テイマーなのに獣人ばかりにモテすぎて困ってます!~彼女はまだツンデレ獣人に番認定されたことに気付いてない~

しましまにゃんこ

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第二章 ロルフとリリアの危険な冒険!?

第4話 フェンリルゲットだぜ!?

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 ◇◇◇

 リリアとロルフは、森の中心部に向かっていた。以前迷い込んだことはあるものの、リリアは基本的に森の入り口付近しか探索することはない。森の中心部に行くのは今回が初めてだ。中心部での探索は、ロルフと一緒でなければ叶わないだろう。

「ロルフは森の中心部に良くくるの?」

「そうだな。この森に来るときは手っ取り早く中心部に向かって、目的の魔物を狩り終わったらとっとと帰ることにしてる。森の中心部は特に瘴気が立ちこめてるから、森の中を長く探索することはないな」

「なるほど。短時間で勝負をつけないと瘴気にやられちゃうんだね」

「リリアも無理はするな。危ないと思ったらすぐに撤退するからな。」

「わかった!」

 ◇◇◇

 途中何匹かの魔物に遭遇するものの、すぐに逃げられてしまう。ロルフが強すぎるため怯えているのかもしれない。

「ううー!やっぱり逃げちゃうなぁ」

「瀕死状態にしてやろうか?」

「それは最終手段でお願い。瀕死にしといて仲間になれっていうのは、やっぱりなんか違う気がするし」

「そうだな。そういうのはリリアの属性じゃない気がするな。そもそも攻撃魔法も攻撃系の特技も無いわけだし」

「だよね。やっぱり自然と心が通じ合うパターンじゃないかと……って、何笑ってんのよ。かんじわるっ!」

「ぷっ、いや、ごめん。でもそうだな。リリアは案外本当にそうかもしれない」

「じゃあ笑わないでよね!」

「悪かった」

 ◇◇◇

 後少しで中心部、というところで、少し開けた場所に出た。周りに木がないため、見晴らしのいい場所だ。

「よし、取りあえずここで一旦休憩しよう。飯食ったら再開な?」

「はぁ、もうお腹ペッコペコだよー!今日はよく歩いたよねっ!」

「いや、これからさらに歩くけどな?」

「うう、今は忘れていたかった……」

「一流の冒険者になるためには体力も大事だからな?しっかり休んで少しでも回復させろ」

「うん!今日のお弁当は私の手作りだよ!」

「おっ、うまそ。お前、料理の才能あるよな。猫として飼われてたとき、お前の料理食うのがめっちゃ楽しみだった」

「えへへ、料理には結構自信あるんだー。ギルドの人気メニューも何品か私が任されてるんだよ!」

「凄いな。マスター、結構料理にうるさいんだぜ?昔国外に武者修行の旅に出たことあるっていってたし」

「料理で?」

「料理で。ほんとは料理人になりたかったんだと。で、旅費や食材を仕入れるために冒険者してたら、そっちのほうが忙しくなって、気がついたらギルドマスターまで登りつめてたらしい」

「い、意外な経歴!」

「だからギルドの食堂、上手くて評判なんだぜ?食堂目当てにアリシア王国で冒険者になるやつもいるしな」

「ほえええー。どうりで、美味しいはずだよね。」

 ロルフとリリアが和やかに食事を楽しんでると、不意に草むらから小さな子犬が飛び出してきた。真っ白なフカフカの毛がモコモコしていて可愛い。「くうーん」と鳴くと、リリアのそばにきてぐるぐると回っている。

「あれ、もしかしてお腹が空いてるのかな?ほら、おいで、あげるよ」

「リリア……」  

 緊張し、息をのむロルフ。

「よーしよし、いいこだね。美味しい?もっと食べる?」

「ワンっ!」

 子犬は嬉しそうにゴロンと転がってお腹をみせる。あまりの可愛さにリリアは思いっきりお腹を撫でる。首のあたりから横っ腹までわしゃわしゃともふると、子犬も気持ちよさそうに目を細めている。

「よーしよしよしよし、いいこだね~!はぁ、可愛い。魔物もこのくらい簡単に懐いてくれるといいのになぁ」

「リリア、そいつは、犬じゃない」

 ロルフは注意深く観察しながらはっきりと告げた。

「ヘ?」

「フェンリルだ」

「フェンリル?」

「聖属性を持つ神獣で女神の眷属、白き森の王とも言われている」

「は?……はぁ!?」

「お前は普通の『テイマー』じゃない。『神獣使い』だったんだ。どうりで攻撃魔法や攻撃系特技がないはずだ。ただの魔物に嫌われるのもそのせいだ。聖属性持ちに魔物は服従しない。聖なる魔力を嫌うからな。お前は、聖属性の女神の加護もちだ」

「えっ?えっ?ええーーーーーー!!!」

「子犬とはいえフェンリルが完全服従している。お前のことを主だと認めてる証拠だ。フェンリルは気高い生き物だからめったに人を攻撃してくることはないが、闇属性のテイマーには絶対に服従しない。フェンリルが服従するのは聖属性を持つ『神獣使い』だけだ。」

「いや、待って、情報量が多過ぎてちょっと混乱してるんだけど。」

「魔物を従えるのは闇魔法の魔物使い、神獣を従えるのが聖属性の神獣使い。どちらもテイマーと呼ばれているが、属性は正反対だ。」

「そ、そんな、知らなかった!」

「まぁ、聖属性もちはかなりレアだし、中でも神獣使いは相当珍しいからな。」

「じゃ、じゃあ、この子が私の従魔ってこと?」

「魔物じゃないから従獣ってとこか?」

「うわ!うわわわ!嬉しい!これからよろしくね!」

 リリアがフェンリルを抱き締めると嬉しそうに舌を出してリリアの顔をペロペロと舐めている。完全にただの可愛い子犬にしか見えない。

 ―――だが、喜ぶリリアと裏腹に、ロルフは苦い顔をしていた。

(まさかリリアが神獣使いだったなんて……)

 聖属性持ちの人はとても希少な存在のため、教会で手厚く保護されることが多い。そして、『聖女』や『聖人』の称号を与えられてしまうのだ。そうなると、リリアとロルフが引き離されてしまう可能性も高い。

 長年の想いが通じた今、リリアと離れるなんて考えられない。ロルフは静かな決意を固めていた。
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