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第2章 冒険のはじまり
13 ミハエルは優等生
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「ティアラ、ティアラに受け取って欲しいものがあるんだ」
ひとりで庭園を散歩中、今度はミハエルに呼び止められる。ミハエルが差し出したのは、深緑に輝く石のついた可愛いネックレスだった。石の周りは繊細な金細工が施されており、つるバラが絡まるようなデザインが優美で可愛らしい。
「わぁ!可愛いネックレス!貰ってもいいの?これ……凄く綺麗な石だね!でも宝石じゃないよね。もしかして魔石かな?」
「正解。よくわかったね。これは、ネックレス自体が魔道具なんだ」
「え?これが魔道具なの?」
「うん。使い方を教えてあげるね。付けてあげてもいいかい?」
「ありがとう」
ティアラが無邪気にくるりと後ろを向くと、ミハエルはそっとティアラの首にネックレスを付けた。
「ティアラはダメだね。もしこれがティアラにとって良くないアイテムだったらどうするの?」
「え?良くないアイテムって?」
「例えば、ティアラの意志を奪ったり、僕以外の男を寄せ付けなくなったりするアイテムだったらどうする?」
「え?え?だ、だってミハエルはそんなことしないでしょ?」
慌てるティアラにミハエルはくすりと笑ってみせる。
「そうだね。僕はそんなことしない。だって、ティアラが悲しむ顔はみたくないからね。僕はティアラにいつも笑顔でいて欲しいんだ」
そういいながら、ミハエルはティアラに気付かれないようにネックレスにそっと口付ける。
「これはね、ティアラにとってのお守りだよ。どんなに遠くにいても、この魔道具があれば届けたい人に声を届けることが出来るんだ」
「どんなに遠くでも……」
「そう。ただし、声を届けたい人の魔力を検知できるものが必要だけど。髪の毛や爪とか体の一部でもいいし、魔石を作り出せるなら魔石がてっとりばやいかな」
魔石とはようするに魔力の塊なので、魔力を持つ生き物は自分の魔力を凝縮させることで魔石を作り出すことができる。魔力の強いものほど、大きく、美しく、硬度の高い魔石を作り出すことができ、こうしてできた魔石には魔力が宿るのだ。
「もしかしてこれ、ミハエルの作った魔石なの?」
「そ。だから、僕にはそれを付けてるだけで声を届けることができるよ。もちろん、ティアラが意識して使わない限り勝手に声が聞こえることはないから安心して」
「凄いね!これ、大発明じゃない?」
「ふふ、そうだね。大発明だと思う。だけど、高い風属性をもつ僕でもこの大きさの魔石をつくるのに2年も掛かっちゃったから量産は難しいかな」
「そんなに?そんなに大切なもの、私が貰っちゃっていいの?」
「これは、ティアラのために作ったものだから。ティアラが困ったとき、危ないとき、悲しいとき、僕を思い出して欲しい。空を駆けて、すぐに駆けつけるから」
「ミハエル……」
「もちろん、僕だけじゃなくみんなが君の元に駆けつけたいと思うだろうけど。だから、他のみんなも駆けつけられるように作ったんだ」
「ミハエル、私のことを考えてくれてありがとう。凄く嬉しい。大切にするね」
「少しでも、君の役にたてたら嬉しい」
にっこり微笑むミハエルに胸が熱くなる。日溜まりのように暖かなミハエルの想いはティアラの胸に心地良く響いた。
「ミハエルは、本当に優しいね」
「僕が本当に優しくできるのはティアラにだけだけどね?」
「そ、そんなことないでしょ!ミハエルはいつだって皆に優しいじゃない」
「うーん。なるべくみんなに優しくしたいって思ってるよ。でもさ、無条件で何でもしてあげたいって想えるのはティアラしかいないんだ」
「あ、ありがと」
「ティアラもきっと、恋したらわかるよ。それが僕ならいいんだけど」
「み、ミハエルもそんなこと言うの?」
「ん?ジャイルにも言われた?」
「い、言われた……」
「そうだねー、まだティアラには早いかもしれないけど。僕たちはとっくに恋に落ちてるんだから仕方ないね」
「恋……」
「そう。恋。ティアラは僕たちの初恋だから。覚悟しといて?」
颯爽と去っていくミハエルの後ろ姿を呆然と見送るティアラ。二人の様子を執務室の窓からそっと眺めていたカミールとアデルはこっそり溜め息を付いた。
「なぁアデル、ジャイル王子もミハエル王子も最近ちょっと変わったと思わないか?」
「ああ。まだまだガキだと思ってたんだがなぁ。一人前の男の顔をするようになったな」
「ティアラは、誰を選ぶんだろうな……」
「カミールはどう思う?」
「考えたくもないな」
「気が合うな。俺もだ」
まだまだティアラの恋は発展途上のままでいてほしい兄たちだった。
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