりの吐息だけが、夜の帷に、静かに零れていった。
◇◇◇
結局あのまま寝てしまったらしい。好きな人の隣で眠れるだろうかなど、無用の心配だった。遅くまで起きて待っていたせいか、もうすっかり日も高いようだ。燦々と降り注ぐ朝日が頬を照らす。その眩しさに思わず顔を顰めた。
「おはよう、マリー。お寝坊さんだな。もう目は覚めたかい?」
カーテンを開けながらにこやかに微笑む美丈夫に思わず目を見張る。……アレン様?
「さぁ、もう起きて。一緒に朝食にしよう。今日のメニューはプレーンオムレツにヨーグルトとサラダ。フルーツを少々。搾りたてのりんごジュースを用意したよ」
「あ、はい」
「君が毎日食べていると聞いて特別に用意させたんだが、あってるかな?」
「あってます」
「そうか!良かった!」
ぱぁ~と顔を輝かせる人を見て思う。(この人、誰?)昨日の無口だったアレン様とのギャップが凄すぎてついて行けない。
あれ?アレン様ってこんな感じのキャラだった?なんだかイメージが違いすぎませんか?
混乱する私にアレン様は甘やかに微笑みかける。
「昨日はごめんね?さすがの僕も緊張して飲みすぎちゃった。何しろ初恋の女の子とようやく結婚できたけど、ろくに話したこともなかったから、急にがっついて嫌われたらと思うと怖くて」
初恋の女の子?誰が?
頭の中にクエスチョンマークが咲き乱れる。
「初めて魔法を使ったとき、君が僕に言ったんだ。世界一素敵な魔法使いさんだって。僕はあのときの君のキラキラした瞳にすっかり恋に落ちて、君に褒められたくて魔法の勉強を頑張ったんだよ。ほら」
アレン様の指先から、花が溢れ出す。薔薇、百合、フリージア、スイートピー、コスモス、アネモネ。次から次へと色とりどりの花が落ちる。幼い頃、アレン様が見せてくれた花の魔法。私もあのとき、彼に恋をしたのだ。
「昨日のベッドの薔薇もね、僕が用意したものなんだ。君に喜んでほしくて。使用人たちからは、今どきそんなの流行らないって言われたんだけどね」
はにかんだように微笑むアレン様から目が離せない。
「そ、そうだったんですね……」
良かった。無駄に張り切った部屋だなんて口にしなくて本当に良かった!
「愛してるよ、マリー。君と結婚できたなんて夢みたいだ」
私はすっかり混乱していた。まって、アレン様の初恋の相手は私だったの?じゃあ、エリス姉様のことが好きだっていうのは、単なる私の勘違い?
そう悟った瞬間、胸に甘やかな花が咲く。
「好きで好きで。たまらなく好きで。年頃になってどんどん綺麗になっていく君が眩しくて、ずっと目で追っていたんだ」
(私も、ずっとそうでした)
「でも、思い切って交際を申し込もうとエリスに相談したら、君にはすでに好きな男がいるから諦めろと言われてね」
(エリスお姉様!!!)
「他の男になんか取られてたまるかと、一足飛びに結婚を申し込んだんだ。君に恨まれても構わない。愛されなくてもいい。僕のものにしてしまおうって」
「アレン様……」
「でも、いざ君を前にすると、やっぱり怖かった。面と向かってあなたを愛するつもりはないなんて言われたら、僕、何をするか分からなかったし。だから、君から愛してもらおうなんて思っていないって言われたとき、絶望したよ」
「あ、あれは、アレン様が私のことなんか愛していないと思っていたから、負担になりたくなくて」
「僕はあのとき、君を滅茶苦茶にしてしまいそうで、怖くて背中を向けたんだ」
「えっ……」
「てっきり、好きな男が忘れられないから、触れるなって言われてるのかと思って。そのくせ同じベッドで寝ろなんて、なんて拷問だって思ったよ」
「そ、そんなつもりじゃ……」
「ん。だからね、好きだって言って貰えて嬉しかった。ずっと僕のことが好きだったって、あれ、本当だよね?」
真っ赤になってコクコクと頷く。恥ずかしい!朝になってみると死ぬほど恥ずかしい!
「良かった!マリーと両想いだったなんて夢みたいだ。エリスとは、ちょっと良く話し合わないといけないようだね」
急にスッと笑顔の消えたアレン様に慌てて理由を話す。
「ち、違うんです!エリスお姉様とアレン様が恋人同士だって思ってたから、お姉様に好きな人がアレン様だって言えなくて!」
私の言葉にアレン様は心底嫌そうな顔をする。
「僕がエリスと?冗談やめてよ」
「そ、その、お二人は幼馴染でパートナーだし」
「魔術師なんてみんな、自分の魔法が一番だと思ってる変態揃いだからね。魔術師同士なんて絶対うまく行かないよ」
「そ、そうなんですか」
「大体、僕が初めてこの魔法を見せたときのエリスの言葉覚えてる?『馬鹿か。花なんか出しても腹の足しにもならんわ』だよ?あれで恋に落ちる男がいると思う?」
「あははは……」
そんな素直な姉も、私は好きなんだけど。
「とにかく、僕が好きなのはマリーだけだから」
ぐいっと顔を近付けられて、綺麗な金の瞳に思わず見惚れる。その瞳には、私だけが映っていた。嬉しくて、どうにかなりそうだ。
「だから、朝食を食べ終わったらもう一度最初からチャレンジしたいんだけど、いいよね?」
「何をですか?」
アレン様の言葉にきょとんと首を傾げる。新婚の休暇として、三か月の特別休暇が認められているけれど、今日は特に予定は無いはずだ。何しろ初夜の翌日だし。
そこまで考えてふと顔を上げる。
「僕たちの初夜は、まだ始まってないだろう?」
燦々と降り注ぐ朝日の中、爽やかに微笑む愛しい夫。
「大丈夫。休暇はたっぷり残ってるから。君をどんなに愛してるか、ちゃんと教えてあげるよ。朝も昼も夜もね?」
おしまい
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