真面目過ぎにも程があるっ!

田中ライコフ

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繋がる気持ち2

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「なーに辛気臭い顔してんのよ」
「なんだ、ヒロちゃんかよ……」
「なんだとはなによ! せっかく声をかけてあげたのに! ……あんたその格好どうしたのよ。ボロボロじゃない」
「あー、ちょっと色々あって」
 肩に感じた体温が兵藤に似ていたので一瞬期待してしまった。だがそんな愚痴を目の前の人物に言っても仕方がない。
 声をかけて来たのはヒロと名乗る男だった。『HAL』で知り合い、それなりに気心の知れた仲だ。初めに声をかけてきたのはヒロの方だったが、恐らく同類の勘というやつだろう。ゲイのイロハというものを、ヒロは色々教えてくれた。
 オネエ言葉が印象的なヒロだが、外見は男性そのものだ。年齢は慶より五つは上に見える。顔はそうでもないが、体格が兵藤によく似ていて、体温が近いのもそのせいかもしれない。
「昔みたいに馬鹿やってるんじゃないでしょうね」
「ないない。今回のこれは、名誉の負傷」
「なにが名誉よ。喧嘩なんて両成敗。手を出した時点でどっちが正しいなんてないんだから」
「説教なら勘弁して。俺、今日はそんな気分じゃないんだよ」
 慶は物憂げにため息を吐く。ヒロを一瞬でも兵藤と間違えたことに、自分でうんざりした。
「……珍しく真剣に落ち込んでるじゃない。なーに、失恋でもしたの?」
 興味津々といった様子でヒロが前のめりになる。慶は投げやりに答えた。
「そーだよ、フラれたの」
「あらやだ、当たっちゃった」
 やだ、と言う割にヒロは少し楽しそうだ。
「あんたのことだから無理そうな男を狙ってたんでしょ。好きになるのって王子様系のばっかだし。そういう男って意外と性格悪かったりするのよ。女好きも多いんだから」
「うるせー、知ってるよ」
 耳が痛い。それは身を持って体験してきたばかりだ。
「あんたって本当に男を見る目がないわよね。同情しちゃうわ」
「あのな、同情するならちょっとは慰めるとかしろよ」
「あら、アタシに慰めてもらいたい?」
 含みのある言い方に一瞬ドキッとする。人肌が恋しい上に、兵藤に近い体格は今の慶にはとても魅力的だった。
 だが慶は首を横に振る。慶が感じたいのはヒロではなく兵藤の温もりだ。いくら似ていても兵藤でなくては意味がなかい。
「ならもうちょっとシャキッとしなさいよ。おブスが更にブスになるわよ。ここは楽しむ場所で、辛気臭い顔をする場所じゃないでしょ」
 以前、慶が兵藤に言ったことをヒロに返される。楽しむのが礼儀だと言ったとき、兵藤は不器用に笑って見せた。だから慶も、それを見習って口角を少し上げて見せる。
「ヒロちゃんってさぁ、ノンケの友達を好きになったことある?」
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