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友の正体
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胸騒ぎはしていた。良くないことが起こっているのではと、覚悟もしていた。それにしても、デュークの口から出た言葉は晴天の霹靂だ。
「なぜフォルティスがそのような……!」
「それを今、衛兵が取り調べているところです。衛兵の見解では盗人とされているようですが……」
「フォルティスは、そのような男ではない!」
アダマスは反射的にそう言っていた。それが心からの本音だった。
確かに厳しい生活を余儀なくされたと聞いている。今も決して裕福ではないだろう。
だがアダマスは知っている。フォルティスの瞳が、濁りなく澄んでいることを。それは真っ直ぐに生きてきた人間しか持ち合わせていないものだ。そして、それを教えてくれたのは他でもないフォルティスだった。そんな男が、人の物を盗む卑しい人間のはずがない。
憤るアダマスを前に、デュークはあっさりとそれを承知した。
「私も王子と同じ意見です。盗人などでは決してない。なにか別の目的があったとしか思えません。しかし、決して口を割ろうとはしない。あれは、そういう男です」
デュークの口ぶりは、フォルティスにたいする深い信頼関係を窺わせる。そこに、フォルティスの大きな秘密が隠されているような気がした。
「……公爵。貴公とフォルティスの間には、一体なにがある。それが今回の件と、関係しているのか」
「今回の件と関係しているかは、定かではありません。ですが王子は知っておくべきでしょう。フォルティスが何者なのか」
アダマスの心臓が飛び跳ねる。しかし、その後は冷静そのものだった。フォルティスのすべてを受け止める覚悟は、もう出来ている。
「王子は『のばら』と名乗る革命軍をご存知でしょうか」
「噂程度に。もっとも私が聞いたときは、革命軍ではなく反乱軍だったが」
以前、使用人が話をしているのを耳にした覚えがある。
悪しき貴族からの自由を掲げる反乱軍。それが『のばら』だ。組織の大きさも、誰が属しているのかも分かってはいない。だがその力は強大で、これまでに少なくない貴族が罪を暴露されている。悪事を働く貴族にとって『のばら』は脅威でしかないが、民衆にとっては英雄だ。故に、貴族にとっては反乱軍に。民衆にとっては革命軍になるのだろう。
そして、今ここで『のばら』の名前が出る意味に、アダマスは驚愕した。
「まさか、フォルティスがその一員……?」
信じられないという面持ちで、デュークの顔を見る。デュークの表情は変わらず、真剣な目をしていた。
「なんていうことだ……。では『のばら』がフォルティスに、王の私室へ入り込むよう命令したのか」
それ以外にフォルティスが、そんな無謀を働くことは考えられない。王の私室へ侵入するなど、あってはならない重罪なのだ。『のばら』という組織の命でもない限り、そんな危険を冒すことはないだろう。
だがデュークは渋い顔をしている。
「なぜフォルティスがそのような……!」
「それを今、衛兵が取り調べているところです。衛兵の見解では盗人とされているようですが……」
「フォルティスは、そのような男ではない!」
アダマスは反射的にそう言っていた。それが心からの本音だった。
確かに厳しい生活を余儀なくされたと聞いている。今も決して裕福ではないだろう。
だがアダマスは知っている。フォルティスの瞳が、濁りなく澄んでいることを。それは真っ直ぐに生きてきた人間しか持ち合わせていないものだ。そして、それを教えてくれたのは他でもないフォルティスだった。そんな男が、人の物を盗む卑しい人間のはずがない。
憤るアダマスを前に、デュークはあっさりとそれを承知した。
「私も王子と同じ意見です。盗人などでは決してない。なにか別の目的があったとしか思えません。しかし、決して口を割ろうとはしない。あれは、そういう男です」
デュークの口ぶりは、フォルティスにたいする深い信頼関係を窺わせる。そこに、フォルティスの大きな秘密が隠されているような気がした。
「……公爵。貴公とフォルティスの間には、一体なにがある。それが今回の件と、関係しているのか」
「今回の件と関係しているかは、定かではありません。ですが王子は知っておくべきでしょう。フォルティスが何者なのか」
アダマスの心臓が飛び跳ねる。しかし、その後は冷静そのものだった。フォルティスのすべてを受け止める覚悟は、もう出来ている。
「王子は『のばら』と名乗る革命軍をご存知でしょうか」
「噂程度に。もっとも私が聞いたときは、革命軍ではなく反乱軍だったが」
以前、使用人が話をしているのを耳にした覚えがある。
悪しき貴族からの自由を掲げる反乱軍。それが『のばら』だ。組織の大きさも、誰が属しているのかも分かってはいない。だがその力は強大で、これまでに少なくない貴族が罪を暴露されている。悪事を働く貴族にとって『のばら』は脅威でしかないが、民衆にとっては英雄だ。故に、貴族にとっては反乱軍に。民衆にとっては革命軍になるのだろう。
そして、今ここで『のばら』の名前が出る意味に、アダマスは驚愕した。
「まさか、フォルティスがその一員……?」
信じられないという面持ちで、デュークの顔を見る。デュークの表情は変わらず、真剣な目をしていた。
「なんていうことだ……。では『のばら』がフォルティスに、王の私室へ入り込むよう命令したのか」
それ以外にフォルティスが、そんな無謀を働くことは考えられない。王の私室へ侵入するなど、あってはならない重罪なのだ。『のばら』という組織の命でもない限り、そんな危険を冒すことはないだろう。
だがデュークは渋い顔をしている。
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