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慶の過去3

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 慶はなんだか悔しくなった。同じ年齢、同じ男なのに、兵藤があまりに大人に感じる。
 ヤケクソのように、慶も目を閉じ瞑想を始めた。当然だが、そんな乱れた心では己の何も知ることができないし、瞑想状態にもならない。
 ただ目を閉じている分、聴覚や嗅覚はいつもより研ぎ澄まされたようで、規則的な兵藤の息遣い、そして香りを、普段よりもっと感じた。
 そうしているうちに慶の中にある兵藤への複雑な感情は少しずつほぐれていく。なんだか兵藤の側にいると、心が安らぐ気がした。
 ああ、そうか。さっき兵藤に言ったじゃないか。
 慶はようやく安らぐ理由に気付く。兵藤はありのままの慶を受け入れてくれる。だから慶は、兵藤といると安定するのだ。
 自分を振り回すくせに、安心もさせてくれる。兵藤清正という男は、つくづくよく分からないと慶は思う。
 そうしているうちに眠気が襲ってきた。お腹もいっぱいで、心地よかった。
 一度身体を結んだ相手の横で無防備に寝るなんて、普通ならきっと出来ない気がする。
 だけど兵藤なら大丈夫だと、慶は知っていた。兵藤清正という男を慶は信用している。
 だから慶は眠気に抗わず、誘われるまま夢の世界に落ちていく。どんな夢を見たのかは、はっきり覚えていない。ただ、白馬に跨った兵藤が出てきた気がする。想像していた通り、王子様というより殿様だった。だけど意外と悪くないなぁと慶は思うのだった。
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