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田中ライコフ

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雌豹

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 言われるままキョウスケの背に腕を回した叶真は、その逞しい肩に小さく噛みついた。
 小さく揺さぶられるたびに身体の奥から堪えようのない甘い吐息が漏れる。
 緩やかな快感だがそれは間違いなく叶真を絶頂へと誘っていく。浅い部分で細かく抽送すると、キョウスケの亀頭が前立腺をぐりぐりと刺激し、あまりの快感に叶真は噛みついた肩に歯を立てた。
「っ……!」
 痛みが走ったのかキョウスケの眉がしかめられる。それと同時に叶真の口の中に苦い鉄の味が広がった。
 思わず口を外すとキョウスケの肩に歯型が残っており、そこから僅かながら血が滲み出している。その真っ赤な鮮血と口に残る鉄の味が、甘さに痺れた頭を現実へ引き戻した。
 流されてはいけない。キョウスケの慈しむようなセックスにほだされては陥落させられてしまう。身も心もこの男のいいようになるのは許せなかった。
 キョウスケに甘やかされるようなセックスは心地よかったが快感を得るだけならば、いつもの喰われるようなセックスも決して悪くはない。
 滲む血を丁寧に舐め取った叶真はそれを良いきつけ薬のように味わい、飲み干す。その仕草や表情はさながら艶かしい肉食獣のようだ。
 その姿に情欲をそそられたのかキョウスケの目の色が僅かに変わった。優しげな淡い色を宿していた瞳が、いつもの獣のような瞳へと変わっていく。
 叶真はキョウスケの腰に両足を絡めると挑発的に囁いた。
「なぁ、もっと激しく動けよ。いつもみたいに」
「……お前の身体の負担にならないように優しく抱いてやっているのに」
「性にあわねぇだろ。俺だって性にあわねぇよ。……いつもみたいに激しくしてくれ。激しくイかせてくれよ」
 優しくされて流されないように、我を忘れるほどの快感が欲しかった。
「……この雌豹が」
 キョウスケは一度劣情を抜くと叶真の身体を反転させ、うつぶせに寝かせる。そしてその細い腰を持ち上げた。
 四つん這いの獣のポーズは揶揄されたように、まさしく雌豹のようだ。
 劣情を一気に中に押し込められると、先程の優しいセックスが嘘のように激しく抽送を始める。
「あっ、あっ……!」
 ぶつかり合う肉が乾いた音をたて、叶真のゴムボールのような尻たぶが弾む。
 さっきまでのじわじわと快楽に侵食されるようなセックスとは違い、容赦のない快感が叶真を吞み込み始める。
「はっ……あっ!」
 これこそキョウスケのセックスだと思った。激しいセックスに快楽だけを獣のように追いかける。そこに余計なものなどなにもない。愛だの恋だの考える余裕もなく、あるのは肉欲だけだ。
「あ……んっ。やばっ……イイ」
 一ヶ月ぶりのまともなセックスに身体は歓喜している。普段ならキョウスケにねだるようなことはしなかったが、飢えを満たすようにこの日は貪欲に熱い劣情を貪った。
「んっ……はぁ……」
 ガツガツと奥を抉られるたびに反り返った劣情が前立腺を押し上げる。ひっきりなしにこぼれる喘ぎにキョウスケは満足したのか、叶真の竿を優しく握った。
 身体の奥から与えられる快感と、性器からもたらされる新しい快感に叶真は一直線に絶頂へと昇っていく。
「気持ち良いっ……!」
 叶真はもうキョウスケに与えられる快楽を拒んだりはしない。もう認めたのだ。身体はこの男に陥落していると。
「あっ……も……イくっ!」
 その言葉にキョウスケは強く腰を打ちつけた。たまらず叶真はキョウスケの手の中に精をほとばしらせる。
「はっ……はっ……」
 二度目だというのに射精はなかなか止まらず、受け止め切れなかった精がキョスケの手をこぼれ落ち、シーツを汚していく。息を整えながら止まるのを待つ叶真だったが、キョウスケは待てないという風に腰をスライドさせた。
「ちょ……待って」
「おあずけを食らわせるきか? ……待てない。お前もまだ足りないだろう?」
 達したというのに叶真の性器は硬さを保ち、まるで萎えていく気配がない。一ヶ月に及ぶ禁欲的な生活を送っていたのだ。二度の射精ごときでは満足できない。
「もっと喰わせろ」
 擦れた声でそう言ったキョウスケは再び肉壁を抉り、叶真を快楽へと誘う。
 夜はまだまだ明けそうにない。
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