真面目過ぎにも程があるっ!

田中ライコフ

文字の大きさ
上 下
58 / 67

熱帯夜2 *性描写あり

しおりを挟む
 荒々しく、熱い吐息が首元を掠める。だが性急だったのは最初だけで、慶に触れる兵藤は、壊れ物でも扱うように優しかった。
 兵藤の唇や舌が、首筋をゆっくり滑り落ちる。くすぐったいような気持ち良いようなもどかしい刺激に、慶はわずかに身体をビクつかせた。
「敏感だな」
 楽しそうな兵藤の声が上から聞こえる。恥ずかしさに言い返そうとしたが、シャツの中に潜り込んだ兵藤の手が少しずつ上へと移動すると、途端に息が上がった。胸の先端を兵藤の指が掠めると、吐息に甘いものが混じってしまう。
「こんなに敏感だと、服に擦れたとき大変じゃないか?」
 くすっと笑いながら兵藤が言った。官能小説に出てきそうな科白に、身悶えそうになる。
「どうした。恥ずかしがる必要はない。お前はもう俺のものだろう。ありのままの姿を見せてほしい」
 そう言いながら兵藤は慶のシャツを捲り上げた。
 なんというか、慶は兵藤の新たな一面をここにきて発見したような気がする。
 真面目で奇天烈。古風でありながら素で人タラシなことを口にする男であったが、セックスになるとそこに恥ずかしい科白を連発する、スケベ親父の要素も入ってくるらしい。
「男だというのにお前の乳首はぷっくりとしていて熟れた果実のようだな。食欲をそそられる」
 聞いていて恥ずかしくて堪らない。まるで羞恥プレイだ。兵藤は言っていて恥ずかしくないのだろうか。どこでそんな科白を覚えてきたのかと、ある意味関心する。
「そういうこと言うのやめ……やっ、あ……っ」
 抗議の声は途中でもろく崩れていく。胸の先端を舌で転がされ、最後は言葉にならなかった。
「やはり美味だな」
 本当に恥ずかしいから少し黙って欲しいのに、その間にも兵藤は慶の胸を愛撫することを止めない。
 赤子のように乳首を吸い上げたり、ほんの少し歯を立て甘噛みされると、背中をゾクゾクするような快感が走り抜ける。元々興奮してはいたが、下腹部へ急速に熱が集まり、慶は自身の下着の中が濡れていくのを感じていた。
 慶はこれまで、胸を愛撫されるのがそれほど得意ではなかった。柔らかな乳房のない身体では触り心地もよくないだろうと、劣等感があったのだ。当然、そんな感情を抱えたままでは感じることもほとんどない。男同士のセックスにおいて、胸などただの飾り程度に考えていた。
 それなのに、今のこの身体の反応はどういうことだろう。
「あ、あっ……!」
「良い声だ。もっと聞かせてくれ」
 口で片方を愛撫しながら、空いた手でもう片方の乳首を刺激される。そのたびに慶は今まで感じたことのない甘美な快楽に、身を震わせて耐えることしか出来ない。耐えきれない快楽は、先走りの露となってとめどなく下着の中に溢れていく。
「ま、待って、兵藤……! 胸はもういいからっ……。俺、なんかやばい……!」
「何がやばい? どこがどうやばいんだ?」
 わざわざそれを口に出させようとするのがスケベ親父感が満載だ。恥ずかしくてとても言葉にしたくない。だが楽しそうに慶を見下ろす兵藤は言わないと許してくれそうになく、慶はしぶしぶ口を開く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした

たっこ
BL
【加筆修正済】  7話完結の短編です。  中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。  二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。 「優、迎えに来たぞ」  でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。  

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

夜空に舞う星々のノクターン

もちっぱち
BL
星座と響き合う調べ、 野球場に鳴り響く鼓動。 高校生活が織りなす、 フルート奏者と 野球部キャプテンの出会い。 音楽の旋律と野球の熱情が 交差する中で、 彼らの心に芽生える友情とは? 感動と切なさが交錯する、 新たな青春の物語が始まる。 表紙イラスト 炭酸水様 @tansansui_7

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話

あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ハンター ライト(17) ???? アル(20) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後半のキャラ崩壊は許してください;;

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

処理中です...