真面目過ぎにも程があるっ!

田中ライコフ

文字の大きさ
上 下
42 / 67

本音2

しおりを挟む
「気まぐれでアイツに付き合わなきゃ良かったよ、まったく」
「ひっでぇヤツだな、若王子って」
「どこが。佐倉が望む王子様ってのを演じてやってきたんだから、むしろ俺ってかなり優しい部類だろ」
「面倒だと思うなら素をみせりゃいいじゃん。佐倉のやつ、卒倒するんじゃね?」
「そりゃ俺だってそうしたいよ。でもここまで演じてやって、俺になんの得がないのもムカつくじゃん」
 これは夢だろうか。慶は思わず自分の頬をつねりそうになる。間違いなく若王子なのに、そこにいるのは別の男だった。
 慶の中で理想の王子様が音を立てて崩れていく。王子様の若王子が偽物で、今目にしているこちらが本物なのだ。
「そもそもさー、なんで王子様なんて演じてやってたんだよ。女の子相手ならまだしも、男にそんなことやっても意味ないじゃん」
 あー、と若王子の歯切れが悪くなる。少し間を置いた後、若王子は再び口を開いた。
「一回男も試してみようかと思って」
「は、はぁ!? お前マジで言ってんの? ってか若王子ってそっち……?」
「違うって。ほら、俺ってモテるからさー、正直女の子相手も飽きてきちゃって。なんていうかゲテモノ喰い? 経験してみるのもありじゃん?」
 ゲテモノ、という単語が慶に重くのしかかる。慶は力なくずるずるとその場にしゃがみ込んだ。
「フェラとか手コキとか女の子にやってもらうよりイイって聞くし。勃つか分かんねぇけどバック試すのも良いかなーって」
「お前……マジで節操ないなー。ってかお前が抱かれる選択肢はないんだ」
「は? 当たり前じゃん。男に抱かれるとかキモいって。バックは女の子とも出来るけど、正直一から慣らしていくのが面倒じゃん。それだったら佐倉のほうが慣れてそうだし、男だったら多少手荒にしても壊れないっしょ」
「えげつないヤツだな、若王子」
「なんで? 優しいじゃん俺って。嘘でも王子様演じてやって、抱いてやってもいいなって思ってんだから。まあ男でもイケるってなったら、もうちょい小柄で可愛い感じのやつに乗り換えるけどな。佐倉はお試し……オナホ変わりってことで」
「マジでエグいってお前」
 そう言いながらも若王子とその友人は、嘲笑うような声を上げていた。
 慶はその笑い声を聞いているだけで、体温がスッと下がっていくのを感じる。
 そうか、そんなふうに思われていたのか。衝撃を受けすぎたのか、涙すら出ない。
 正直、振られることには慣れている。男同士の恋愛だ。うまくいくことの方が稀だった。ましてや若王子はヘテロなのだ。優しく接してくれていたが、最後にはやはり受け入れてもらえないだろいなと、どこかで覚悟をしていた。
「それでも流石にオナホ呼ばわりはキツいって……」
 自分の好意を、そんなふうに思われていたことにショックを受けた。若王子がどうやって自分をベッドへ誘うつもりだったのか知らないが、きっと慶は舞い上がっただろう。それを若王子はどんな感情で接しようとしたのだろうか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした

たっこ
BL
【加筆修正済】  7話完結の短編です。  中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。  二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。 「優、迎えに来たぞ」  でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。  

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話

あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ハンター ライト(17) ???? アル(20) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後半のキャラ崩壊は許してください;;

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

処理中です...